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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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119 皆で鍛錬

 翌朝。

 いつものように部屋に熊が俺を起こしに来た。


「喜六郎様、朝でござ―――」


 そしていつものように布団を引っ剥がして固まった、らしい。俺は寝ぼけてたんでハッキリした記憶がないけど。


「きききききろくろうさま。こ、これは一体何事でござるか!?」

「うーん? あ、勝家殿、おはようございます……」


 目をこすりながら起き上がると、半兵衛も目を覚ましたらしく同時に起き上がる。


 ふわぁ~あ。昨日は結構遅くまで話しこんでたから、ちょっと眠いね。今何時だろうな。熊がいつも起こしにくる時間は七つ半だから、朝5時か。


 うーん、と伸びをして布団から出る。


「そうだ。半兵衛殿も私たちと一緒に鍛錬をいたしますか?」

「良いのですか?」

「ええ。もちろん。半兵衛殿は得物は何が得意なのでしょう」

「そうですね。槍でしょうか」


 俺と半兵衛が会話していると、なぜか熊が変な顔をして俺たちを交互に見ていた。

 ん? どうしたんだ?


「その……鍛錬などして大丈夫なのでござろうか……?」


 そうか。半兵衛は美濃から来たばっかりだしな。まだ疲れが取れてないかもしれんね。


「半兵衛殿はまだお疲れですか? でしたら部屋でゆっくり休まれますか?」


 末森には半兵衛に用意された部屋もあるしな。そこでゆっくり疲れを取ったほうがいいかもしれないしな。


「いえ。大丈夫ですよ。一晩中話をしていただけで疲れはしません」


 そうか? それならいいんだけどな。

 くすくす笑う半兵衛は元気よくスノコベッドから降りた。俺もベッドから降りて、もう一度大きく伸びをする。


「勝家殿、どうかしましたか?」


 なんだかじーっと俺を見る熊に首を傾げて聞くと、熊はブンブンと首を振った。


「い、いや。なんでもござりませぬ」


 それを見た半兵衛がまたクスクスと笑った。


 竹中半兵衛って笑い上戸なのかな?







 三月とはいえ、早朝はまだまだ寒い。

 でもいつでもどこでも元気な熊と一緒に鍛錬していると、そのうち体が温まってくる。半兵衛も、俺より細っこいのに、槍さばきは熊に褒められるほどだった。


 くそう。半兵衛は、智略に優れて槍にも優れていずれイケメンってことか。俺も対抗して―――智略は無理だから、せめて弓で対抗したいぞ。


 そう思って、いつになく真面目に弓の練習をする。

 的に照準を当てていると、世界が俺と的だけになるような気がするのが不思議だ。そういう時は、大抵よく当たる。いつかは無我の境地に至れるといいんだけどな。


「喜六郎様、今日はいつになく気合が入っておりますな。良い事です。わっはっは」


 熊が豪快に笑うと、タロが視界の隅で頷いた気がした。こら、見えてるぞ。


「半兵衛殿には負けられませんからね。私は槍より弓の方が得意なので、こちらの鍛錬をいたします」

「さようですな。競い合う相手がいるというのは良い事です」

「柴田様にも競い合うお相手がいらっしゃったのですか?」


 熊が槍をブンブン振り回ししていると、半兵衛が額の汗をぬぐいながら聞いた。


「さよう。下方貞清しもかたさだきよと申す男がおりましてな。それがしより五つばかり年下でござるが、これがもう鬼のように強いのなんの。十本に五本は取られてしまいますな」


 あの「かかれ柴田」の熊と五分五分なのか。それは凄く強いんじゃないか? 


 確か末森のすぐ北にある上野城の城主だよな。ご近所さんだから何度か会った事がある。へえ。あの人、そんなに強いんだ。


 でもあんまり有名じゃないってことは、もしかしたら早死にしちゃった人なのかな。


「小豆坂七本槍の一人ですね」

「ほう。ご存知であるか」

「ええ。小豆坂の戦いでの七本槍の方々の武勇は美濃にも聞こえて参りましたから。あの今川を相手に一歩も引かぬ戦いをしたと、父も感嘆しておりました」

「うむ。獅子奮迅の槍働きであったな」


 小豆坂の戦いっていうのは、今から十六年前に岡崎城に近い三河国額田郡小豆坂で、織田と今川・松平の間で行われた合戦だ。


 松平は松平清康の代に三河全域をほぼ平定したんだけど、天文4年の森山崩れって呼ばれる家臣による清康の暗殺によって、内部がガタガタになっていたんだな。

 その隙を狙って俺の父である織田信秀が三河に侵攻したってわけだ。


 それで天文11年の合戦の時は小豆坂七本槍って呼ばれた七人の活躍によって勝ったんだけど、天文17年の合戦の時は、今川の誇る軍師、太原雪斎率いる今川の一万の軍に対し四千の兵で対抗して負けちゃったんだよな。


 熊も小豆坂の戦いには行ってるんだけど、七本槍の一人には選ばれていない。八本槍なら入ってたのかもしれんけど、偶数だからダメだな。陰陽道で言うと、奇数は「陽」で偶数は「陰」だからな。

 だったら九は「陽」の極まった数字ってことで縁起がいいんだけど、さすがに九人選ぶと多すぎるのかね。


「もちろん美濃に聞こえる柴田様の武勇も、それに劣らぬものでございます」

「わっはっは。世辞などいらぬぞ。それがしもいずれは、柴田の右に出る者はなしと言われるようになりましょうぞ」


 うん。大丈夫だぞ、安心しろ。熊の名前はちゃんと後世まで伝わってるから。熊そっくりの肖像画と一緒にな。


下方貞清さんは80歳まで長生きしたそうです。

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