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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス7巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
弘治三年

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111 信行兄ちゃん……

 表情は変わってなくても内心ではオロオロしてるらしきタロジロに、信行兄ちゃんは安心させるように微笑んだ。


「今の私は武士ではなく、まだ見習いの僧侶です。弟を守ってくれるあなた方に頭を下げるのは当然でしょう」


 信行兄ちゃん……前からイケメンだと思ってたけど、一皮むけて更にイケメンになってるじゃないか!

 前はちょっと身分を意識しすぎてるっぽいとこがあったけど、それがなくなった今は、パーフェクトイケメンに進化してるんじゃないか!?


 熊なんて、あまりの感動に「信行様、ご立派になられて……」とか言いながら涙ぐんでいるくらいだ。


「信行兄上。お寺の暮らしは厳しいのですか? 何やら少し、おやつれになったような気がします」


 気になっていたことを聞いてみると、信行兄ちゃんはちょっと視線を泳がせて口ごもった。なんだ? 何か後ろめたいことでもあるのか? まさかまた謀反を考えてるなんてことじゃないだろうな。


「私が出家した時に、近習の津々木蔵人も出家して英俊と名乗っているのだが、知っているかい?」


 出家した信行兄ちゃんの後を追って出家したってことで、なぜか末森では美談として語られてマスネ。ソレガドーカシマシタカ。


 なんかもう、ヤツの名前が出てきた時点で話を聞く気をなくした。

 だってなぁ。どうせロクでもない理由でやつれたんだろうって予想できるからな。


「私を追って龍泉寺に来てくれたのは良いのだが、どうにも古参の僧侶と馴染めぬようでな。間に入って仲裁するのだが、気苦労が絶えないのだよ」

「信行兄上。ちょっとお聞きしてもよろしいですか?」

「なにかな?」

「古参の僧侶とやら……美僧ではございませんか?」

「その通りだが、なぜ分かったのだ!?」


 ……信行兄ちゃんはとってもイケメンだ。そしてイケメンはモテる。

 この時代において、恋愛対象は女の子だけじゃない。男も対象だ。

 つまり信行兄ちゃんは男にも非常によくモテる。そして手も早い。


 うん。ここまで説明したら、体は子供、頭脳は大人な小学生探偵じゃなくても分かるよな。

 信行兄ちゃん、絶対痴話喧嘩に巻き込まれてるだけだ。

 まったくもう……謀反起こすよりはいいけど、いい大人が何してるんだよ……


 脱力しながら信行兄ちゃんの愚痴を聞いていた俺は、これが男同士の恋愛じゃなければなぁと、ちょっと遠い目になった。


 もうこれ以上、ドーデモイイ話し聞かなくてイイカナーとか思い始めた時。襖の向こうで、滝川リーダーが入室を求める声がした。


 どうぞーと許可すると、その後ろに誰かいる。この時代には珍しくポニーテールみたいに髪の毛を後ろで一つに結んでいる、なかなかイケメンな武士だ。顔立ちは……あれ? 誰かに似てるな。


「喜六郎様。私の室の志保と申します。こちらにご挨拶に参りましたが、よろしいでしょうか」


 しつ……?

 室って奥さんのことだよな。でも狩衣着てて、どこからどう見ても男の人だよな。ちょっと傾奇(かぶ)いてる雰囲気はあるけど。


 ええっ。ってとこは、滝川リーダーもアッーの国の人だったのか!?

 ていうか、男同士で正式に結婚できるのか!?

 いやいやいやいや、ちょっと待て。我らの滝川リーダーがアッチの人だったなんて事は……


 うん? よく見ると、手首とか首が細くないか?

 そういえば、滝川リーダーの奥さんって、熊の妹じゃなかったっけ? ってことは。


 えええええええええっ。

 この人が熊の妹!? 弟じゃなく!?


 しかも熊よりイケメンだ。顔立ちは似てるけど……ああ、全部のパーツが熊よりちょっと小ぶりなんだ。とすると、熊も、もーちょっとバランスが違ってたら野獣じゃなくてイケメンだったんだな。

 うわぁ、なんていうか……いやでも、男は顔じゃないと思うぞ。うん。


 それにイケメンな熊は熊じゃないしな。今のままでいいか。市姉さまも熊の中身に惹かれてきてるわけだしな。問題ないな、うん。


「滝川志保と申します。いつも兄とわが君がお世話になっておりまする」


 声は確かに女性だけど、なんとなく宝塚みたいな雰囲気の人だな。背も女の人にしては高いし。


「いえ。こちらこそ、勝家殿と滝川にはお世話になっています」


 俺がにこっと笑って言うと、横から熊が凄い勢いで怒り始めた。


「し、志保っ。喜六郎様の御前で、なんだその恰好は!」

「家ではいつもこの格好ではないですか」

「この馬鹿者! ここは家ではないし、織田の若君の前に出る格好ではなかろう」

「狩衣は正装なのですから良いではないですか。さきほど、殿の御前にもこれで参りましたよ」

「ななななんだと!? 殿の御前に? お前は何を考えておるのだ。一益もなぜ止めぬ!」


 熊。つば飛んできてるぞ。ばっちいぞ。


「ですが義兄上。殿に直々に招集されまして……」


 困ったように答える滝川リーダーは、軽く肩をすくめた。


「と、殿にだと? 志保が、か?」

「そうです。義兄上」

「志保に一体どのような用事があったというのだ」

「それが……」


 言いよどむリーダーの代わりに、志保さんが答えた。


「おなごだけの、薙刀(なぎなた)隊を作らぬかという相談でございました」


 ええっ。お正月早々、信長兄上も何やってるんだ!?


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