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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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144 美和ちゃんと第一次接近遭遇……の、予定

 信長兄上みたいに当主ならともかく、俺はしがない八男だから側室とかもらわなくても大丈夫だと思うしな。ほら。その分、信行兄ちゃんがたくさん奥さんもらってるし。

 今は僧籍にいるから別居中だけど、そのうち還俗するかもしれんしな。信行兄ちゃんのことだから、還俗したら絶対奥さんが増えそうだよなぁ。

 お寺でも恋人増やしてるからな。相手は男だけど。


 あの手の早さは絶対に父上の遺伝だな。


 それに俺の上にも腹違いとはいえたくさん兄弟がいるから、政略上しなくちゃいけない縁組は、側室が欲しいって兄弟に任せようと思う。これぞ適所適材だな。うむ。


「でも私は不器用なので、室は一人だけが良いです。というか、一人で精一杯です」

「……え?」


 意外なことを言われたように、美和ちゃんは目を見開いた。

 そりゃあ確かに、ある程度の地位にいれば、何人もの奥さんを持ってるのが普通だ。でも信光叔父さんみたいに、奥さんは一人だけしか持たないって人もいる。


 確かにハーレムとか憧れないわけじゃないけど、実際にたくさんの奥さんがいたら大変だと思うんだよな。女同士の嫉妬とか、絶対あるだろうし。


 美和ちゃんが嫉妬で母上みたいになるとは思わないけどさ。それでもやっぱり、奥さんは一人がいい。

 でもってその一人は、美和ちゃんがいい。


 だってさ、政略結婚だと顔も知らない相手と結婚しなくちゃいけないわけだけど、その相手が母上と似てる人の可能性だってあるわけだ。そうなったら俺の結婚生活はお先真っ暗だ。


 それなら、胸が大きくて癒し系の美和ちゃんと結婚するほうが何倍もいい。庶民的なとこも、俺には好ましいしな。


 きっと、まだ俺の美和ちゃんへの気持ちは恋じゃない。

 だけど、いつか誰かと恋をするなら、その誰かは美和ちゃんがいい。


 ……と、思う。本人には言えないけどな。うむ。


「私も、美和殿も完璧ではないというならば。二人でお互いを支え合えば良いと思いませんか?」

「二人で、ですか?」

「はい。私たちはまだ半人前ですが、二人揃えば一人前になります。それに完璧な人などどこにもいませんよ。だからこそ、人は努力するものなのです。ですから一緒にがんばりましょう」


 よし。決まった。

 こ、ここで、美和ちゃんの手を握れば完璧だな。


 俺はそーっと、手を伸ばしてその華奢な指先に触れようと―――


「喜六郎様! 大変でござる!」


 熊ぁぁぁぁぁぁぁ!

 なんでこんないいトコで邪魔するんだよ!


 しかも狙ったようなタイミング!

 わざとか!?

 わざとなのか!?


「勝家殿、どうなさったのですか」


 舌打ちしそうなのを我慢して熊に聞く。美和ちゃんの前だからな。舌打ちなんて不良みたいな事はできないからな。


「それが、それがしにも良く分からぬのですが、織田信房殿の家人が家長殿に助勢を求めて参られたのでござる」


 織田信房っていうのは、織田姓だけど一族の人間じゃない。父上の代から織田に使えている猛将で、その武勇で父上から織田姓をもらった武将だな。

 そして今川と松平の連合軍と戦った小豆坂の戦いで奮戦して、小豆坂七本槍って呼ばれてるうちの一人だ。

 小豆坂七本槍には熊のライバル下方貞清殿とか、佐々(さっさ)政次、孫介なんかもいるな。


 で、その織田信房殿がどうしたんだ?

 俺が美和ちゃんと初めて手を握るのよりも、重大なことが起こったんだろうな?


 熊の説明を聞くと、なんでも海東郡大屋って清須の北にある村に住む、織田信房の家来の甚兵衛って人のところに、友人で一色村に住む左介って人が夜盗に入ったんだそうだ。

 友達の家に盗みに入るっていうのはどういうことだよとか思うけど、友人だからこそ、甚兵衛が年貢を収めに清須に行くのを知ってたんで、その日を狙って盗みに入ったらしい。


 ところが甚兵衛の奥さんがそれに気がついて、揉み合ったあげく、左介の刀の鞘を取り上げた。


 それにしても女の身でよく泥棒に立ち向かったよな。美和ちゃんは絶対に真似しちゃダメだぞ。危ないからな。


 その鞘を盗みの証拠として、守護である斯波義銀に訴えたわけだ。


 でも左介の方は盗みに入ってないし、その鞘も自分の物じゃないって言い張って平行線になった。

 なんかさ、左介は池田恒興の家臣だってことで、かなり横柄な態度を取ってるらしい。


 まあ、いくら勇猛で名を馳せているとはいえ一介の家臣と、織田家の当主の乳兄弟とじゃ、やっぱりツッチーの家の方が勢いがあるからな。

 それに鞘はよくある造りで、個人を特定できるようなものじゃなかったのも、左介に罪を認めさせられなかった要因だろう。甚兵衛さんの奥さんの証言だけじゃ、証拠にならんからな。


 と、ここまでは割と普通の裁判みたいな感じなんだが、ここから先がもう俺には理解不能な解決法を取った。


 なんと、火起請ひぎしょうで、どちらが正しいか判断するってことになったんだ。


 火起請っていうのは、手の平に牛王宝印ごおうほういんっていう、熊野神社でもらえる護符を乗せて、その上に熱く熱した鉄を置いて、神棚まで歩いていければ、神仏の加護がある、すなわち正しい行いをしているって事の証明になるっていう、神様頼みのトンデモ判決方法だ。


 土地の境界をめぐる争いとか、水の取り分をめぐる争いなんかで、どっちが正しいかを判断するためにやる事が多いらしいけどさ。

 これって、どっちが正しいか分かるんじゃなくて、どっちが我慢強いかが分かるだけなんじゃないのかな……


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