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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
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50 豪華農家三点セット

 ところで信長兄上に頼んでた物なんだが、いよいよ圧搾機が完成したのか、と思ったけど違った。


 でもこの時代には中々役に立ちそうなものだ。


 剛腕でGOで見た、農業に役立つ、備中クワ、シャベル、ツルハシの豪華な農家三点セットだ。ツルハシは微妙に土木な気もするが、語呂がいいんでこれで行こう。


 この時代、シャベルとツルハシはまだ存在してなかった。あとクワも三本に先が分かれてる備中クワと呼ばれるものじゃなくて、のっぺりした平クワだった。

 農地を開墾する時にも、これらの道具があればはかどるだろう。


 それと大八車だ。元々江戸時代によく使われてた物だから、作るのもそんなに難しくない。これは米俵を積んでもいいし、家財を積んでもいいし、普段に荷物を運んだり、更には戦の時の兵糧を運ぶのにも使える優れ物だ。


 この時代、荷物を運ぶのは、駄馬と呼ばれる荷運び用の馬を使う。

 現代からするとびっくりだけど、地面が石だらけの時には馬子まごっていう馬をひく男が足に草鞋ぞうりをはかせるんだぞ。現代でもペットに靴を履かせる飼い主がいるけど、これが最初だったりしてな。普段は蹄鉄みたいなのは何もつけないんだけどな。


 そして、その地方にもよるけど、駄馬に使うのは性格の大人しい牝馬が多い。荷物運んでるのに暴れ馬じゃ困るもんな。


 駄馬は背中に荷鞍って呼ばれる荷物入れを乗せている。左右に分かれた入れ物で、ちゃんとバランスを取らないと危ないから、荷物が片寄った時には、石を足して調整してるらしい。ただあんまり荷物は運べないから、大八車を造ればかなり物流がはかどるんじゃないだろうか。


 馬車も考えたんだけどな。まず道が整備されてないから馬車は走れないんだよな。


 それに仮に道路を整備したとして、馬車を導入すると馬借とか馬子が職にあぶれるだろうっていうのを考えるとなぁ。

 大八車が普及しても多少は職にあぶれる者が出てくるだろうけど、山道とか沼地とか道の悪いところでは駄馬が活躍するだろうし、馬車ほどの機動力はないからそこまでの影響はないと思う。


 一番の心配は、馬車によって交通事故が増えることだ。それにせっかく整備した道路も傷むからな。


 だからとりあえず馬車の導入は先送りだ。


 前世の知識を使えば、確かに色々と便利になるけどさ。それで職を失う人が、あんまりたくさん出ないようにしたいんだよな。


 もっとも、俺にそんなに凄い知識があるわけでもないから、そこまで真剣に考えなくてもいいんだろうけどさ。


「喜六様、あちらが生駒屋敷でござります」


 屋敷、というから、いわゆる時代劇に出てくる武家屋敷みたいなのを想像してたんだけど、どっちかっていうと小さい平城って感じだ。お掘もあるしな。


 信長兄上が来てるから、さぞや厳重な警備が敷かれてるんだろうって思ってたけど……あれ? 門は普通に開いてるな。一応門兵はいるけどさ。そんなに大きく門開けちゃってて、いいのか?


「おう。喜六。参ったか」


 中に案内されると、中庭の方に着物を着崩した信長兄上がいた。さすがに真冬だから湯帷子は着てなかったけど、帯は緩く結んである。一目で傾奇いてるなって分かる格好だ。


 ああ、そっか。信長兄上って、この時代のロックでパンクなのか。着崩した方がおしゃれだと思って、そうしてるんだな、きっと。


「家長、喜六だ」


 信長兄上は顎の先で俺を示すと、短く紹介した。って、短すぎるだろ! それに俺の名前も短縮してるし。紹介するんだったら喜六郎の郎、までつけてくれよ。

 第一、家長って誰だよ! そこのおっさんだろうけど、ちゃんと紹介してくれよ!


「これはこれは。喜六郎様、お初にお目にかかりまする。それがしは、生駒家長と申します。当主の家宗はあいにく床に臥せっておりますので、それがしが代理でご挨拶させて頂きます。どうぞ今後ともよしなにお願い申し上げます」

「信長兄上の弟の喜六郎です。いつも兄上がお世話になっております。あちらは私の傅役の柴田勝家殿です」


 そう言って熊と一緒に頭を下げると、いきなり信長兄上のゲンコツが降ってきた。

 痛いじゃないかー!


 むうっと口をへの字にすると、今度はその口の両端を引っ張られた。


「あにするんれすかー!」

「俺は世話になってなどおらんぞ。家長も商人だからな。お互い、利がある者同士で付き合っているにすぎん」


 えー。そうかなぁ。

 兄上の無茶ぶりの被害者なんじゃないのかなぁ。


 家長さんは兄上より一回りくらい年上で、商人っていうより武士っぽい物腰の人だ。どっちかっていうと、武士の方が本業なのかもな。


「はっはっは。仲がよろしいのですね。良い事です」


 一応親戚筋だからか、家長さんの態度は気安い。


 俺はまだ口を引っ張ってる信長兄上の手を振り払って気になっていたことを聞く。


「それよりも、頼んでいたものができたと聞いたのですが、本当ですか?」

「ああ、こちらですよ」


 中庭の奥には、豪華農家三点セットが鎮座していた。


 お~! 備中クワもシャベルもツルハシもちゃんとできてるじゃないか。すげぇ!

 よーし。これでちょっとは農作業がはかどるんじゃないか!?






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