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12.父親の威圧感

12.父親の威圧感


 社宅へ向かう車の中は妙な緊張感に包まれていた。原因は終始無言の美紀の父親のせいだった。運転している俊樹は針のむしろに座らされているかのような心境だった。時折、美紀と母親が話をするものの、長続きはしなかった。


 社宅に着いた。俊哉たちの部屋の前で美紀の父親が立ち止った。入り口の表札を凝視している。

「ほら、お父さん早く入りなさいよ。俊樹さんが重たい荷物を抱えているんだから」

 母親に促され、父親は部屋に入った。

「今、お茶を入れるからその辺でゆっくりしてて」

 美紀が台所に回ると、荷物を置いた俊樹もその後を追った。

「お父さん、大丈夫かな?ずっと怒っているみたいだし…」

 美紀はカウンター越しに父親の顔を見る。

「あら、いつもあんなものよ。変なことを気にしていないで、あなたはあっちに行ってお父さんたちの相手をしててよ」

 美紀にそう言われ、俊樹はすごすごと美紀の両親が待つ居間に戻った。

「一応、一通りのものは揃っているのね」

「ええ、会社がリースで揃えてくれたものばかりなんですけど」

「まあ、いい会社なのね」

「はい、みんな家族のような感じです」

 美紀の母親が二人のことを認めてくれているのは俊哉にも解かった。持って来た荷物を見れば一目瞭然だった。しかし、父親はいまだに気難しい顔をしていて黙ったままでいる。きっと、まだ二人のことを反対していて美紀を連れ戻す機会をうかがっているのに違いない。俊樹はそう思った。そんな美紀の父親が唐突に口を開いた。

「給料はどれくらい貰っているのかね?」

「えっ?」

 俊樹が呆気にとられていると、美紀の父親はもう一度同じ質問を繰り返した。

「給料はいくら貰っているのかと聞いてるんだ」

「あ、手取りで25万円くらいです」

 それを聞くと美紀の父親は顔色を変えずに頷いて俊樹の顔を見つめた。俊樹は生きた心地がしなかった。

「はい、お茶が入ったわよ」

 美紀がお茶を入れて運んできた。俊樹はほっとして胸を撫で下ろした。

「美紀、お前は俺に似て人を見る目があるようだ」

 父親の言葉に美紀は頷き、俊樹もようやく安心できた。





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