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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
家督争い

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71 夏の終わり

 その日は朝から風が無く、蒸し暑い日だった。

 そろそろ夏も終わろうというのに、熱さが弱まる事は無く、連日の蒸し暑い日が続いていた。

 去年の夏も暑かったけど、日陰に行けばそこそこ涼は取れた。ここまで暑かった記憶がないから、今年は特別暑いんだろう。


「あちー」


 俺は津島……じゃない、篠木に移住した五郎助さんの友達に作ってもらったウチワで仰ぎながら、手拭いで汗をぬぐっていた。そんなに汗っかきなほうじゃないんだが、今年の夏は格別だ。この時代はクーラーもないから、じっとしていても汗が出る。


 クーラーなんて贅沢は言わないから、かき氷が食べたいよ。

 でも、そもそも氷も贅沢品なんだよな。冷蔵庫なんてものもあるはずもないから、氷は氷室で保管される。そしてその氷室は元々は主水司もいとりのつかさっていって、宮中で水、氷、ついでにお粥の調理をするところが担当していた。

 なんでお粥まで担当してるのかは謎だ。お粥を作るのに水を使うからかね。でも調理をするのにも水は使うはずなんだが、よく分からんね。


 その氷室があるのは大体京都だ。いや、かき氷が食べたくて信長兄上に直訴したんだよ。そうしたらそんな大層な物が尾張にあるか大うつけ、ってまた頭にげんこつを食らった。


 くそう。俺が将来馬鹿になったら絶対、信長兄上のせいだ。あのげんこつで、絶対脳細胞のいくつかはお亡くなりになったはずだ!


 氷室で有名なのは丹波だけど、今は戦乱の中で使えなくなっちゃってるらしい。他の氷室も日差しを遮る木が伐採されちゃったりして、ちゃんと氷室としての機能を保っていない所が多いんだとか。


 この時代にも森林破壊ってあるんだな。


 本来は氷室で凍らせた餅を六月一日に帝に献上するって風習も、氷室が使えないから今では廃れちゃってるくらいだ。


 かろうじて使えるのは、近江の伊吹山の氷室だろうか。どっちにしても遠いし、織田みたいな田舎大名じゃ氷を分けてもらえっこない。


 信長兄上が京都を支配するようにならないと、かき氷は無理かもしれんね。かき氷のために、早く支配して欲しいもんだよ。


 そして俺がこんなに汗をかいているという事は、元々汗っかきの熊なんて凄いことになっている。もうあれは汗じゃない、滝だ。


「勝家殿、そんなに暑いのなら、髭を剃られたらよろしいのではないですか?」

「滅相もないことをおっしゃいますな! 髭を剃りなどしたら、首を取られた時におなごと変わらなくなってしまうではござりませぬか」


 えー。そんな理由で髭を生やしてるのか!?

 しかも今から首を取られた時の心配をするとか、この時代の常識がおかしいだろ。


「……首を取られた時の心配ではなく、取られない努力をしてください……」


 脱力してそう言うと、熊の横にいる滝川殿を見る。最近は黒くなくて、ホワイト滝川だ。いつ見ても、朴訥とした好青年にしか見えない。


「滝川殿は、髭を生やしていらっしゃいませんね」

「残念ながら、なかなか生えないのですよ」


 滝川殿が肩をすくめると、熊が自慢げに自分の髭を撫でた。


「付け髭でもすればよかろう」

「おや。では義兄上のその立派なお髭を頂いてもよろしいですか?」

「なっ、なぜ儂がお前に髭をやらねばならんのだ!」

「義理の弟に威厳があるのとないのでは、威厳がある方が良いでしょう? でしたら私に協力して頂かないといけません。大丈夫です。義兄上は髪が伸びるのも早いのですから、髭も早く生えますよ。今よりもっと立派な髭が生えてくるかもしれませんよ」

「む? むぅ。そ、そうか?」


 く、くまー!

 うっかり騙されそうになってるぞ!

 そして滝川殿がうっすら黒いぞ!


 ちなみに髪は女性ホルモンで髭は男性ホルモンだからな。髪の伸びるのが早いからって、髭も伸びるのが早いとは限らんからな。


 あれ? でもそうすると熊は女性ホルモンが多いのか? えー。でもこの熊が? どこからどう見てもムサイ熊が?


 ちょっと一瞬、オネエな熊を想像してしまって青くなった。

 う、うん。熊のおかげで、別の意味で一気に涼しくなったぞ。


「そういえば、永田徳本殿ですが、なかなか一か所に居を定めておらぬようで、未だ会えてはいないようです。その代わり曲直瀬道三殿にはお会いして話をすることができたのですが、なかなか忙しいお方のようで、尾張に来て頂くことはできませんでした」


 髭のことは熊をからかっていただけなのか、滝川殿が唐突に話題を変えた。


「そうですか……」


 足利将軍の御典医さまだもんなぁ。そうホイホイと来てくれないっていうのは分かってたけど、やっぱりかぁ。

 がっかりしたけど、仕方ない。

 でも脚気と疱瘡の治験を、誰に任せればいいんだろうな。


「ですが、曲直瀬道三殿は京都御所の西側あたりに啓迪院けいてきいんと称する医学校を開いておりましてな。そこの生徒であれば、尾張に一人派遣できるということなのですが」

「ぜひ、お迎えしたいです!」


 よし。これで少しは病気の撲滅に貢献できるぞ!


 心の中でガッツポーズをしていたら、急に場内が騒がしくなった。どうしたんだろうと思っていると、滝川殿が様子を見てきます、と部屋を出た。







 そして戻ってきた滝川殿はびっくりするような事態を知らせてくれた。





 信行兄ちゃん、謀反。


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