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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄二年

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168 温泉でまったり

 さて、俺はなぜか信長兄上と裸の付き合いをしている。

 なぜだ!? なぜこうなった!?


「ふむ。湯につかるというのも、なかなか良いな」


 俺は今。そこそこ広く作った湯船に、なぜだか信長兄上と一緒につかっている。おかしい。ただ案内するだけのはずだったのに。なぜだ。なぜこうなった!?


 ちなみに俺は肩まで湯につかる派なんだけど、なぜか信長兄上は半身浴に近い。

 いや、身長差じゃなくて、きっと座高の違いだよ。ハハハハハ。


「一日の終わりにこうやって風呂に入ると、疲れが取れる気がしませんか?」

「……悪くないな」


 うんうん。そうだよね、と同意しながら、お湯で顔を洗う。

 あ~。生き返るなぁ。

 やっぱり日本人はお風呂だよ、お風呂。ムクロジ石鹸で体も洗ったし、あとはシャンプーとリンスがあれば完璧だよなぁ。


 シャンプーかぁ。椿油でどうにかできないかな。ムクロジ石鹸と椿油を混ぜてみたらどうだろう。……石鹸の成分と油が分離しそうだな。


「あまり長く湯につかるとのぼせますよ。そろそろ出ましょうか」


 お湯につかる前に軽く体を洗っただけだから、湯船から出てもっとちゃんと洗う。いやだって、久しぶりの風呂だしな。


「お背中をお流しします」


 風呂椅子に座った信長兄上のそばに、湯帷子ゆかたびらを着た前田利家が近寄る。これも小姓のお仕事の一つだからな。


 ほら。風呂に入ってる時って、武器の携帯どころか服も着てない状態だからな。護衛として信頼のおける小姓を置くのが普通なんだよ。もちろん外にも武器を持った護衛がいるけどな。


「……喜六。お前が流せ」

「……もう私は元服したのですけれど。なぜ幼名で呼ばれるんでしょうか」

「まだひよっこだからな。俺にちゃんとした名を呼ばれたければ、精進することだ」


 信長兄上が烏帽子親をして俺に信喜って名前をつけてくれたっていうのに、まだまだ一人前にはほど遠いってことで、未だに幼名の喜六で呼ばれる。


 理不尽だ。

 でも信長兄上だからな。文句を言っても仕方ない。


 諦めの境地で、信長兄上の背中をムクロジ石鹸でゴシゴシとこする。


 細マッチョだけど、やっぱり筋肉はついてるなぁ。槍で鍛錬するから右腕の筋肉が凄いな。

 あと結構細かい傷跡が残ってる。大将なのに、前線につっこむからなぁ。そりゃ怪我もするよ。今まで死ななかったのが不思議なくらいだ。


 俺も鍛錬してるけど、ここまで筋肉はつかないんだよな。


 ちょっと左腕で力こぶを作ってみるけど、それほど盛り上がらない。


 いや、まだこれからだから。うむ。


「この湯殿というのは良いな。清須にも作れないのか」

「温かい水が地面の下に流れていないと無理なのです。それも、掘ってみないと分かりませんし」

「どこを掘れば湯が出るか、夢には出てこぬか」

「出てまいりません」


 そんな霊感があったら、もっと早くに温泉掘ってるからね。清須だけじゃなくて、末森にも掘るよ。そして尾張を一大温泉王国にする。


「であるか」

「はい」


 しばらく背中をゴシゴシする。


「はい。背中は洗いましたよ。流していいですか? それとも他を洗いますか?」

「流せ」

「はい」


 背中を福島さんに作ってもらった手桶で流す。持ち手が桶と平行になってる形の物はあったけど、片側にだけ持ち手があるタイプの手桶はなかったみたいなんで作ってもらったんだよな。

 風呂の時はこの形が一番だよな。

 

 背中を流したら、前は自分で洗ってくださいってことで信長兄上にムクロジ石鹸を渡す。


 でも信長兄上は自分で洗わずに、控えている前田利家に視線を向けた。そして近寄ってきた利家にムクロジ石鹸を渡して、立ち上がって体を大の字に開いた。


 利家は阿吽あうんの呼吸で、心得たように信長兄上の全身を洗い出すんだけど……うう……い、いたたまれない……


 信長兄上はこうやって全部お世話してもらうのに慣れてるんだろうけどさ。俺は基本的に庶民の感覚が残っちゃってるんだよ。だからどうしても、こういうのには慣れないんだよなぁ。


 俺もその横でさっと体を洗った。髪の毛もムクロジ石鹸で洗って、最後にちょっと椿油を馴染ませる。そうしないと髪の毛がパサパサになりそうだからな。シャンプーとリンスがないから、代用だ。


 まげを結ったりしてるとまた結うのが大変だから皆あんまり髪の毛は洗わないんだけど、湯船につかる風呂ができたのに髪の毛を洗わないなんて俺には考えられん。信長兄上を見習って俺も茶筅っていうかポニーテールにしてるからな。髪の毛も洗いやすい。毎日朝シャンしたいくらいだ。


 俺がわしわし髪の毛を洗っていると、髪は洗わずにもう一度湯船につかった信長兄上が口を開いた。


「喜六」

「はい」

「湯殿がここにしかないなら、俺に寄こせ」


 …………。

 実を言うと、そう言われるかもしれないな、って気はしてた。


 だって信長兄上は新しい物好きだからな。そして(おまえ)の物は俺の物、俺の物は俺の物、っていう、どこかの誰かみたいなことを平気で言っちゃう性格だからな。


 だからその返事も完璧に考えてある!

 ふっふっふ。俺がいつもやられっぱなしだと思うなよ。えへん!


「それは構いませんけど、条件があります」

「……ふむ。言ってみよ」

「湯殿の側に私の庵を作ってください。そして好きな時に家族でこの風呂に入れる権利を認めてください」


 つまりあれだ。別荘だな!

 これなら俺もいつでも風呂に入れるから問題ない。


 まあ龍泉寺城は造るのが大変だったけど、こういうのって建てるのが楽しいからなぁ。別に信長兄上が住みたいっていうなら譲ってもいいと思う。


 でも風呂はダメだ。俺にも入らせろ!



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