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F物語  作者: マリア
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黄昏都市

時系列バラバラでなんとなくで書いていきますので、軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。

ネーミングセンスが皆無ですのでご了承ください。

あの日も穏やかな風が吹き、いつもと変わらない風景がそこにはありました。

今はもう、研究した成果を本にして収める者も、収められし本を読みに来る者もいません。

ここは滅びし雲海都市ルシェの大図書館。


この大図書館の管理をしているのは、図書館の防衛機能であるゼコネです。

名前は元館長から頂きました。

もっとも、頂いているのは名前だけじゃなく姿もなのですがね。


あの日からルシェは、この空を落ちることもなく変わらずにそこにあります。

何故そんなことがわかるかって?

私は図書館の防衛機能ですが、唯一ルシェで存在できているものですからね、少しずつこのルシェを私の一部にしていっているのでわかるのですよ。


私の日課は少しずつこの都市を私の一部とし、修復していくことです。

いつの日か、国民がこの国に戻ってくれることを私は夢見ているのですよ。



「おや、久しぶりですね久遠の魔女」

「君も変わりないようで、ゼコネ」



この方は国民であって、国民ではなくなってしまった久遠の時を生きる魔女さんです。

以前会ったのは400年前でしょうかね、ふわふわの綿毛のような髪も橙色の衣装も、衣装の方は今の流行にあわせているようですがこの方の趣味は相変わらずのようです。




「友が、あの子がつくった国がなくなってしまったよ」



少したってからそう、ぽつりとこぼすように言った彼女の声は震えていました。



「あの国はもういくところまでいってしまっていたから、仕方ないといったら仕方ないのだけどね……やはり、寂しいものでね」



以前、彼女が戻ってきたときのことを思い出します。

濡れ鼠のような姿で現れた彼女は、一人の友の話をしてくれました。

その方はとても穏やかな陽だまりのような人で、一国を築き上げたと。

永遠の時を生きる自分を友と呼び、決して哀れむこともなく、最期まで対等な存在でいてくれたと。

そして、その友が築き上げた国はいまや大国として名を馳せているのだと、赤い目を腫らして話してくれました。




その方の国が滅びてしまったのですね。

400年も経てば当初の思想など変わっていてもおかしくはないでしょう。

人にとっての400年は長いのですから。



「最近はあまり人々と深く関わらないようにしていたのだけれど、やっぱり彼の一族の子は気にかけてしまってね。私の力があればこんな結末を、変えることができたのではないかと責められてしまったよ……私には何も力なんてないのにね」




何かを懐かしむように、痛みを堪えるように微笑む貴方の話を私は聞くことしかできません。

私は人ではありませんから理解することはできないのですが、永遠の時を生きるというのはどういう気持ちになるのでしょうか。



「すまないねゼコネ、いつも戻るたびにこんな話をしてしまって」

「いいのですよ、私は貴方がまた帰ってきてくれるだけで良いのです」



もう、貴方だけなのですよ。

ゼコネ様を覚えている者も、いなくなってしまった者達を、かつてのルシェを覚えている者ものは。


どんなに時間をかけて、修復を進めてもいつ帰ってくるかわからない皆様をお待ちするよりも、必ず帰ってきてくださる貴方がいるから私もまた………………。







雲海都市として強固な地位を築き、他のものをよせつけない圧倒的な力を持っていたルシェ。

彼らは純粋にただ全てを知りたいと願うあまり、あの日、触れてはいけない禁忌に手を染めようとした。

結果ルシェは滅びてしまうのだが、またそれは別のお話。

ゼコネ:滅びし雲海都市ルシェの防衛システム。図書館の防衛システムはありし日の最後の館長ゼコネの意志と姿を投影し、彼が在りし日を再現している。そんな図書館に来るものは久遠の白き魔女のみである。


久遠の魔女:雲海の狭間にあると呼ばれもう数千年も前に滅びたといわれる幻の都市出身の研究者。 ただ世界の真実を知りたいという欲求の為に世界と契約し、永遠の時を生きる存在となった。



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