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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
織田家の八男になりました

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17 那古野城騒乱その後

 熊を信長兄上の元へ送って、俺は一度厠へ行ってから評定の間へと戻った。たっぷり時間をかけて戻ったからか、既に評定の間には市姉さまたちの姿はなかった。

 どうやら那古野の謀反に乗じて末森が襲われるようなことはなさそうなんで、別の部屋で待機しているようだ。


「喜六、大丈夫か?」


 俺が矢で射られてから、何かと体調を気遣ってくれる信行兄ちゃんが心配そうに俺を見る。ごめんよ、兄ちゃん。仮病なんだ。


 小姓の津々木蔵人たち数人が、信行兄ちゃんの鎧や具足をつけていた。林のジジイはここにいるけど、佐久間のおじちゃんは戦支度をしに行ったみたいだ。


 うん。これならここに熊がいなくても不自然じゃないな。


「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です」

「喜六も、安心して母上たちと部屋で待っておるが良い。すぐに謀反人など成敗してくれるぞ」

「さすが信行兄上でございます。では私は自室にて吉報をお待ちしておりますね。信行兄上のご武運をお祈り申し上げます」


 一礼して評定の間を出ると、俺は自分の部屋に向かった。熊が間に合うかどうかとか色々と気になることがあるけど、これ以上、部屋住みの俺にできることはない。


 考える時間だけはたっぷりあるけど。


 林のジジイが城攻めを想定しているってことは、戦支度には相当時間がかかるだろうな。できれば信行兄ちゃんの出陣の前に那古野の謀反が収まってくれるといいんだが。


 謀反を起こしたのが家老職にあった力のある家臣じゃないから、手勢はそんなに多くないだろう。那古野が完全に坂井に落とされたって話は聞かなかったし。これが熊クラスの家臣だったら、千人くらいの兵は集められただろうけど、たかが近習の坂井じゃなぁ……。


 それなら迅速に制圧すれば何とかなるんじゃないかと思うけど。こればっかりは、どうなるか分からんな。


 戦になる、って言っても、すぐに出陣できるわけじゃない。特に今回みたいに急に出陣ってことになっても支度には時間がかかる。この場合の支度は、信行兄ちゃんの支度じゃない。足軽たちの支度だ。


 戦国時代の戦って、武士たちがメインって気がするけど、実はそうじゃないんだよな。どんな戦争でもそうだけど、一番多いのは平の兵士だ。つまり足軽だな。


 足軽は基本的に農民だから、普段は村にいる。城の近くの村とかだったら、城で出た太鼓とかの合図を聞いて戦支度をして城に集まるんだけど、遠くの村だとそうはいかない。早馬の伝令が、村々を回って戦のお触れを出すんだ。


 それから農民たちは一度家に戻って支度をする。胴だけの鎧に具足をつけて陣笠をかぶる。刀とか弓とか長刀とか槍なんかの武器はそれぞれの家にあるから、それを各自持つ。具足は、城からの貸し出しがほとんどだ。

 支度ができたら、村の広場に集まって、そこで村長が装備のチェックとか持って行く兵糧のチェックなんかをして、それから城までやってくる、って訳だ。


 なんていうか、城に集まるだけで時間がかかりそうだよな。実際そうなんだけど。


 末森に天守閣でもあれば、そこに登って戦支度の進行具合なんかも見れるんだけどな。やぐらはあるけどさ。さすがにそこに登って見物はできないからなぁ。見つかったら信行兄ちゃんの雷が落ちるのは確実だ。部屋で待ってろって言ったのに、なんでいるんだ、って。


 結構、神経質な性格だからさ。常識のないことすると、うるさいんだよ。


 まあ、そういうとこが信長兄上と合わないんだけどさ。


 でも信長兄上も、約束事は絶対破らないんだよ。


 そこら辺は兄弟だけあって、神経質と大雑把な違いはあるにしても、割と根本的なところでは似てると思うんだけど。約束は絶対守るし、なんだかんだいって家族は凄く大事にするし。


 多分、信行兄ちゃんが信長兄上のことを認められたら、あの二人はうまくいくんじゃないかと思う。だって破天荒なトップとそれをフォローする神経質なナンバー2って、あの二人にぴったりハマるじゃん。


 そんでもって信長兄上は、色々とやりすぎて信行兄ちゃんに怒られるといいんだ。例えば俺が一生懸命作った物を勝手に取って行った時とか、食べようと思ってた現代再現風ご飯を食べられちゃった時とか。


 え? 別に根に持ってなんてナイヨー。ホントダヨー。


 それにしても謀反か……


 今回殺された信光叔父さんは、父上の弟で、父上が亡くなった後も信長兄上を支えてくれた人だ。

 しかも強いことは素晴らしいって今の時代で、亡き父上と一緒に出陣した小豆坂の戦いでかなりの武功をあげたから、小豆坂七本槍のうちの一本なんて呼ばれてたほどの人だ。


「えーっと、小豆坂七本槍の他の六人は、信長兄上に仕えている織田信房(のぶふさ)と岡田重善(しげよし)、それから佐々(さっさ)(まさ)(つぐ)孫助(まごすけ)の兄弟に、中野重吉(じゅうきち)下方(しもかた)貞清(さだきよ)か。さすがに猛将ばっかりだな」


 こういう厨二っぽい二つ名がついてるのって、大体その戦で勇猛果敢に戦った人なんだよなぁ。父上も尾張の虎なんて呼ばれてたみたいだし。信長兄上の尾張の大うつけとは大違いだ。


 え? 別にディスってないよー。ホントダヨー。


 ご飯の恨みはしつこいなんてことはないんだよー。貴重な味噌だまりで作ったおかかおにぎりを信長兄上に奪われたのなんて、気にしてナイヨー。


 せっかくだからと思って、おかかをご飯全体にまぶしておにぎりを作ったのに、それを取られて、俺が食べられたのはおにぎりを握った手の平に残った数粒だったのを根に持ってるなんてことは、ナインダヨー。


 ハッハッハ。俺がそんなに心が狭い人間のワケナイジャナイカー。


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