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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄二年

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172 陰謀の阻止

「それで丹羽兵蔵はどのように卑劣な企みを看破したのじゃ」


 稲葉地城を治める織田秀敏大叔父が、一族の重鎮として続きを促した。それに信次叔父さんが答える。


「いかにも怪しげであったので、渡し船の中で気安い会話をして、一行の中でも特に若い者と仲良くなったようです。そして一行の後をつけて近い宿に泊まり、手なずけた若者を呼び出して湯治にでも行くのかと聞いたところ、殿を暗殺する役目を仰せつかったというのが分かりもうした」


 ……さすが饗談の一員だね。自白剤みたいなのを使ったのかな。それとも幻覚作用をもたらす薬か。

 タロとジロいわく、そんな薬も存在するんだそうだ。


 それを使う時はかなり特殊な事態の時らしい。

 タロはあんまり言いたがらなかったけど、なんでも知ってる生き字引の月谷和尚さまに聞いたらあっさり教えてくれた。


 なんでもさ。どーしても子供が生まれない時とかにさ、お寺に子宝祈願に行くわけだけど、身分が高い人とかお金持ちなんかは何日かお寺に逗留するんだ。

 その時に、使うらしい。


 つまり、まあ、あれだ。高僧っていうのは大体身分が高い家の次男とか三男とかがなってることが多いんだよな。一家に一人お坊さんがいると、その家に仏のご加護があるって信じられてるもんだからさ。


 で、そいつらの種をもらうんだって。


 子宝祈願した女性は意識が朦朧としてる間に、まあ、いわゆる乱交状態で子供を授かる、っていうのが暗黙の了解みたいになってるらしい。


 もちろんそれは旦那側も承知してることなんだってさ。だからお布施の額によって、祈願に行くお寺の格も相手をする僧侶の元の身分も違ってくるんだとか。


 そこまでして後継ぎが欲しいもんかね。


 それにつけこんで金儲けする僧侶も大概腐ってると思うけど。


 だからそんな薬を使われた可能性は高いよなぁ。梁田殿がハニートラップの総本山だしな。


 っていうか、男が男相手にするのも蜂蜜(ハニー)トラップっていうのかな。イメージとかしては蜂蜜より、辛子とかハバネロとかそんなイメージなんだけど。

 ハバネロトラップ……いかん。死亡する気しかしない。


「そこで丹羽兵蔵は美濃勢の泊まる宿の下人に成りすまして奴らが宴会をしているところに入りこみ、話しを聞いたそうじゃ。そこでは「大樹の御決心さえつけば、すぐに殺せるだろう」と言っていたとか。丹羽兵蔵はすぐにその場を離れ、夜になってから都に入ってきた奴らの後をつけ、どの宿屋に泊まったか調べたのじゃ」

「ほお。なかなかやるのぅ」


 秀敏大叔父が感心したように膝を打つと、周りの人たちも頷いている。


 大樹っていうのは足利将軍のことだ。将軍もグルなのか!?

 でも決心がついてないってことは、そうでもないのか!?


「尾張に戻ってきたならば、よくよく褒めてやらねばなりませんな」

「さようさよう。褒美を取らせねばなりませんな」

「そこで殿にご注進に参り、明智殿が本当に美濃の者であるか確認に参ったところ、小池吉内、平美作、近松頼母(たのも)などがいたらしい」


 その名前に一同がざわめく。

 なんでも斉藤家でも一騎当千の武芸者らしい。


「明智殿は小池らに、既にそなたたちの目論見は看破されている。暗殺などと卑怯な手を使おうとしたことを明らかにされて世間の笑い者になるのが嫌ならば、とくと京から立ち去れと言ったそうじゃ」


 おお~。みっちゃん大活躍だな。


「ほう。よく申したな。それで美濃の奴らはどうしたのじゃ」

「さすがに武士の風上にもおけぬとはやし立てられたくはなかったのであろう。すぐに尻尾を巻いて逃げ出したとの事じゃ」

「おお、なんと愉快じゃ」


 かっかっかと笑う秀敏大叔父につられて、評定の間に笑いが巻き起こる。


「して。こたびの用件はそおれだけではなかろう。さっさというが良い」

「叔父上には適わぬな」


 秀敏大叔父に先を促されて、信次叔父さんは顎髭を撫でた。でも織田の一族って皆あんまりヒゲが濃くないんだよな。チョロっとした髭しか生えてない気がする。


「殿がな、これだけのことを計画したのだから、尾張が動揺した隙に美濃勢が岩倉に押し寄せるつもりだったに違いないゆえ、十分に気をつけよと文を寄こされたのじゃ」

「確かに。今岩倉攻めは誰が指揮をしておる?」

「信時でござる」

「……信広と呼応してはおらぬだろうな」


 織田信時っていうのは信長兄上の弟で俺の兄に当たる。四男だな。でもって、謀反を起こして美濃に逃げた信広兄さんとは同腹の兄弟だ。


 あれ? それってマズいんじゃないのか?

 信広兄さんと手を組んでたりしたら、せっかく陥落寸前の岩倉城が不死鳥のように蘇っちゃうんじゃないの?


「兄の汚名は自分がそそぐと、自ら岩倉攻めの大将を希望したらしい。その代わり、武功を上げたならば褒美はいらぬゆえ、兄を許してはもらえないかと殿に頼んだのだとか」

「ほう。では信広は反省の意を表しておるという事か」

「そのようですな」

「……不安は残るが、殿がそれで良しとされたなら従うしかあるまい。身内で争っている場合ではないからの。後詰の用意だけはしておこう」


 それから美濃が攻めてきたら誰がすぐに後詰に行くかが決められた。


 俺はお留守番だ。敵は美濃だけじゃなくて、今川もいるからな。一応そっちも警戒しなくちゃいけない。


 多分、桶狭間までは今川の大きな侵攻はなかったと思うんだけどな。確実じゃないし、小競り合いに近い物でも、戦は戦だからな。気を引き締めておかないといかん。






 そして信長兄上の憂慮通り何日もしないうちに岩倉城に斎藤龍興の軍が攻めてきたけれど、信時兄さんの奮闘で撃退することができた。


 それも、信長兄上が八十人って少ない人数で上洛して尾張にたくさん人を残してたからだな。


 もしかして、ここまで先を読んでいたとか……?

 あり得ないことじゃない、な。


感想で男同士のハニートラップはマスタードかハバネロじゃないかという意見を頂いたので、使わせて頂きました。

ハバネロのトラップって、凄くいやんな感じがツボでした。

掲載にもし不都合があればご連絡くださいませ。

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