8.ホームパーティー
8.ホームパーティー
その夜、俊樹と美紀は内田の部屋に呼ばれた。入学祝のパーティーを行うのだという事だった。
内田家の長女、萌果も今年中学に入学した。そして、美紀と同じクラスになった。さすがに、内田夫妻は萌果には俊樹と美紀との関係は話していない。
「美紀ちゃんはいいなあ」
「どうして?」
「お兄さんみたいな人と一緒に住んでるんでしょう?」
「萌果ちゃんのご両親だって素敵じゃない。お母さんはモデルさんみたいだし、お父さんは体育会系っぽいけどイケメンだし」
「でも、うるさいのよ。勉強しろとか習い事をしろとか」
「こら!誰がうるさいって?」
仕事から帰り、シャワーを浴びた内田がリビングに入ってきた。社宅だから俊哉たちの部屋も同じ間取りで、2LDKと割と広い。
「なんでもない」
萌果は口を押えると、美紀の方を向いて笑った。
俊哉は意外だった。出来ちゃった婚をしたという真由子が出した料理がだ。家事などとても出来そうにないと思っていた真由子が見事な料理を所狭しと並べていた。
「渡辺君、驚いた?私にこんな料理が出来るとは思っていなかったでしょう?」
「い、いや、そんなことは…」
「いいのよ。実際、最初はそうだったし。でも、13年もやっていたら、これくらいできて当然よ」
そんな会話を聞いていて美紀が目を輝かせた。
「私も出来るかしら」
「もちろん!」
そう言って真由子は美紀に微笑んだ。
「あなた!私、頑張るわ」
「あなたって?」
萌果が不思議そうな顔をして美紀を見た。
「萌果、中学校入学おめでとう!ほら、お祝いだ」
一瞬、危ないことになりそうなところで、場の雰囲気を変えるように内田が萌果に入学祝のプレゼントを渡した。萌果はプレゼントを受け取ると、先ほどの美紀の言葉などすっかり忘れてしまったようだった。