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信長公弟記~織田さんちの八男です~【コミックス6巻】発売中  作者: 彩戸ゆめ
戦国時代に平穏はない

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107 蒸留酒

 蒸留の仕組みは大体分かる。まず酒の入った鍋を煮て、その蒸気を冷やしてできた液体を抽出するんだよな。


 構造としては三段重ねの蒸し器みたいにすればいいんだろうか。さすがに竹だとダメだろうから、鍋とかは金属で作ればいいのかね。飲むわけじゃないから、銅を使えば作りやすいか? 手入れが大変そうだけど、それはがんばってもらうしかないな。


 まず一番下の鍋は普通に作って、問題は真ん中の鍋だな。底が丸い鍋を逆さまにした感じにして、下側の淵に蒸気が垂れてきたのを貯めておくようにすればいいのか。それでそこに注ぎ口をつけて、と。


 そして一番上に冷たい水を入れるヤカンみたいなのを置けばいいのか。ぬるくなったら排水できるように注ぎ口もつけておけば、さらにいいな。


 それぞれ溝をつけてジョイントするようにすればズレないで使えるか。


 俺がうーんと考えこんでいると、熊がじっと俺を見ているのに気がついた。


「ああ、申し訳ありません。つい考え事をしてしまいました」

「ほう。どのようなお考えでござりましょうか」

「兵たちが傷を負っても苦しまぬよう、傷口の毒を消す火酒ひざけを造りたいのです。うまくいくかどうかはまだ分かりませんが……」


 消毒とか焼酎なんて言葉をいきなり使っても理解できないだろうから、なんとか分かりやすい言葉に置き換えてみる。下手にこの時代では聞きなれない言葉を使うと、それが天界の言葉なのですかとか、うるさく騒ぐ奴がいるからな。

 うん。熊とか熊とか熊だけど。


「なんと! それは素晴らしい事でござる。ですが酒で洗い流すのではいかんのですか?」


 うーん。普通の酒だとアルコール濃度が低いからなぁ。尿よりはマシだと思ってお酒で傷口を洗い流させたけど、本当に効果があるのかは分からんしなぁ。

 高濃度アルコールが消毒になるのは確かなんだけど。


 消毒用のアルコールって、アルコール濃度が凄く高いんだよな。確かウォッカくらいじゃないどダメなんじゃないかね。焼酎のアルコール濃度が大体40程度だから、濃度が足らんな。とすると、2回蒸留すれば消毒用でいけるか?


 そういえば大学の時の友達数人とやった部屋飲みの時に、友達の一人が面白がってスピリタスってウォッカを持ってきたんだよ。なんでも従兄弟がバーで働いてるとかでもらったらしいんだよな。


 これがアルコール濃度が95っていう、世界で一番高濃度の飲料用のアルコールらしい。確か70回以上、蒸留して作るんだったかな。

 そのまま飲むと喉が焼けただれたり、急性アルコール中毒でお亡くなりになるという、お酒なんだか兵器なんだか分からんウォッカだ。


 もちろんそのまま兵器として使った歴史もあるらしいぞ。火炎瓶の中に入れたら良く燃えそうだしな。


 当然、火気厳禁ってシールも貼られてた。


 ちなみに原産国はポーランドだけど、ポーランドでも原酒のまま飲むことはないらしい。普通はカクテルのベースにするんだそうだ。あとは家庭で消毒薬として常備されてるんだったかな。


 最初は罰ゲームで飲ませるつもりで持ってきたみたいだったけど、ネットで説明を読んで、皆でこれはヤバイって取りやめになった。

 さすがに死人が出たらシャレにならんしな。


 みんなでちょっと舐めるくらいはしたけど、舌がピリピリして味なんて分からなかったな。


 さすがに70回の蒸留は無理だけど、とりあえず2、3回蒸留してみようかな。それで消毒薬として使えればいいけどな。


「もっと酒精を強くしないと毒を殺せないと思うのです。できるまでに時間がかかるかもしれませんが、やれることからやっていかないと、兵たちを助けることができませんしね」

「うおおおおお。さすが喜六郎様! さすがでござりまするな! この勝家もお手伝いいたしますので、何なりとお申し付けくだされ」

「勝家殿は、戦から無事に帰って来てくれるのが一番ですよ。火酒など使わなくて済むように、怪我なくお戻り下さい」


 実際、大した事がないと思ってても、怪我が悪化して死ぬ場合は、かなり苦しむらしいからな。


 熊によると、そういう時は、みんな大体同じような症状を起こすらしいんだ。

 まず最初に歯ぎしりとか寝汗をかくようになって、口が開かなくなる。それから口が裂けたような顔になる。その後、全身がけいれんを起こすんだそうだ。

 傷を負って二日以内にそうなる者は、ほとんど助からないらしい。


 だから武将ならともかく、足軽にその症状が出ると、そのまま放置されることも多いんだとか。

 一応、村ごとに徴兵されてるから、近くに同じ村の兵がいれば、安全地帯まで連れて行ってもらえることもあるらしいけどな。


 考えたんだけど、衛生兵みたいなのを作ったらどうかな。

 最初は武将だけに対応するようにして、徐々に足軽まで対応するようにするとか。


 消毒用アルコールと包帯になるようなのと。あ、三角布なんかもあると、骨が折れた時に使えそうだな。

 あとは薬草があればいいんだけどな。


 そうだ。龍泉寺城ができたら、薬草園を作ってもいいんじゃないか?

 そうするとやっぱり薬草なんかに詳しい人に教えて欲しいよなぁ。前に行ってたお医者さんのうちの誰かが、尾張に来てくれればいいんだけどな。



普通のお酒だと殺菌できないそうです。

アルコール濃度が70くらいがベストなのだとか。濃度が高すぎてもダメみたいです。

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