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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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126 市姉さまのお相手は?

「もしかして、市姉さまと犬姉さまも薙刀隊に入っていらっしゃいますか?」

「いや、あの二人は喜六が申しておった救護隊に関心があるようだな」

「そうですか」


 それを聞いて安心したよ。あのたおやかな市姉さまとおっとりした犬姉さまが薙刀を持って戦ってる姿とか想像できないからな。


 白衣の天使なら似合いそうだ。でも怪我の手当てをして欲しくてわざと怪我する奴が出てきそうだから危険だな。熊はわざと怪我をするなんて事しなさそうだから安心だけど。

 ……しないよな?


「あの……信長兄上」

「なんだ」

「市姉さまの縁談はお考えになっていらっしゃるのですか?」


 そう聞くと、信長兄上はギロっと俺を見た。いつものことながら、目力めぢからがハンパない。


「なぜそんな事を聞く?」

「そろそろ縁談の話が出てもおかしくない年ではないかと思いまして」


 市姉さまは今年で十四だ。この時代では適齢期と言っていい。

 史実では行き遅れって呼ばれる年まで信長兄上の元にいて、それから浅井長政と結婚したって話だけど、一説にはさすがにその年まで結婚していないなんてことはありえないから、再婚だったんじゃないかとも言われている。浅井との同盟の為に、一度離縁させてから嫁がせたってことだな。


 いずれにしても、武家の女の結婚は家のためにする結婚だからな。相手も家長が決める。織田家の場合、信長兄上だな。


 その信長兄上は眉間に皺を寄せて、むう、と唸っている。

 そして近くに寄れと俺を手招いた。


 近習にも聞かれたくない事なのかな。

 でも、信長兄上の口から出た名前は、市姉さまではなかった。


「お艶殿をの、遠山景任とおやまかげとう殿に嫁がせることにした」


 お艶殿っていうのは、俺たちの叔母だけど、今年二十三歳の信長兄上よりも年下の叔母だ。今年二十だったかな。信長兄上と三歳しか違わなくて、しかも兄上より年下の叔母で、ちょっと遠い目になった記憶がある。

 うん。まあ、つまり、父上だけじゃなくて祖父さんも生涯現役だったってことだな。元気だよな。


「遠山殿というと、東美濃ですか?」


 俺は日本地図に月谷和尚さまが記した名前を思い出しながら聞いた。


「うむ。元は美濃に属しておったがな、少し前に武田に従属した。そこで家督争いがあったが、武田に裁定を求めてな、景任殿が当主となったのだ。景任殿のいる岩村城は美濃にも近く武田にも近いゆえ、できれば手を結んでおきたい」


 東美濃ってことは明智のみっちゃんのとことも近いもんな。みっちゃんとこになにかあれば景任殿が、景任殿のとこに何かあれば明智がすぐ救援に行けるっていうのは心強いな。


 ってことは、この縁談をまとめたのって、みっちゃんかな。やるな。


「いずれは景任殿の弟で断絶した苗木を継ぐ直廉なおかど殿にも、妹のうちの一人を嫁そうと思う」

「まさか市姉さまを―――」


 言いかけた俺に、信長兄上は首を振った。


「いや。家の為に嫁ぐのがおなごの役目とはいえな。俺は市と犬には、意に添わぬ縁談は押し付けたくないのだ。側室腹の妹をやろうと思う。それにな―――」


 ことさらに低く告げられた言葉に、俺は深く頷いた。



 母上のように、狂うおなごを見たくはない。



 おそらく、と信長兄上は言った。

 おそらく母上の血筋は情が深いのであろう。それが良い方に働けば良いが、そうでないなら……


 そうでないなら、あの時のようになる、って事か。

 俺はあの、母上の夜叉のような顔を思い出して、ふるりと震えた。


「それが織田の気の強さと合わされば、どのように狂ってしまうのか、想像もできぬ。だから、できれば信光叔父のように、正室だけを大切にしてくれる相手とめあわせたいのだ」


 信長兄上の言葉に、俺はゴクリと唾を飲んだ。


 いる! いるよ! 市姉さまだけを大切にしてくれる人。

 しかも織田の重臣だよ!


「勝家殿なら、市姉さまだけを大切にしてくれます」

「ふん。喜六は勝家贔屓(びいき)だからな」

「それだけ信頼できるお人柄なのです」

「……だが、市をめとらせるには功績が足りん」


 去年の三河の福谷うきがい城での戦いに勝っていれば、功績になってたのかもしれんけど。

 いやでも、あの戦いは命があっただけでもラッキーだったんだ。それ以上を言うのは贅沢ってもんだ。


 そういやもうすぐ桶狭間の戦いがあるんじゃないかね。そこで功績を……例えば今川義元の首を取ったりしたら、問題なく市姉さまと結婚できるんじゃないのかな。


 ただ弘治三年っていうのが西暦でいつなのかが分からないから、あとどれくらい先のことなのか、っていうのが分からないんだよな。


 本能寺の変は歌って踊れる動画で覚えたんだよ。一五八二年だ。

 で、桶狭間の戦いも語呂で覚えてたのをぽっかり思い出したんだよ。


 一五六〇年(いまごろ)驚く今川軍、だ。


 どうだ、凄いだろう、俺。

 自画自賛しちゃうね。


 桶狭間がいつか分かれば、そこから本能寺の変まで何年かっていうのが分かるからな。これでもう安心だよ。


 でも……あれ? 本能寺の変フラグってもう折れたよな。


 だったら本能寺の変より桶狭間の戦いの方が重要なわけで。でも、桶狭間の戦いが起こるのがいつか思い出しても、今が何年か分からないんじゃ、意味ない……?


 ぜ、前世の記憶があっても、これじゃ何の役にも立ってないじゃないかー!?


お市の生年はちょっと史実とは違うかもしれません。

喜六に「姉さま」と呼ばせたかったのです。

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