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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄三年

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208 第一回おもてなし会議

 六角義秀殿をもてなすにあたって俺はみんなを集め、どのようにもてなしたら良いかを相談することにした。


 名づけて「第一回、おもてなし会議」だ。二回目があるのかどうかは分からんけど、なんとなく「第一回」とつけてみた。

 メンバーは、去年の信長兄上の上洛のお供で京都に行った際に実際に六角家の人と会った熊と、有職故実に詳しい明智のみっちゃん。義秀殿が滞在する熱田神宮の大宮司であり俺の義理の舅に当たる千秋季忠(すえただ)殿。情報担当と言えば忍び代表の鵜飼殿。そして外部オブザーバーとして親友半兵衛と、女性視点での意見を出して欲しい美和ちゃんの六人だ。


「六角家は、近江源氏として名高い佐々木氏の嫡流たる家柄にございます。それゆえ、奇抜な料理などは口にしないという可能性も考えられましょう」


 まずは明智のみっちゃんの発言に、他の者も深く頷いた。


「つまり、卵料理を出しても食べないということでしょうか?」


 俺の質問に、みっちゃんは「さようでございます」と肯定した。


「信仰も篤いと聞きますゆえ、仏の御遣いとも呼ばれる鶏や卵は出さない方が無難でありましょう」


 うーん。大体、おもてなし料理には鴨肉を鶏の卵でとじた「親戚丼」を出してるんだが、それが出せないとなると、出せる料理のレパートリーが減るなぁ。


 同じく卵を使った茶碗蒸しも出せないしな。


「卵がダメとなると、天ぷらも出せませんね。素揚げであれば、抹茶塩を添えれば色も鮮やかになるでしょうか」

「それは良いですね。茶は飲むものと考えるのが普通ですから、義秀殿も驚かれることでございましょう」


 でも素揚げだけじゃインパクトに欠けるよな。

 半兵衛によると、多分六角義秀は尾張は田舎だと思ってて料理なんかは期待してないだろうから、ちょっと変わったものを出せば大丈夫って言うけど、やっぱりどうせなら度肝を抜いてやりたい。


「鴨や雉。それから牛の味噌漬けは、諏訪神社への奉納をしたものということで出せそうですな。それがしが説明いたしましょう」


 もっともらしく千秋殿が提案してるけど、俺は知っている。千秋殿は牛の味噌漬けが大好物なんだよな。


 最近は奉納のためってことで、食べる為だけに育てた牛を飼ってるんだけど、やっぱり老衰で死んだ牛とは味が全然違うから肉好きたちは何とかして食べる機会を逃さないようにしている。


 肉好き筆頭は、熊とかグリズリーな千秋殿だな。もちろん信長兄上もだけど。


 そんな訳で、千秋殿が牛の味噌漬けを押してるのは、自分が食べたいからなんだろう。

 確かに熱田で六角義秀殿をもてなすわけだから、千秋殿は確実に食べられるもんなぁ。かなり気合が入ってる。


「里の者に使いを出して聞いて参りましたところ、義秀様の好物はすじえびと小鮎だそうでございます。中でもすじえびを大層好まれ、毎日召し上げっていらっしゃるとか」

「海老ですか」


 鵜飼殿は甲賀の出身だ。そして甲賀忍者を庇護しているのは六角家なんだよな。その縁で、鵜飼殿は六角義秀殿の情報をゲットしてきてくれたらしい。

 好物だけでも主家の情報はよそに漏らさないのが常識だけど、今回は織田と六角が同盟を結んでその歓迎の宴のためって大義名分があるから、それなりの「お礼」と引き換えになんとか教えてもらったってわけだ。


 うん。甲賀の皆さんも清酒の為に色々教えてくれたよ。

 お酒の力って凄いな。


「とすると、海老の殿さまである伊勢海老を召し上がって頂くと喜ばれますね」


 俺がそう言うと、みんなは首を傾げた。


 半兵衛と美和ちゃんが同時に首を傾げると、顔を見合わせる。

 おおぅ。なんだか現代のアイドルデュオが目の前にいるような気がするな。こんなに可愛い美和ちゃんと渡り合える、半兵衛の美少女っぷりが恐ろしい。


「はて。伊勢で摂れる海老でございましょうか?」


 みっちゃんの言葉に、熊が腕を組みながら答えた。


「伊勢は湊がございますからな。そこで取れる海老といえば、正月に食べる少し大ぶりの海老のことでござろうか」


 そう言って熊は海老の大きさを指で表した。人差し指と親指の間の大きさは、明らかに伊勢海老より小さい。せいぜい、車エビくらいの大きさじゃないかな。


「いえ。もっと大きくて、これくらいの海老で、体表はゴツゴツしていて……そうですね。鎧を着ているような姿の海老です」

「それならば志摩海老ではなかろうか」


 思い当たったのか、千秋殿が手をポンと叩いた。


「シマエビ、ですか?」

「うむ。志摩の辺りでよく採れる海老で、伊勢の商人が時々熱田に売りに来ておりますぞ」


 へ~。この時代だと、伊勢海老って言わないで、志摩海老っていうのか。


「伊勢の商人が扱っていたので、信喜様は伊勢の海老だと思われたのでござりましょう。……しかし。なるほど、言われてみれば甲冑を着た武士のような姿ですなぁ。海老の殿様というのも、納得いたします」

「海老の殿様であれば、義秀様にお出ししても喜ばれますな」


 千秋殿と熊が頷き合う。

 二人とも熊系でお揃いだけど、こっちはちょっとむさくるしい。


 お口直しならぬ、お目直しで美和ちゃんを見ておこう。

 うむ。いつも可愛いな。


 ともかく、伊勢海老料理をメインにしておもてなしをしよう。


 義秀殿が喜んでくれるといいんだけどな。



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