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眼の異世界転生  作者: ビッグツリー
第一章 目玉転生~封印の祠編~
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六話 異世界『エルバ』

リーナと名乗る十字型のネックレスとの出会いをきっかけに、情報を入手し得る糸口を掴んだ俺は、ひとまず現状における最重要事項について聞いてみることにした。


 それは――、”ここは何処なのか”。



(俺には、ここが何処なのかも分からないんだ……。すまないが、リーナの知っている範囲で構わないから教えてはもらえないだろうか)


 十字架の中央に位置する宝玉が、俺の言葉に反応するかの様に一つ点滅の光を発すると、リーナの言葉に合わせて断続的な輝きを放ち始める。


《分かったです。ここは……、いえ、この世界は――》




 数十分ほどだろうか――。

 腕を組み、目を閉じ、俺は集中して彼女の言葉に耳を傾けていた。


 語った時間は短くとも、その内容自体はとても色濃い。

 だからこそ、自分の知識へと蓄えられるように――、一字一句を聞き逃してはならない。


 リーナからの話を纏めると、――こうだ。



 まず、この世界は『エルバ』と言い、五千年ほどの歴史があるそうだ。

 エルバに住む種族は「人間」、「魔族」、「亜族」、「精霊」、そして――「魔物」。


 それぞれの種族の特徴と関係性において、魔族は保有魔力が多く魔法を得意とする事から、個人戦力でこと一番を誇る。だが、プライドが高く、絶対強者と自負している為、大半の者は積極的には動かない。



 次に、高い知性を持つ人間と、高い身体能力を持つ亜族が同程度の実力。ここが一番争う率が高いようだ。

 人間は知性の高さから科学と魔法を駆使し、亜族は獣の力を解放して身体能力のポテンシャルを引き上げる。

 人間と亜族は犬猿の仲――、といった敵対関係にあるようだ。



 精霊は争いを好まず、又、戦う力を持たない者が大半の為、人知れず隠れ潜んでいるのだという。妨害系の魔法を得意としている為、精霊を見かけるのは極稀だそうだ。



 それと、人間と精霊は一種族らしいが、魔族と亜族は総称なのだとか。


 魔族は細かく分類すると、「悪魔」、「魔獣」、「魔人」――という種族に別けられる。

 魔人は悪魔と人間のハーフで、禁忌とされている事から、存在しても数は少ないらしい。


 亜族は全種族の中でもダントツに人口が多く、「獣人」、「蟲人」、「鳥人」、「魚人」、「亜人」――と多くの種族が存在する中で、更に細かい分類があるのだとか。

 亜人は獣人と人間のハーフで、魔人と同じく禁忌の扱いのようだ。



 世界大陸に関してだが、小さな離島は複数あるものの、基本的には一繋がりの巨大な大陸らしい。その中で、各種族が治める”五つの大陸”として線引きがある。

 中央に『不可侵の大陸』と呼ばれるものがあるのだが、ここにはどの種族も関与してはならない――、という制約が定められている。俺が今いる”ここ”が、まさにそうなのだとか。

 北の大陸は人間、東が亜族、南に精霊、西には魔族――と、各々が独自の文化で生活し、大陸を管理しているそうだ。


 リーナは今から千年前の時点――、そこまでの記憶しか保持していないらしく、大陸争いでは現在は不明だが、基本的には均衡を保っていたのだという。



 ちなみに魔物についてだが、基本的にどこにでも出現し、本能の塊で無知な事から、リーナ的には論外らしい。

 一応、魔物リストなる情報を持っている様だが、「魔物はバカだから理解に苦しむですー」とか言っていた。



 

 ということで、俺はここが異世界であり、自分の仮説通りだった事を確認出来た訳だ。

 そして、この世界――エルバの世界事情についても把握出来た。



《とまあ、こんな感じです。もういいです?》


 散々説明して疲れたのだろう――、ちょっと不機嫌そうなリーナさん。

 でも、俺にはまだまだ聞きたい事が山ほどあるんだ。



(教えてくれてありがとう。魔法についてなんだけど――)

《ちっ。魔法は、あなたには扱えないです》


 はて、空耳だろうか。食い気味に答えてきたのは置いといて、冒頭で乾いた舌打ちらしき音が聞こえた気がしたのだが……。

 

 しばし――、気まずい沈黙が流れる。

 

 魔法以外にも、色々と聞きたいのは山々な所だ。だけど、一気にあれこれ質問責めしては、説明する方だって疲れてしまう気持ちも分かる。

 せっかく出来た話相手。しかも、喉から手が出る程に欲っする”情報”を握っている。


 友好的な関係であらねばならない――。

 

 「どうする、どうする、何か別の話題を」――、と考えていると、リーナの方から声をかけてきた。



《そういえば、あなたの名前はなんです?》

(あ……、ごめん言ってなかった。俺の名前は、みど――)


 そこまで出かかった時――、ふと、ためらいの念が込み上げてきた。

 俺はもう、人間の姿ではなくなってしまったのだ。母さんにもらった名前を、こんな目玉のりで、本当に名乗ってもいいのだろうか。


 そう思うと、本名を名乗るは――、なんだか気が引けていった。



(そうだ! 新しい体で、新しい人生を送る事になる訳だし、リーナに新しい名前を考えてもらいたいんだが)

《え!? わ、私がです!? そ、そうですねぇ……》


 とりあえず適当にそれらしい事を言って、はぐらかしてはみたものの――、物凄く変な名前を付けられたらどうしよう。



 リーナはコホン――と、一つ咳払いをすると、思い付いたのであろう名前を静かに口にする。


《ジーク……。で、どうです?》


 その言葉を聞いた時、俺は素直にいい名前だと思った。いや、安心したと言った方が正しい。

 由来は不明だが、”真っ当”な名前なのだから。



 すると突然に、俺への名付けが終わった途端――、大量の情報と魔力が一斉に流れ込んでくる感覚に襲われた。


 首にかけているリーナが激しく輝き、俺の中の核が熱く鼓動する。



 そして俺はそのまま、――意識を失った。






《――ジーク……。ジーク!》


 ぼんやりとする意識の中、リーナの俺を呼ぶ声が響き渡る。


(俺は……、眠っていたのか?)

《やっと起きた! おはようです》

(あ、うん。おはよう。おかしいな……、眠気なんて全然感じていなかったのに)


 睡眠を必要としない体とばかり思っていたものだから、眠った事に少し違和感があった。

 それだけじゃない、まるで強制的に意識を飛ばされた様な――、急に気を失ったとも思える違和感もある。



《えっと……。ジークの魂の回路と接続するのに、ちょっと複雑だったので強制的に意識をシャットダウンしたです! 主に三日程》


 やっぱりあの違和感は眠ったのではなく、意識を失ったのが正解だったわけか。



(つまり、俺が意識を失ったのはリーナの意図ってこと? 主に三日程)

《て、てへぺろ……》 


 羞恥心を若干含ませながら、何故その言葉を知っているんだというフレーズで認めるリーナ。


 まぁ、意識を失った点についてはとやかく言う事もないだろう。

 それより重要なのは、意識を遮断したプロセスの”意味”する所だ。魂の回路に接続したとか言っていたが、まるで何の事か理解出来ない。


 だが、それを聞く間も無く、変に急かすリーナによって煽られる。



《そ、それよりもステータスを確認するです! ジークにとって、”ものすご~く良い事”が起きたんですよ! ほらほら!》


 俺の外見上には何の変化もない。

 若干、不審を感じる俺はリーナにジト目を向けつつも、急かされるがままにステータスを確認してみる。



 そこには――、目を見開く程の驚愕の内容が記されていた。


 リーナが「ものすご~く良い事」と言っていたように、俺のステータス上では、とてつもない変化が起きていたのだった――。

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