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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄二年

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185 ねねとやや

 とりあえず俺が同行すれば浅野殿はねね姉妹を隠さずに出してくるらしいっていうのが分かったんで、何度か信長兄上の鷹狩りのお供をした。


 ほんと、藤吉郎の恋路がどうなろうがどうでもいいんだけど、美和ちゃんが気にしてるからな。仕方ない。


 様子を見てると、ねねも藤吉郎の事を意識してるのが分かる。

 あの猿顔のお調子者のどこがいいのか分らんけど、(たで)食う虫も好き好きって言うしな。ねねは、ああいうのがタイプなんだろう。


 最近知ったんだけど、蓼って意外とメジャーな薬味だったんだな。鮎の焼いたのに、普通に添えてあったりする。

 それに鮎の蓼干しっていう、鮎を三枚におろして、蓼の葉をつけて干してから内臓と味噌を和えた汁を塗って焼く料理なんかもあるくらいだ。


 独特の辛みがあるから、大人の味だな。

 俺はちょっと苦手だけど。





「そうだ、信喜」

「はい」


 今日も信長兄上のお供で鷹狩りだ。

 タカコさんも最近は俺の言うことをちょっとは聞いてくれるようになったからな。鷹狩りマスターになるのももうすぐだ、なんて考えていたら、龍泉寺城を出発する直前に信長兄上が問題発言をかましてくれた。


「長勝がな。どうやら信喜はねねを気に入っているようなので、側室にどうかと言ってきたぞ」

「―――は?」

「側室であれば問題ないゆえ本人に聞いてみようと答えたが、どうする?」


 どうする、って聞かれてもさ。そんなの、決まり切ってるじゃないか。


「私は美和を迎えたばかりですし、他に室を持つつもりはありません」

「ふむ。であろうな」


 分かってるなら聞くなよ。と、言えないところが弟の悲しさだな。

 基本的に兄には逆らえん。しかもその兄が、あの織田信長なんだぞ。勝負する前から無理ゲーに決まってる。


「長勝に、ねねでなくても良いなら、ややはどうかと聞かれた」

「どうかと聞かれても、どうもしません」

「側室の一人くらい持ってはどうだ? 正室に選ばせればよかろう」


 信長兄上は見送りに来ている美和ちゃんを横目で見るけど、そういうの、本当にやめてくれないかな。なんで新婚ホヤホヤ夫婦の間に亀裂を入れるような事を言うんだよ。


 でも、うろたえると思った美和ちゃんは、にっこりと微笑んで答えた。


「それが信喜様のお望みでしたら」

「望みませんよ!」


 美和ちゃんも何てこと言うんだよ!

 側室なんか絶対持たないからな!


 俺が一人で憤っていると、信長兄上は俺の肩を軽く叩いた。


「確かに信喜にはそのような甲斐性はないな」


 わっはっは、って……信長兄上、確かにその手の甲斐性はないっていうか、なくても良いっていうか、むしろ無くしたいっていうか。


 別に奥さん一人でもいいじゃないか!


 って、美和ちゃんも袖で口元を隠してるけど、笑ってるのがバレバレだし!


  そして信長兄上。「正室がしっかりしておるゆえ、信喜も心配ないな」って言ったの、しっかり聞こえてるからな!


 まったくもう、と思いながら引かれてきた愛馬の花子にまたがると、今度はお供のいる辺りからじとっとした視線を受けた。

 浅野殿が姉妹のどちらかを俺の側室に望んでいるって話は、結構噂になってるんだろうか。いかにも嫉妬してますっていう顔で、藤吉郎が俺を見ていた。


 いやだから、藤吉郎よ。俺はねねにもややにも興味はないからな?

 何度も言うけど、美和ちゃん一筋なんだからな?


 その後の鷹狩りでは、最近慣れてきたと思ったタカコさんに久々に「キョッキョッキョ」と鳴かれて無視されたし、その後に立ち寄った浅野屋敷でも姉妹のどちらかを側室に、っていう浅野殿の露骨なアピールをかわすのに苦労したしと、散々だった。


 ねねはともかく、ややは、まあアレだ。俺の側室になるのを期待してたらしくて、俺が気のない返事をすると涙目になってた。


 でもごめん。きっと君には俺よりももっとふさわしい男がいるから大丈夫だよ。なんていったって、世界中に男は三十五億……は、この時代だとそんなにいないかもしれんけど、とにかく俺よりイイ男はたくさんいるからな。うむ。


 これ以上薦められないように、ってことで、俺は藤吉郎の有能さを浅野殿に大げさなくらい伝えたんだが―――





 何がどうなってそうなったのか分からんけど、いつの間にか、俺が藤吉郎に気がある、って噂が広がっていた。

 だから側室を持つっていう話にも乗り気にならないんだろう、って。


 ちょ、ちょっと待て!

 俺は男になんか興味ないからな!

 それに俺の恋愛対象は人間だ。猿じゃない!


 その話を我が親友の半兵衛に愚痴ったら、「では、私が何とかしましょう」って言ってくれたから良かったけどさ。

 

 っていうか、さすが半兵衛だよな。頼んだら、すぐに噂はなくなった。下火どころか、最初からそんな話はなかったかのようだった。


 持つべき者は頭の切れる親友だよなぁ。本当に半兵衛がいてくれて良かったよ。これで美和ちゃんにもそんなに趣味が悪いのかって疑われずに済むよな。


 あ、いや。別に美和ちゃんが疑ってたわけじゃないけどさ。でも俺が猿の事を好きとか聞いたら、それが事実でなくても気分悪いだろうからな。


 やっぱり他人の恋路に首をつっこんじゃいかんよなぁ、と。

 改めて反省した。うむ。


チョロさ、爆発。

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