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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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117 半兵衛くんとお食事会

 竹中半兵衛を末森に招いた俺は、そりゃあもう豪華な食事を用意した。まずは旅の疲れを落とすために蒸し風呂で汚れを落としてもらって、ほっかほっかの美少年ができあがったところで宴会だ。


 俺の部屋に来てもらったんだけど、タロジロは残念ながら部屋の隅で座ったまま護衛だ。ちゃんと後で同じ物食べさせてあげるからな。ちょっとだけ我慢してくれよ。


 金剛力士像が、狛犬か沖縄のシーサーになったって感じだな。見ようによれば、可愛い……か?


 用意したのは卵料理がメインだ。ニラ玉あんかけにしようと思ったんだけど、ニラがまだ旬じゃないらしくて手に入らなかったので断念した。


 ニラなんてスーパーに一年中あったような気がするけどな。旬なんてものがあったんだな。知らなかったよ。

 さすがにこの時代は旬の物以外は食べるのが難しい。芋みたいに保存できるような物ならいいんだけど、新鮮野菜は旬の時期だけだな。


 でもニラがなければ、具のないただの卵あんかけだ。それもおいしいといえばおいしいけど、おもてなしの料理としたらイマイチだよな。


 しかーし。今年の俺は、去年の俺とは違うのだよ。なんと、諏訪大社から神様を分霊してもらって、先に龍泉寺に分社を建ててもらっているのだ。


 つまり、だ。

 肉が食べれるんだよー!


 さすがにいきなり神様のお遣いである鶏はまずいから、きじの肉だけどな。それでもお肉には違いない。それを卵でとじて味つけすると、親子丼ならぬ親戚丼の完成だ!


 そして!

 そしてそして!


 遂に醤油っぽいナニカが出来上がってきたんだよ!

 味も薄いし、うま味もイマイチだけど、味噌じゃない。熟成させたら醤油になるのかな、って味だけど、今までの味噌だまりに比べたら、断然醤油に近い。

 いいねいいね。この調子で完全版醤油を完成させて欲しいものだ。

 津島の味噌蔵かくやの主人の喜多衛門さん、期待してるからな!


 雉はせっかくだから照り焼きにも挑戦してみた。鍛冶職人の五郎助さんがフライパンを作ってくれたからな。鉄より加工しやすいから銅製で作ってもらった。ちょうど蒸留器を作る用に銅はいっぱい確保してあったし、ちょうど良かった。


 フライパンの取っ手は剣の鞘の部分と同じように作ってくれた。……うん。なんだか高価なフライパンになったような気がするぞ。


 照り焼きはみりんがないからイマイチだけど、まあお酒で代用できるしな。甘みもないけど、それも我慢だ。今までの味気ない塩だけの焼き鳥よりはおいしいしな。

 ああ、そのうち焼き鳥もできるかもしれんね。


 さらに卵と言えばこれ、茶碗蒸しだ。

 蒸し器のせいろの部分は竹で作れるからな。津島の五郎助さんの親戚で桶屋をやってる福島正信って人に構造を説明したら、すぐに作ってくれた。下の鍋部分はもちろん五郎助さんに作ってもらった。


 いずれ砂糖が手に入りやすくなったらプリンを作るんだ!

 夢のバケツプリンだな!


 ドヤ顔で料理を披露すると、半兵衛は驚いたように膳の上を見た。


 今日のメニューは雉と卵の親戚丼に、雉の照り焼きに、わかめの味噌汁に里芋の煮物に茶碗蒸しだ。あとは大根の漬物だな。


 ちょっと肉が多くなったけど、俺も半兵衛も成長期だしな。全然問題ない。


 それに半兵衛はもっとしっかり食べないと、細っこいまんまだぞ。俺もあんまり人のことは言えないけど、そのうち信長兄上みたいな細マッチョになるからこっちも問題ない。うむ。


 ちなみにこたつは、熊用に作ってもらったのを借りてきて、俺のこたつとくっつけて広くしている。


 いや~。あの竹中半兵衛と同じこたつに入ってご飯を食べるとかさ。歴史オタクの山田が聞いたら、すっごく羨ましがるんじゃないかね。


 戦国時代に転生したって分かった時はショックだったけど、こうして歴史上の有名人と会って一緒にご飯を食べることができるんだから、そう捨てたもんじゃないな。


「これは初めて見る物ばかりですね。尾張ではこのような食事をなさっているのですか?」

「ええ。お口に合うといいのですが」


 そして料理の虜になって、信長兄上の為に献身的に働くといいと思うよ!


 この料理は信長兄上も気に入ってたからなぁ。一口食べてカッと目を見開いた時は何事かと思ったよ。醤油も気に入ったのはいいんだけど、マヨラーみたいに何にでも醤油をかけるのは良くないと思う。絶対高血圧になるぞ。


「これは―――」


 いかにもお肉、って感じの照り焼きじゃなくて、まずは親戚丼から食べた半兵衛は、一口食べて絶句した。


 ふっふっふ。

 おいしかろう、おいしかろう。

 しかも卵は栄養満点だぞ~。


 半兵衛の箸の動きが早くなる。

 無言で親戚丼を食べつくすと、ほうっと満足そうなため息をついた。


 俺はそこで用意していた煎茶を湯飲みに入れて渡した。


 ふっふっふ。

 こんな日が来ることもあろうかと思って、末森の窯で湯飲みを作らせておいて良かった!

 煎茶も作らせておいて良かった!


「茶の湯とは違いますが、こちらもお茶です。飲みやすいのではないかと思いますよ」

「お茶、ですか?」

「はい。そのまま飲んでみてください」


 ゆっくりお茶を口にした半兵衛は、またもや大きく目を見開いた。


「なんとまろやかな味でしょう……」


 抹茶はな~。飲むと苦いからな~。子供の舌には合わないんだよな。

 でもカテキンも含まれてるから、お水代わりに飲むといいんだぞ。煎茶だったらそれも可能だからな。どんどん飲んでくれたまえ。


 恐る恐る照り焼きも食べて舌つづみを打った半兵衛は、ついに最後の料理を食べるのみになった。


 そう。おそらく半兵衛が見た事のない料理。

 茶碗蒸しである。

津島の味噌蔵かくやの主人の喜多衛門さんは、三河の八丁味噌の老舗まるやの弥次ェ門さんがモデルです。この時代、既に創業されています。

福島正信は福島正則のお父さん。

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