表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

2.突然の来客

2.突然の来客


 新入社員研修が終わって正式に配属が決まった俊樹は会社の独身寮に入ることになっていた。既に荷物は部屋に届けられている。荷物と言っても布団と衣類くらいのものだ。寮には賄いをしてくれる住込みの寮母が居るので食事の心配はしなくて済む。テレビは娯楽室にあるし、冷蔵庫も共同のものが食堂にある。6畳一間の自分の部屋には布団さえあれば何の不自由はなかった。


 仕事を終えて寮に帰ると一通の手紙が来ていた。その内容はまさに青天の霹靂。自分が美紀を妊娠させたことで渡辺家は町を追われる羽目になったという。

「妊娠?美紀が?」

 たった一度の過ち…。いや、俊樹にとってはそれが過ちだという自覚はなかったのだから驚いた。手紙には引っ越した先の住所と電話番号が記されていた。携帯電話を持っていなかった俊樹は電話を掛けるのではお金がかかるため早々に手紙を書いた。数日後に返事がきた。その内容に俊樹は更に驚いた。美紀が家出をしたというのだ。俊樹に会いに行くかもしれないから行ったらすぐに家に帰るように説得しろとのことだった。

「まさか…」

 まさかそんなことがあるわけがない。次の日俊樹は気にもせずに仕事へ出かけた。会社について間もなく寮母から連絡があった。

『渡辺さん、お客様が来ているのだけれど、部屋に上げてもいいかい?』

「客?だれですか?」

『妻だと言っているけど、本当かね?どう見ても中学生くらいにしか見えないんだけど…』

「本当に来たのか!」

『どうするの?』

「あ、わかりました。今から帰るので部屋で待たせておいてください」

 俊樹は上司に事情を…。つまり、田舎から身内が出て来ていると説明して早退の許可をもらった。


 寮に戻ると、寮母がにっこり笑って迎えてくれた。

「今日の晩御飯はどうする?ここでみんなと一緒じゃ食べられないでしょう?」

「はい、今日はキャンセルで。これからちょっと出てきます」

「ごゆっくり」

 俊樹は寮母に頭を下げると自分の部屋へ駆け込んだ。

「美紀!」

「へへへ、来ちゃった」

 そう言って笑う美紀の顔を見て、俊樹はその場にへたり込んだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ