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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス7巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
永禄元年

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151/237

151 誤解です!

「そういえば喜六も寂しいのではありませんか?」


 犬姉さまに聞かれて俺は首を傾げる。


 そりゃあ、信長兄上たちが戦に行ってしまって心配だけど、寂しいっていうのとは違うな。戦に勝って、生きて帰って来て欲しい。五体満足で。


「それよりも心配です。無事に帰ってきてくださると良いのですが」

「ほほほ。戦に行くわけではないのですから、大丈夫でしょう」

「……え? 信長兄上たちは、三河へ向かったのですよね?」

「兄上たちではなく、竹中殿のことでございますよ」


 ……犬姉さま。今は信長兄上たちの話をしているのですが。なぜそこで半兵衛が出てくるのですか。


「あら。まあ、てっきり……ねえ?」

「ほほほ」


 犬姉さまと市姉さま、なぜ意味深な様子で笑っているんでしょうか。


 も、もしやとんでもない勘違いをしているんじゃないでしょうね!?


 ていうかさ、この時代では恋愛対象って女の子だけじゃないからさ。俺からすれば、全くもってあり得ない事に、男同士の恋愛は推奨されてる。


 戦場で命のやり取りをしてると、戦いが終わった後に種を残したくなる生存本能でエッチしたくなるって話はしたけど、戦場に女はいない。足軽たちが攻めた村にいる女の人を襲うっていうのはよくあるみたいだし、御陣女郎っていう下級とか中級を相手にする売春婦はいるけど、さすがに大将クラスは暗殺の危険もあるんでそういう事はできない。


 まあ一番無防備な体勢だしなぁ。危険だよな。

 かといって戦の後の興奮は抑えられない。

 そこで小姓さんたちの出番なわけだ。


 うん。俺、織田家に生まれて良かったな。下っ端のとこだったら、絶対アッーの被害に合ってたと思う。

 がくぶるがくぶる。


 あとは、恋愛関係にあった方が、命をかけて相手を守るから、っていう側面もあるらしい。


 そういや、古代ギリシャで恋人同士だけの軍隊を作ったら、めちゃくちゃ強かったって話も聞いてことがあるようなないような。あのスパルタの精鋭部隊も倒したとか。


 ……普通に鍛錬して倒せばいいと思うよ! 後は鉄砲を導入しようね!


「私と竹中殿はただの友達なので、誤解しないでくださいね」


 親友だけど恋人じゃないから!

 俺の恋人は、み、美和ちゃんだけだから!


 くすくす笑って袖で口元を隠す姉さまたちは、俺の言うことを分かってて、ただ単にからかってるだけなのかどうか……いや、ここは俺の心の平穏の為に、分かってくれてるって事にしよう。うむ。


 俺はせっせと和紙を正方形の形に切りながら、折り紙を増やしていった。


 あ、やばい。これじゃ二十羽鶴になる。

 うーん。どうしよう。あ、そうだ、やっこさんを折ろう。えーっと、ここをこうして、ああして。ついでに袴も折ろうか。


 そういえば兜の折り紙もあったよな。あれ、ちょっと難しいんだよな。覚えてるかなぁ。

 お、いけるいける。

 親戚の子供相手に折り紙をさんざん折らされたからなぁ。何が役に立つかなんて、後になってみないと分からんもんだな。


 それから箱とかもあったな。俺は一人暮らしだったから、広告を使って箱を折って、それを簡易ゴミ箱にしてたんだ。もちろん普通のゴミ箱もあるけどさ、テーブルの上の細かいゴミとかは、広告で折った箱に入れて、ゴミの日にまとめてポイッとすればいいから簡単だったんだよな。


「それよりも、市姉さまが勝家殿から頂いた歌かるたは、もう全部揃ったのですか?」


 俺は途中でリタイアしちゃったけど、確か熊はずっと作り続けて市姉さまに贈ってたはずだ。さすがにもう揃ったんじゃないのかな?


「ええ。百一首、揃いましたよ」

「市姉さま、凄く素敵なお箱もあつらえていらっしゃるのよ」

「そうなんですか。見てみたいですね」

「良いですよ」


 そう言うと、市姉さまは文机から綺麗な螺鈿細工の箱を持ってきた。黒塗りの漆器の箱で、蓋の部分には真珠色の貝殻を貼り付けて模様にしてある。意匠は流れる川に扇だ。


 市姉さまが箱を開けると、そこには色とりどりの歌かるたがおさめられていた。


「いつ見ても素敵ですわねぇ」


 犬姉さまがうっとりとして歌がるたを眺める。


 確かに、熊は絵も字もうまいから、なかなかよくできてるよな。

 市姉さまが手に取って見てもいいって言ってくれたから、一枚ずつじっくりと見る。

 ほら、俺は途中で作るのを止めちゃったんで、熊があの後どんなかるたを作ったのか知らないんだよな。


 ……あ。小野小町の絵が、市姉さまにそっくりだ。


 え、でも小野小町が市姉さまってことは、もしや深草の少将を熊が自分をモデルにして描いてるなんてことはないよな。深草の少将は小野小町に惚れていて、百日通ったらお嫁さんになりますよって言われてたんだけど、九十九日目に雪に埋もれて死んでしまったと言われる可哀想な人だ。


 熊、それは危険なフラグだぞ!


 でも確認したら熊には似ていなくてほっとする。


 あ、ひょっとして、平安時代で一番の美男子でモテ男、在原業平の絵を自分に似せてたりはしないよな。

 こっちも熊には似ていなくてほっとする。


 でも誰かに似てるんだよな。

 あ、信行兄ちゃんだ。 

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