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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
戦国時代に平穏はない

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93 明智光秀

「どうした、喜六? こいつが気になるのか?」


 挨拶をした明智光秀をじっと見つめていたからか、信長兄上が不審そうに聞いてきた。


 いや、未来で謀反起こして信長兄上を殺す男を見てました、なんて正直に言えないからな。それに今ここに明智光秀がいるってことは、謀反も起こらないかもしれないし。

 変に警戒してるとこを見せちゃうと、それはそれで困るような気がするんだよな。


 だってさ、光秀ってそりゃあもう有能なんだよ。史実でも、信長兄上はベタ褒めしてたはずだ。えーと、なんだっけな。誰かを叱責する時の手紙に、光秀を見習えとか言ってたんだよ。

 それをなー、本人に言わないで他の人への手紙に書いちゃうところが信長兄上なんだけどさ。本人に言ってあげたら、喜んで一生ついていきます、って流れになるんだろうにな。


 つまり、ここで俺が光秀を警戒して、それを見た信長兄上が光秀を重用しなくなるとする。そーすると、もしかしたら信長兄上が領土を広げていくのが困難になっちゃわないかな? 信長包囲網とか、ギリギリで回避したはずだしな。


 あと確か光秀は土岐家の系統ってことで、その血統の良さから朝廷工作なんかも任されてなかったっけか。朝廷工作が他にできそうな人って……誰かいたかな。織田の家臣にはちょうど良さそうな人材が見当たらないぞ。


 むう。周りを見回しても、悲しくなるくらい、脳筋しかいないじゃないか。


 そうすると、一番いいのは、光秀が謀反を起こさないように重用するって感じかな。


 しかしなぁ。謀反の原因が分からんことには、謀反の要素を排除できないんだよなぁ。困ったぞ。


 ていうか、あれだよな。側近だけでウロウロした兄上も悪いんだよな。だから危険そうな時期になったら、しっかり護衛をつけておくようにアドバイスすればいいんじゃないか?


 よし。そうしよう。そうしよう。


 どっちみち本能寺の変はかなり先の話だしな。もしかしたらフラグが折れてるかもしれんし、注意深く見守るとしよう。


「いえ。兄上の馬廻りの方は槍働きが得意な方ばかりなので、明智殿のように文武にすぐれていらっしゃる方が兄上に仕えてくださるのは、とても良い事だと思いました」

「ほう。なぜに文武に優れていると思ったのだ?」


 ぎ、ぎくぅぅぅ。

 そこを突っ込まれるとは思わなかったよ。

 でも確かに俺は光秀とは初対面だしな。なんて言えばいいんだ。よし、テキトーに言い逃れよう。


「目に知性のきらめきが感じられます。きっと信長兄上にとって、良き家臣となりましょう」


 にっこり笑ってそう言うと、横で光秀がちょっと驚いたような顔をしていた。

 まあね、いきなり良い家臣になるとか言われても困るよね。

 だけど謀反を起こすまでは、信長兄上の信頼の篤い良い家臣だったわけだから嘘ではない。あ、でも結局は謀反を起こしちゃうわけだから、良い家臣とは言えないか。……うん。言えないな。


 どうしよう。困ったな。


「なるほど。喜六はかなり明智殿を買っているらしい」


 信長兄上にそう言われても、とりあえず、にこにこしておいた。だって何て返事すればいいか分からないからな。こういう時は笑ってごまかせ、だ。


「ところで、龍泉寺城の縄張りは順調か?」

「ぼちぼちですね」


 というか、はっきり言ってあんまり進んでない。だって相談相手の熊が忙しそうで、何をどう設計していいか分からないんだよ。一応、月谷和尚さまにも相談はしてるけどさ。まあ、いわゆる防衛上の秘密なんてのもあるから、全部が全部相談するわけにもいかないのが困る。


 ただ、やっぱりさ、天守閣ははずせないだろ。男のロマンだしな。

 でも天守閣って言ったら、熊には通じなかったんだよなぁ。この時代じゃ、まだ作られてないのかね。


 あとお風呂も欲しいんだよな。

 その為にはポンプの開発が必要だけどな。龍泉寺は平山城だしな。

 一応、設計図っぽいのは書いて、津島から龍泉寺に移住してもらった五郎助さんに開発をお願いはしてあるんだけど、今どうなってるんだろうな。


「ふむ。では明智殿にはとりあえず喜六についてもらうか」

「はぁ?」


 突然何言ってるんだ、この人。


「頼んだぞ」


 そう言って、明智殿の肩を叩くけど。うん。明智殿、そこで俺を見ないでくれないかな。俺にも信長兄上が何を頼んでるかなんて分からないんだからな。


 誰かー。誰か、通訳をお願いしますー!


 って、そんな人いないから、ちょっと考えてみる。


 えーっと。明智殿に頼むって言う前に、信長兄上は何を言っていただろう。

 明智殿には俺についてもらう。これは関係ないな。

 その前が、龍泉寺城の縄張りの話だ。……ん? これか?


「あの、つかぬことをお伺いしますが、明智殿は築城のご経験はありませんか?」

「経験はありませんが、習ったことはございますよ」


 ビンゴ。これだ。


 つまり、俺が龍泉寺城を建てる際に、明智殿にアドバイスしてもらえってことか。

 分かりづらいなぁ、もう。

 信長兄上の頭の中では会話が繋がってるのかもしれんけど、俺みたいな凡人にはそんな三段論法を理解するのなんて無理なんだよ! もーちょっと分かりやすい会話をしてくれ!


 ほんと、頼むよ。


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