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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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147 鉄は熱いうちに持て?

前話で甚兵衛さんがお亡くなりになっている表現がありましたが、甚兵衛さんは無事でした。留守の時に盗みに入っていたので、死んでません。

そこで、前話の内容を修正いたしました。

「勝家」


 顎をしゃくって信長兄上が熊に説明を求める。

 むう。なんで俺に聞かないんだろう。


 熊が騒動の原因を説明すると、信長兄上の眉間にみるみるうちに皺が寄った。


「火起請までしておいて、なぜこのように争っているのだ」


 それに答えたのは、リーダー滝川だった。熊の視線を受けて、一歩前に出る。


「恐れながら、私が答えさせて頂きまする」

「ふむ。答えよ」


 熊の説明を聞いて、信長兄上はさらに眉間の皺を深くした。


「では火起請の結果を受け入れず、騒ぎになっていると言うのだな」


 そしてギロリと左介を睨む。

 でも左介は腰が引けながらも信長兄上に反論した。盗人だけど勇者だな。


「しかしながら、それがしは無実にございます!」

「だが手斧を取り落としたのだろう?」

「それは……それは、大屋の者らが不正をしたに違いありません」


 なんていうか、その言い分ってちっとも言い訳にもなってないけど。これで信長兄上が納得すると思ってるのかな。


 だけど左介の仲間はそうだそうだと同意する。


 うーわー。知らないぞ、俺は。信長兄上が凶悪な顔で笑ったぞ。

 これ、大魔王光臨の兆しだぞ。


 左介。お前、やっちゃったな。


「まったく……ただならぬ人数が弓や槍を持っておるから何事かと思えば、火起請を行って、その結果を不正だと言って受け入れぬか。ふむ。ではまことに不正があったかどうか俺が確かめてやろう」


 え? 確かめるってどうやって?


 信長兄上は、改めて甚兵衛さん夫婦と左介の両方から話を聞いた。そしてふむ、と言いながら顎に手をやると、山王社の神人に火起請をやった時のように鉄を熱せよ、と言いつけた。


 しばらくすると神人が鉄の部分を赤く熱した手斧を持ってきた。木の持ち手のところを持っているけど、それでも熱そうだ。


「良いか。よく見ておれ。俺が無事に火起請の鉄を持つことができたら、左介を成敗する。そのように心得よ」


 えええええ。

 それって信長兄上がその真っ赤に熱してる鉄を持つって事か!?

 いやいやいやいや。それはマズイでしょう。絶対火傷するよ! しかも重度だよ。

 っていうか手を火傷したら槍も持てなくなるんじゃないか!?


 絶対、駄目だよ!!


「兄上、無茶です!」

「ふん。神仏の判断がまともなら、俺が持てぬはずもない。さっさとそれを寄こせ」


 兄上、それ無茶すぎるよ!!

 や、止めようよ!

 っていうか、誰か止めてー!


 俺の心の中の叫びもむなしく、信長兄上は右手で真っ赤な手斧の鉄の部分をつまんで持った。ジュウッと嫌な音がして、焦げる臭いが漂う。


 ぎゃああああああああ。

 こ、焦げてるぅぅぅぅぅぅ。


「勝家殿! 冷たい井戸の水をたくさん汲んでください! 水を入れた桶は一つじゃダメです。いくつかお願いします。そして滝川殿は荏胡麻油と綺麗な紙と綺麗な布をお願いします。二人とも、急いで!」


 そんな俺の焦りもなんのその、信長兄上は三歩歩いて神棚の上に手斧を置いた。


「確かに見たな?」


 あまりのことに言葉を失っている皆を見回した信長兄上が、そのまま腰にいた刀を抜いた。

 ギラリと刃が一閃する。


「!」


 鈍く光る刃が、左介の首筋に吸い込まれる。

 さして力を入れるまでもなくスッと刀を引くと、斬られた頸動脈から真っ赤な血が噴き出した。


「う……ぁ……」


 声にならない声を上げた左介は、そのままドウと倒れる。

 地面に倒れた左介は、しばらくびくびくと蠢いていたけれど、やがて動かなくなった。


 見ていた俺たちは、声も出せずにただ立ち尽くす。


 し……死んだ……?

 殺した……?

 信長兄上が、殺した……?


 稲生の戦いで林のジジイが死ぬところは見たけど、あの時は落雷で倒れた姿を見ただけだし、うつ伏せで顔は見えなかった。


 こんな風に、血は出てなかった。

 たくさんの、血が……


 グラリと体が傾げそうになる。頭がクラクラする。


 重苦しい空気に、潰されそうに、なる。


 その静寂が破れたのは、いきなり響いた熊の大声だ。


「喜六郎様! 水を持って参りました!」


 俺はハッと我に返った。

 そ、そうだ。冷たい水で冷やさないと、信長兄上の火傷が!


「こ、こちらへ持ってきてください」


 俺は熊が両手に持った手桶のうちの一つを受け取って、急いで焼けた手斧を掴んでいた信長兄上の左腕を取る。

 左手には鷹狩の時に使う手甲をつけている。だけど掌と小指は手甲に覆われていない。

 見る限り水ぶくれはできてないみたいだったけど、問題は手斧を掴んだ親指と人差し指だ。

 最悪なケースだと、もしかしたら、熱で手甲の皮と指がくっついちゃってるかもしれない。


 俺は信長兄上の手に触らないように、手甲をつけたままの手を水につける。

 今が冬で良かったよ。これだけ水が冷たければ、患部を冷やすことができるからな。


 それと、鷹狩りの帰りで手甲をつけてたのは不幸中の幸いだったな。もしこれが素手だったら、大惨事だ。

 いや、手甲の中が大惨事じゃないって確信はないけども。


 それにしても信長兄上。無茶しすぎにも程があるだろう!


火起請の話は信長公記に載っています。

しかも作者の太田さん、現場を見てるっぽいです。

つまり、ほぼ事実……がくぶる。

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