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4.父親への報告

4.父親への報告


 美紀の母親は我が子の妊娠を父親に話すかどうか迷っていた。話せば激怒するのが目に見えている。厳格で礼儀作法にはことのほか厳しい男だ。美紀に対してどんな仕打ちをするか判らない。けれど、黙っていてもいつかはばれてしまうだろう。それなら、話すのは早い方がいい。

 病院から帰って来る道中、美紀はなんだか楽しそうだった。現実的な問題として、13歳の子供が出産するなど考えられない。ギネス記録ではペルーで5歳の少女が出産したとされている。医療が進歩している日本では不可能な話ではないのだろう。しかし、道徳的にはあり得ない。13歳では結婚さえ許されていない。たとえ、俊樹が事実を受け入れて…。いや、俊樹なら間違いなくこの事実を真摯に受け止めて責任ある行動を示してくれるだろう。

 美紀と母親が産科医へ行ってから3日が過ぎた。母親は美紀の幸せそうな顔を見ているうちに次第に産ませてやりたいと思うようになってきていた。そのためには少しでも早く父親に理解してもらわなくてはならない。しかし…。


 母親は覚悟を決めた。その日。父親が帰って来るのと同時に話を切り出した。父親ははじめ、誰の話をしているのか理解していないようだった。

「私は産ませてあげたいと思う。俊樹君ならちゃんと面倒を見てくれると思う。ちょうど夏休みに入るし、学校の方には私から話をしておきますから」

 そこで父親はようやく妊娠しているのが我が子だということに気が付いた。

「ちょっと待て!美紀が妊娠しているというのか?冗談だろう?まだ中学に入ったばかりだぞ」

 そう言った父親は引き攣った笑みを浮かべつつ視線を泳がせた。

「私も最初は信じられなかったわ。でも、事実なのよ」

「相手は渡辺さんのところの俊樹君なのか?彼は就職して東京に行ったはずじゃないのか?」

「だから、行く前の話よ」

「と、言うことはもう、4か月も前のことじゃないか!今まで気が付かなかったのか?」

「ええ、つわりもそんなにひどくありませんでしたし、まさか妊娠しているなんて思わないから体調が悪いだけなのかと思っていたし」

「もう、中絶することは出来ないのか?」

「まだ大丈夫だけど、お医者さんは産ませた方が美紀の身体のためにもいいって…」

「なんてことだ!渡辺さんに文句を言って来る」

 父親はそう言って立ち上がると、速足で出掛けて行った。渡辺家にしてみれば寝耳に水でただひたすら頭を下げるしかなかった。

 




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