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9.母からの手紙

9.母からの手紙


 こうして美紀は無事に東京で学校に通うことが出来るようになった。けれど、妊娠していることは学校長と副校長しか知らない。今はまだいい。どこからどう見ても普通の中学生だ。しかし、やがて隠し切れないくらいお腹が大きくなれば周りも騒ぎ出すだろう。

 学校長は副校長と話し合い、そうなる前に時期を見て、病気で入院していることにし、産後復帰させるつもりでいる。無論、そのことは美紀本人や俊哉も承知していることだった。


 美紀に家出された実家の両親は美紀が東京で無事に過ごしていることを知って、ひとまず安心はしていた。けれど、父親は俊樹とのことも子供を産むことも未だに納得できていない。母親にしても応援したい気持ちはあるのだけれど、遠く離れた東京でちゃんと出産できるのか気がかりで仕方がなかった。

「よし!様子を見に行こう。場合によっては私も東京で暮らすわ」

 母親の突然の言葉に父親は腰を抜かした。

「冗談はやめてくれ。様子を見に行くのはまあいい。だけど、お前まで東京に行くことはないだろう。向こうには俊樹君が付いているのだし」

「あら、俊樹君のことは許していないんじゃなかったの?」

「い、いや、それとこれとは別問題だ。美紀とのことは許せんが俊樹君個人としての資質は子供のころから評価している」

「ふーん、そうなんだ…」

 母親がそう言って父親の顔を見ると、父親は目をそらし、湯のみのお茶を一気に喉へ流し込んだ。

「あ、熱ちっ!」

 母親はそんな父親を見て思わず吹き出してしまった。父親はバツが悪いと見えて話を戻した。

「それで、東京へはいつ行くんだ?」

「そうね…。5月の連休にでも行ってこようかしら…」

「わかった。俺も行く」

「えっ!」


 美紀に母親からの手紙を見せられた俊樹は心中穏やかではなかった。

「大丈夫だよ。お父さんも許してくれているみたいだし」

「でも…。もしかしたら、連れ戻しに来るのかもしれないじゃないか」

「だから、大丈夫だって!あなたを置いて帰るわけがないじゃない。学校だってあるのよ」

 けれど、俊樹はどうにも落ち着かないのだった。




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