18.学校長の判断
18.学校長の判断
夏休みに入った。少しずつ美紀のお腹も膨らんできた。あの日以来、萌果は度々美紀の家を訪れる。
「でも、本当に大丈夫なの?」
自分と同じ13歳の女の子が出産するのだ。萌果にはとても信じられないことだった。
「お医者さんは順調だって」
「そうなんだ…。ねえ、お腹触ってもいい?」
「いいよ」
萌果はそっと美紀のお腹に手を置いた。なんだか、中で赤ちゃんが動いているような気がした。
「動いてる?」
「そうよ。こんなお腹の中でももうちゃんとした赤ちゃんなのよ」
萌果は感動して涙をこぼした。そんな萌果を美紀は優しく抱きしめた。
夏休みが終わるころ、学校長と副校長が訪ねてきた。家に居た美紀の母親が対応した。校長は美紀の少し大きくなったお腹を見てにっこり笑った。
「順調そうですね。さて、2学期以降のことなんですが…」
かねてからの予定通り、美紀は出産までの間、病気で入院することにしてくれるのだと言う。但し、その間、近所を出歩いて人目に付くのはまずいかもしれないとも言った。
「そこで、いっそのこと保護者会を開いて皆さんに理解してもらおうと思うんですが、いかがでしょうか?早かれ遅かれ、美紀さんが子供を産んだことは知られてしまうでしょうから」
「理解してもらえるでしょうか?」
「中には俗的な目で見られる方もおられるかもしれません。けれど、人の情という物は捨てたものではないと私は思うんですよ」
校長がそこまでいうのなら任せてもいいのではないかと母親は思った。
「解かりました。今夜、主人や俊樹君にも相談してお返事します」
その夜、母親は父親が帰宅するとすぐにその話を切り出した。
「校長がそんなことを?厄介者は追い払うのが当たり前だといった風潮の今の時代にしては気骨のある先生なんだな。だったら任せてみようじゃないか」
「俊樹君はどうかしら?」
「反対するわけがないさ」
「それもそうね」




