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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄二年

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175 岩倉城の最後

 めでたいことですね、と言いながらお茶を飲む半兵衛も、そろそろ縁談の話が出てもおかしくない年頃だ。

 ただ、今の立場が微妙だからな。相手を決めかねてるってところかな。


 なんといっても、半兵衛の家は完全に斉藤義龍とは敵対してるからなぁ。竹中家と同じように織田に味方する家があれば、そこからお嫁さんをもらうっていうのも有りだろうけど、織田家中から、ってなると、まだ完全に竹中家は織田に臣従してないからそれは難しい。


 もし織田に臣従してれば、犬姉さまの婿にゴリ押しすることもできるだろうけどな。

 いやほら、信長兄上は身内には凄く甘いからさ。半兵衛も、身内枠に入れちゃえば、もしものことがあっても安心なんだよな。


 今はそうでもないけど、確か後年の信長兄上って非情なくらいの能力主義になっちゃうからなぁ。ちょっとのミスで更迭とか、ありそうで怖い。


 うーん。信長兄上が尾張統一でもすれば、竹中家が織田に臣従する可能性もあるんだろうけどな。

 犬姉さまとの結婚は無理にしても、異母妹だっているしな。


 尾張統一かぁ。

 でも、岩倉城はそろそろ落ちるだろうし、犬山城は信長兄上と手を組んでるから、そうなったら統一したってことになるんじゃないのかね。


 なんかさ、よくよく考えると、俺がこの時代で前世を思い出した時は清須も敵で信行兄ちゃんも敵で、信長兄上は那古野城だけしか持ってない敵だらけの状況だったのに、短期間でこんなに躍進してるんだな。感慨深いよ。


 さすが信長兄上だ。ミラクルだな。


 そんな事を考えていたら、目の前の半兵衛がまさに岩倉城のことを話題にしてきた。


「そろそろ岩倉城も落ちるでしょうし、尾張統一も目前ですね」


 包囲されている岩倉城がもう限界なのは、誰の目から見ても明らかだった。最近では美濃からの援軍も訪れてはいないらしい。完全に、見限られたという事だろう。


「ですが、最後の最後まで安心はできません。窮鼠猫を嚙むということもありますから」

「確かに。開城までにはもう一度戦いがあるでしょうしね」


 全滅する覚悟なら徹底抗戦をするだろうけど、どうやら信賢の方でも落としどころを探ってきているらしい。何でも、籠城している家臣の中で親族が信長兄上に仕えている者から、その親族に向けて文が出されているということだ。


 その文には、もし降伏した場合どうなるのかを聞いてほしいって書いてあるんだそうだ。自分の命の補償とか所領安堵とか、あとは大将の信賢がどうなるか、だな。


 ただ降伏するにしても、最後に一戦を交えてその結果降伏するという形に持って行かないと、岩倉方の面目が立たない。


 けどなぁ。籠城で疲れ切った兵と、気力充実した兵とで戦ったらどうなるかなんて、戦ってみるまでもないよな。

 分かり切った結果であっても戦わなくてはいけないんだから、武士の面目を保つっていうのは、なかなかに面倒な事だと思う。


 おそらく、ケジメとして信賢か岩倉の家老の首が必要になるんだろう。


 俺からしてみれば無意味な死だけど、この時代では武士のほまれとされる。

 なんとも、やるせないなぁ。





 それからしばらくして、岩倉城の兵たちは最後の戦いに打って出て、玉砕した。

 その責任を取って、岩倉城の家老だった織田七郎左衛門、織田源左衛門、山内猪之介、山内盛豊の四人が自刃した。


 山内盛豊は、去年信長兄上が夜襲して落とした黒田城の城主だった人だ。その嫡男の十郎は、浮野の戦いの時に討ち取られている。

 

 一家の大黒柱と嫡男が死んじゃって、山内家もこれから大変だろうな。

 ……ん? 山内? 山内一豊って名前の、有名な武将がいたよな。確か奥さんがヘソクリで立派な馬を買ったのがきっかけで出世したんだったかな。

 その山内一豊と山内盛豊って、名前が似てるな。


 ってことは、親子か親族か!?


 でもまだきっと子供か、元服したて、ってとこだよなぁ。後世で有名って言っても、奥さんの功績で有名なんだったら、意味がないし。

 いやでも、本人が名を残してないと、奥さんのエピソードも残らないか。


 だとしても、まだ子供だったらスカウトするのは無理だな。何の功績もないのにスカウトしたら、本人の為にもならないし、家中でも、なんであんな無名の子供が取り立てられるんだ、って問題になるだろうしな。しかも敵対してた一族なわけだし。


 そうするとこのままスルーするのが一番だよな。

 もしかしたら山内って苗字でも、遠い親戚だったって可能性だってあるわけだし。


 もしあの山内一豊だとしたら、そのうち大きくなって信長兄上に仕えることになるだろうから、それからスカウトしても遅くはないだろう。


 今はあれだ。鮭の稚魚を、川に放流するようなもんだ。確か二年から八年で、生まれた川に戻ってくるんだったかね。


 大きく育って、立派な鮭豊さけとよになって、戻ってくるんだぞー!







 そして、城主である織田信賢は岩倉城を開城し、信長兄上が従兄弟で血の繋がりもある事だしと情けをかけられて、命だけは取られる事なく美濃へと落ち延びていった。


 こうして、信長兄上による、尾張の統一が実現した。



感想欄でご指摘のあった通り、167話の「龍泉寺城のお披露目」におきまして、庄内川を利用して水堀を造ったのではなく、白沢川を利用して造ったというように変えました。

アドバイスをありがとうございました。

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