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11.両親の上京

11.両親の上京


 社宅で暮らす奥様達は何かと大変なことが多いらしい。奥様本人の年齢や人柄に関係なく、旦那のポストで序列が決まる。

「よそではそんなこともあるかも知れないけれど、ここじゃ皆無よ。会社自体が家族みたいなものだし、お偉いさんはちゃんと持ち家があるから、こんなところには住まないもの」

 と、言うのは真由子だった。確かに、ここの奥様達はみんな気さくでいい人ばかりだ。

 美紀はこんな風に真由子と付き合う時は同じ社宅の奥様として、萌果と付き合う時は同じ中学校のクラスメイトとして接している。

 元々、ここに入居する時点で美紀は俊樹の内縁の妻だということを会社が認めているのだ。そのことは俊樹の同僚も皆知っている。つまり、ここに住む奥様方もみんな知っているのである。

 内田のように中学生の子供を持つ家は少ない。多くはまだ小学校の低学年くらいの子供しか居ない。

 美紀のことはいずれ萌果も知ることになるだろう。それはきっと、学校で知れるよりも早くに。そうなったときに萌果がほかのクラスメイトなどに話をしないか俊樹は考えたりもした。連休中の仕事のことにしてもそうだった。気を使わない代わりに、ここではプライベートという物がほとんど存在しないということを俊樹は思い知った。

「何言ってるのよ。義務教育だから退学にはならないわよ。それに、校長先生もそのことはちゃんと知っているじゃない。こういう隠し事って面倒くさくて嫌いよ」

「それもそうか…。じゃあ、もう、人目を気にするのはやめよう。美紀は美紀がやりたいようにやればいい。なんか、俺もすっきりしたよ。今まで余計な心配をし過ぎていたみたいだ」


 5月3日、憲法記念日。3連休の初日。美紀の両親が上京して来る。俊哉と美紀は東京駅まで迎えに行った。新幹線のホームで待って居ると、両手に荷物を抱えて美紀の両親が降りて来た。

「お母さん!」

 美紀は母親のもとへ駆け寄って行った。その後ろで同じく両手に荷物を山ほど抱えた父親が俊樹の方を凝視している。俊樹は思わず後ずさりしそうになった。

「あなた、早くお父さんの荷物を持ってあげて!」

「あなただと!」

 父親の表情が一瞬鬼の形相に変わったのを俊樹は見逃さなかった。けれど、美紀に頼まれたのだから、恐る恐る父親に近づいて荷物を受け取った。

「すまんな」

「いえ、どういたしまして…」



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