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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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139 朝廷の現状

 とは言っても、この時代の常識だと天皇の徳がないから疫病とか天災が起こるって考えられてるからな。

 ほんと、生まれ変わっても天皇にだけはなりたくないね。そんな万民の為に祈るとかできないからな。


 でも、それほどまでに民を思った帝が亡くなっても、人々にとっては自分たちの村が戦に巻きこまれるかどうかの方が大事な問題なんだよな。


 なんだか、切ないなぁ。


「先の禁裏様も、つつがなく大喪の礼を行えれば良いのですが」


 月谷和尚さまが、しみじみと呟く。


 大喪の礼っていうのは、天皇のお葬式の事だ。そもそも天皇は天照大神あまてらすおおみかみの子孫ってことになってるんで、当然神道のお葬式をすると思いがちだけど、この時代では神仏習合っていって、神様も仏様も元は同じ存在って考え方が浸透してるから、お寺でお葬式をするんだそうだ。


 ちなみに仏教的には天照大神は、大日如来ってことになってるらしい。真言宗の祖である空海さんがそう言ってる。


 それもあって、天皇の菩提寺が京都の東山にある、真言宗泉涌寺派総本山、泉涌寺せんにゅうじになってるみたいだな。


 それから土葬が一般的なこの時代で、天皇は火葬するのにはびっくりだよ。

 ただ、衛生的には火葬の方がいいから、日本全体に広まってくれるといいんだけどな。


 昔は上皇が火葬されるのを見物する人が多くて大変だったらしい。

 娯楽なのか、ありがたがってるからなのか分からんけど。

 あれかな。火葬の時の灰がかかると病気しないとか。


 確か神社で古いお守りとか破魔矢なんかをお焚き上げする煙を浴びると、悪い所が治るって言われてないっけ。


 それと同じ……なんてことはないか。


「それほどまでに朝廷は困窮なさっているのですか?」

「そのようでございますなぁ。東宮様も、即位式をなさるのはいつの事になるのやら」


 お葬式に最低でも銀一万(ひき)必要らしい。お金の単位で言うと、百貫だな。

 現代で言うといくらだ? 質の良い永楽銭が大体百円くらいだとすると、一貫が銅銭千枚だから、十万円くらいか。とすると百貫だと一千万円か。


 葬式にしては結構大金だな。


 ただ最低限でも一千万ってことは、それだけ儀式が多いってことかもしれんね。

 天皇の遺体を葬儀の日まで安置する殯宮もがりのみやも造らないといけないそうだしな。なんか色々と儀式に必要な物が多いんだろう。


「しかし、即位の礼ともなると、更に大金が必要となりますな」

「それは、おいくらくらい必要なのでしょうか」

「銀五十万疋ほどでしょうか」


 えーっと、えーっと。

 銀一万疋が一千万円だろ。その五十倍だから、五億円か!?


 うわぁ。そりゃぁ……厳しいな。

 葬儀の銀一万疋ですら用意できないのに、即位の為のお金が用意できるとは思えない。


 ていうか、そもそも天皇の崩御自体が、禁忌とされているらしいんだってさ。天皇は神様だから、神様が死ぬなんてとんでもない、ってことだ。だから本来は、天皇の位を譲って「上皇」になってから、崩御するものなんだそうだ。


 でも上皇になるのにも、それにふさわしい儀式をしなくちゃいけない。応仁の乱の後、天皇家にそれだけの儀式を行うお金がなくなっちゃって、寛政五年、今から百年くらい前の後花園上皇が上皇として即位して以降、上皇になった天皇はいないんだそうだ。


 やっぱり切ない。


 でもなぁ。そうは言っても、俺自身にどうにかできる力はないからなぁ。信長兄上なら、ちょっとは何とかできそうだけど、天皇家の窮状を救う理由がない。


 ん? 待てよ。

 でもさ。信長兄上を何とか説得できれば、何とかできるってことか?


「月谷和尚さま」

「なんですかな、喜六郎様」

「信長兄上に、朝廷の大事さを理解して頂くには、どうしたら良いと思いますか?」


 そう聞くと、月谷和尚さまはしわくちゃの顔をさらにしわくちゃにさせて破顔した。


「ふむ、ふむ。喜六郎様は、朝廷を何とかしたいと思っておいでですかな?」

「なんとかできるのかは分かりませんけど」


 いや、俺はさ。別に右翼でも何でもないけど、やっぱり日本人だからさ。皇室がここまで貧乏だって聞くと、何とか力になれないかな、って思っちゃうんだよな。


 ほんと、不思議だけど。


「喜六郎様は、今川家にあって織田家にない物が分かりますかの?」


 今川家にあって織田家にない物?

 広い領土と強い兵とかかな。


 そう言うと、月谷和尚さまは首を振った。


「権威でございますよ」


 今川義元は駿河国と遠江国とおとうみのくにの守護大名だ。もちろん正式に幕府から任命されている守護で、正式な官位も持っている。


 官位をくれるのは朝廷だけど、武家の場合は、一応その窓口は幕府になる。幕府が、これこれこういう御家人にこの官位を下さいとお願いして、朝廷からその官位がもらえるってわけだ。


 最近では幕府を無視して、直接朝廷から官位をもらっちゃてるみたいだけどな。父上がもらってた三河守なんかは、そのケースだ。


 一方の織田家は、父上は上洛して正式な官位をもらっていたけど、信長兄上は上洛したことがないから、当然正式な官位なんてもらったことがない。上総介って名乗ってるけど、自称だ。正式な官位じゃない。

 というより、朝廷なんて何の力もないから勝手に官位を名乗って何が悪い、とか思ってそうだ。


 いや。断言できる。

 絶対、そう思ってる。


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