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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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141 蒸留酒の完成

「それに弾正忠となれば、官位は正四位下になりますが、朝廷もいきなりそのような高位の官位を授けたりはせぬでしょう。とすれば上総介と同じ正六位下である弾正少忠あたりが妥当ですが、信長様の性格をかんがみますに、同じ官位なら上総介を寄こせとおっしゃりそうですなぁ」


 ああ、うん。上総介の官位を今川から奪い取って戦になっても構わないぞとか言いそう。超絶言いそう。


「尾張守であれば先ごろ討たれた陶晴賢すえはるかた殿が持っておられたが、尾張守護である斯波義銀しばよしかね様との兼ね合いもおありでしょうし、難しいところでございますなぁ」


 陶晴賢ってあれか。筑前とか長門、現代で言う、福岡県とか山口県の辺りを支配してた大内氏を謀反で滅ぼした武将か。

 地理的に、尾張とは何の関係もないとこに住んでるな。よくある事だけどな。


「つまり、あまり目立った行動を取っては、かえって信長兄上の迷惑になるということでしょうか」


 下手に信長兄上に朝廷への献金をお願いして、代わりに信長兄上が官位をもらったとしても、それが争いの新たな火種になるってことか。

 それはダメだ。俺のせいで完全に歴史が変わっちゃうからな。


 いやもう、現時点で明智のみっちゃんがいたり竹中半兵衛がいたり、かなり歴史が変わってる気はするけど、大筋は変わってないはずだ。うん、きっと。絶対に!


「今は、そうですなぁ。ですが、喜六郎様のそのお気持ちは、きっと主上に伝わりますよ」


 そうだといいなぁ。

 お葬式もできないとか、切なすぎるもんな。






 結局、一か月後に新しい天皇が践祚せんそ、つまり天皇の位についたけど、お金がなくて即位式はできなかった。

 更に一か月後の十一月二十二日に、やっと亡くなった天皇の葬礼の儀が行われた。亡くなった後に贈られる諡号しごうは、後奈良帝とされた。


 二カ月もお葬式ができなかったとか、ほんと切ない。

 っていうか、その間ずっとご遺体は放置……?


 か、考えちゃいかんな。うん。








「喜六郎さま。蒸留器とやらができましたぞ。そしてこちらが蒸留器で作りました酒でござります」


 師走に入った頃、生駒屋敷に呼ばれた俺は美和ちゃんとデート……ではなく、家長さんから蒸留酒が完成したと聞かされた。


 そしてなぜか俺の横には熊がいる。最近は忙しくて俺のお供をしていなかったんだけどな。なんだか急に時間ができて久々にお供しますとか言ってきた。そしてなぜか滝川殿までいる。


 あれか。熊はひょっとして動物の野生本能で蒸留酒ができたことを察知したのか!? そして滝川殿は忍者的な諜報活動でそのことを知ったのか!?


 とか、思ったら滝川殿が目が笑ってない笑顔で、じいっと俺を見てた。


 ひ、ひいっ。滝川殿が忍者だなんて全然思ってないです。はい。


「こちらが一度蒸留した酒で、こちらが二度蒸留した酒で、こちらは三度蒸留した酒になります」


 一応、どれくらいのアルコール度数になるか分からなかったから、一回から三回までの蒸留をしてもらって味を確かめることにしている。


 もちろん俺はまだ元服してなくて酒が飲めないから、今回は熊と滝川殿に味見してもらう予定だ。

 まあ元服してなくても酒は飲めるけどな。別に未成年は酒を飲んじゃいけないなんて法律はないし。でもまだ俺の体は子供だしなぁ。子供の飲酒は体に良くないからな。うむ。


 それに信長兄上があんまり酒を飲めないから、俺も飲めないんじゃないかと思う。父上も酒にはあんまり強くなかったらしいし、多分、血統的にアルコールの分解酵素が少ないんじゃないかと思うんだよなぁ。


 今度、アルコール度数が高い蒸留酒でパッチテストでもしてみようかな。

 えーっと。消毒用アルコールをしみこませたガーゼを七分間腕に貼って、その後十分間様子を見るんだったかな。


 いやうちの大学の同期が、サークルの新歓コンパの時に急性アルコール中毒でぶっ倒れたからさ。救急車で運ばれて一命は取り留めたんだけど、お医者さんに凄く怒られたらしいんだ。

 それでお前らもアルコール分解酵素が少ないかどうか試しといたほうがいいぞ、って言われて、やってみたことがあるんだよな。


 一応、前世の俺は酒は飲めたんだけどな。


 でもどっちかっていうと甘い酒の方が好きだったな。サワーとか。


 あ、焼酎ができたらサワーを作れるのか。それは楽しみだな。飲めれば、の話だけど。炭酸がないけど、柑橘系を入れて飲んだらおいしそうだよな。


「味はいかがでしたか?」


 既に味見している家長殿に聞くと、二番目の酒壺を差した。


「そうですね。私は二回蒸留した酒の方が好きですなぁ」

「なるほど。ではちょうど良いので、勝家殿と滝川殿にも飲み比べて頂きましょう」

 

 俺がそう言うと、熊は待ってましたとばかりに嬉々として盃をあおった。

 その横で、滝川殿はちびりちびりと味を確かめるように飲んでいる。

 

 なんか、飲み方にも性格が出るよなぁ。


「ほう。この喉にくるような味わいが独特ですな」

「普通の酒よりも臭みがないように思いますな」


 ぐびぐび飲んでいる熊に味の感想は求めちゃいかんな。うん。こいつは酒ならなんでもいいに違いない。

 俺は味を確かめながら飲んでいる滝川殿に詳しく感想を聞くことにした。


「臭みがないということは飲みやすいということですか?」

「そうですね」


 ふむ。なんでか分からんけど、ちょっと飲みやすくなってるのか。それはいいな。


 ただ問題は銅で蒸留器を作った場合のコストだよな。結構かかったらしいんだよ。

 銅以外でコストダウンできる材料ってあるかな。


 うーん。陶器とかかなぁ。 

感想欄でお酒と銅が化学反応を起こして消臭効果があると教えて頂きました。

ですので、少し本文を変更します。

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