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20.いよいよ…

20.いよいよ…


 俊樹が勤めている会社は主に内装工事を請け負っている。経験のない俊樹は最初、資材や材料を運んだりする現場作業の手伝いから始めた。同時に内田の下で現場管理の仕事を学んでいた。

 この日は現場作業が終わった後、会社に戻って次に始まる現場の材料の拾い出し、つまり、図面を見ながらどのくらい材料が必要になるのかを計算する作業をやっていた。

「美紀ちゃん、もう、臨月なんだろう?予定日はいつなんだ?」

 内田が電卓をたたきながら俊樹に聞いた。

「月末だと言っていたのでもうそろそろかと…」

 その時、俊樹の携帯電話に着信があった。美紀の母親からだった。

「俊樹さん、美紀が産気づいたから病院に連れて来たわ。今夜生まれるかもしれませんよ」

 俊樹は電話口を抑えて内田に報告した。

「内田さん、美紀が病院に行ったって!」

「おめでとう!早く行ってやれ」

「はい!でも、おめでとうはまだ早いですよ」

「そうか…。まあ、いい。生まれたら連絡をくれよ。何時になってもいいから」

 事務所を出る俊樹に内田は笑顔で手を振った。


 個室に入れられた美紀はベッドに横たわり医師の診察を受けていた。美紀の両親が傍らで見守っている。もうすぐ孫の顔が見られるのだと笑みを浮かべている母親とは対照的に、二人を車で病院まで連れて来た父親はどうにも落ち着かない様子だ。

「もう少ししたら分娩室に入りましょうか」

 医師はそう言ってにっこり笑った。医師が部屋を出ると、父親は母親に向かって囁いた。

「おい!あの医者、大丈夫なのか?美紀があんなに苦しそうなのに笑っていたぞ」

「もう!お父さんったら。まるで生まれてくる子のお父さんみたいね」

「大丈夫だから。ねえ、お父さん。背中をさすってくれる?」

 美紀がそう言って父親をそばに呼んだ。父親は母親の顔を見ながら不安げに美紀の背中をさすり始めた。

「こうか?」

「うん。少し楽になったわ。ありがとう」

「そうか!じゃあ、父さんがずっとこうしててやるからな」

 美紀はそっと母親の方を見て目で合図した。母親はにっこり笑って頷いた。そこへ俊樹が駆け込んできた。

「こどもは?」





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