表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄三年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/237

204 品野城の戦い その3

 落合城に着くと、さすがに大手門は閉じられていたけど、完全な防御態勢を取れているとはとても思えない様子だった。


梯子(はしご)をかけよ! 城内に攻め入れ!」

「織田の兵が攻めてきたぞー!」

「矢を放て! 一人も城に入れるな!」

「門を破るぞ! せーいのぉっ!」

「せいのっ」

「織田の兵が多すぎます。これでは門を破られ――うわぁぁぁ」


 大した抵抗もなく大手門を斧で叩き割って、織田の兵が城内になだれ込む。

 それを見届けた信長兄上は、周囲に巻き起こる喧騒(けんそう)に負けない大声で叫んだ。


「ここは可成と恒興に任せるぞ! 先に進めい!」

「応!」


 落合城を抜けると、左に平城の桑下城。真ん中に集落をはさんで、右に山城である品野城がある。


「信喜!」

「はっ」

「下方貞清、佐久間信盛と共に桑下城を落とせ。他の者はわしについて来い!」

「承知いたしました」


 うわぁ。城攻めの大将を任されちゃったよ。責任重大だぞ。


 俺の兵が三百、下方殿の兵が二百、佐久間のおじちゃんの兵が三百だから、合計で八百か。

 えーと、城攻めは守る兵の三倍が基本だから、城内にいる兵が二百五十を下回ってればいけるってことだよな。


 それに下方殿は、熊と同じか、それより強いって話だし。

 ……それって、もはや人類の範疇(はんちゅう)を超えてないか?


「黒鍬隊、門を打ち破れ!」


 俺の参謀役としてついてきてくれている明智のみっちゃんが、斧を持った黒鍬隊に指示を出す。

 戦のために必要な兵粮とか陣地を設営する道具なんかを運ぶ小荷駄隊の中から、陣地を作ったり壕を作ったりしてくれる部隊は、黒鍬隊って呼ばれてる。


 シャベル持たせてるから黒シャベル隊って名称を提案したら、信長兄上に速攻で却下されたんだよな。

 むう。


 って、こんな事を考えてる場合じゃないぞ。


「弓兵、前へ!」


 門を打ち破ったら、敵も打って出てくるだろうからな。それを弓で狙う。

 俺はさらにその後ろで、タロとジロに守られながら弓を構える。今回は混戦が予想されるから、毒矢は使わない。


 打ち破った門から、桑下城の兵士が槍を構えて向かってくる。


 迎え撃つのは、和泉守兼定いずみのかみかねさだ作の名槍を持つ下方貞清殿だ。穂と呼ばれる刃長と茎と呼ばれる持ち手を合わせて約四尺五寸だから、大体百三十五センチくらいの長さの槍になる。一般的な槍よりも少し長い槍だから重たいはずだけど、それを軽々と振り回している。


 佐久間のおじちゃんも、おっとりした顔をしてるけど、これでいて結構強い。迫ってくる敵兵を、ひょいとかわしながら倒していく。


 やがて門から出てくる敵兵が減ってくると、それほどの抵抗を受けないまま次々に城内へと織田の兵が流れこむ。これは、思ったより城内の兵の数が少ないのかもしれんな。


「信喜様、このまま一気に攻めこみましょう」


 俺はそのみっちゃんの進言に頷く。


「行くぞ!」

「応!」


 タロとジロに守られながら、城主の長江景隆の姿を探す。付城といっても、砦程度の大きさしかないものから、城と呼んでも遜色ないほどの規模の物がある。桑下城は後者だ。

 でも、奥へ奥へと進んでいくけど、出会う敵の数は少ない。


「伝令! 伝令! 城主の長江景隆。城内の者たちの命と引き換えに降伏を申し出ております!」

「信喜様、どうなさいますか?」


 奥から走ってきた伝令の言葉に、みっちゃんが俺を振り返る。


「分かりました。長江景隆の身柄は信長兄上の沙汰が下るまで、一時預かりましょう」


 そして一息置いて、俺は言葉を続ける。


「戦いを止めよ。桑下城は、織田が取ったぞ! 勝鬨をあげるのだ!」

「おおー!」


 だけど勝利の喜びにひたったまま、のんびりしてはいられない。品野城を攻めている信長兄上に合流しなくちゃいけないからな。


「後は佐久間殿にお任せします。城内での乱暴狼藉は信長兄上から厳しく罰せられるゆえ、秩序を持って行動してください。下方殿は私と共に信長兄上の元へ参りましょう」


 信長兄上は兵たちの規律を厳しく取り締まってるからな。以前、勝敗が決まったのにも関わらず面白半分で敵兵を殺した足軽を、自らの刀で斬り殺したこともあるくらいだ。


「信喜様」

「なんでしょう」


 佐久間のおじちゃんが伝令から耳打ちされて、こちらに近づいてくる。


「長江景隆によりますと、品野城城主の酒井忠尚は本来であれば落合城と桑下城に詰めているはずの兵も品野城に集めているとのことです」

「それで大した抵抗が見られなかったという訳ですか」

「多勢に無勢ですからな」

「しかしその分、品野城の守りが固められているということですね。どれほどの兵がいるのか言いましたか?」

「急でしたので、落合城と桑下城の兵を集めても、およそ四百ほどかと」


 四百の三倍であれば千二百の兵で攻めれば勝てるということだな。油断は大敵だけど。

 それに山城は守りが堅いから厄介だ。


 それでもこっちの軍勢は、信長兄上と熊だけでも千五百いるからな。丹羽殿の兵もいるし、俺と下方殿が加われば、二千になる。


 それなら勝てる……よな?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミカライズ連載中
どこでもヤングチャンピオン・秋田書店
ニコニコ静画
にて好評連載中

コミックス3巻発売中
i862959

Amazonでの購入はこちらです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ