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鍋から金色の光が溢れだした

 俺のレベルがこの世界最強なのが分かり、先ほどのドラゴンのようなものを倒せる力があるので、このまま戻らずにもう少し、敵と戦って肉を手に入れたり、植物、石を採取しようという話しになった。

 ただ俺としては、


「ああいったドラゴンがまた出てくるとまずいだろうから、いったん戻って装備を整えた方が良いんじゃないか?」


 と提案してみたが、それにシルフは、


「ふん、この程度で弱音を吐くとは……これではお姉様をお任せできませんね!」

「俺だって何時までここにいるか分からないんだし、あまり人頼みにしているとレベルも上がらないし、いざという時に命を落とす危険が高まるぞ?」


 一応、切っ掛けはどうあれパーティとして誘ってもらえた恩は感じているが、何時別れが来るか分からないのだ。

 だがそんな俺にシルフは、うわー、という顔をして、


「……こいつ、何も分かっていない」

「……何がだよ」

「でもそうですね。うん、お姉様を取られないんならどうでもいいや。都合よく使ってやればいいし」

「おい、ロリ。最後の言い草はないんじゃないか?」


 けれどシルフは俺を無視して、ミルルにもっと奥に行こうとねだり始めて、


「あの、タイキ、よろしいでしょうか? 心配して頂いたのに」

「……まあ、子供は我儘なものだし、少しだけな」


 シルフが私は子供じゃないと叫んでいたが、俺は放っておいたのだった。







 更に奥まった所で、試しに壁に触ると得体の知れない道が出来た。

 それを見た俺は、


「よし、こんな隠し扉は危険だから中に入るのは止めよう、って、シルフ!」

「きっとこの奥には素晴らしいお宝が眠っているんですよ!」


 俺の脇を通り抜けて奥へと走って言ってしまうシルフ。

 これは将来大物になるなと思いながら俺も進んでいくと、


「すみません、ご迷惑をおかけして。いつもはあそこまで突っかかったりしないのですが」

「いえ、子供はあれくらい元気な方が良いでしょう」

「……タイキは優しいですね。好きになってしまいそうです」

「ええ!」

「……冗談です」


 ぺろりと舌を出して悪戯っぽく笑うミルルに俺は、何だ、冗談かと思いつつ、やっぱり俺がもてるわけないよなと思った。

 そう考えると、女神様に貰えるチート能力はハーレム能力にしてみようかと、つい思ってしまう。

 ここにいるミルルからシルフ、鈴も含めて沢山の女の子に囲まれて、俺が素敵です、愛してますという女の子達。

 そして彼女達の力を借りて俺は冒険を重ねて、ゆくゆくは……ヒモ、か?

 女の子達に囲まれながら何だか高級そうな椅子に座り高笑いをする俺を自分自身で想像してみたが、これはどう見ても悪役というか。

 むしろ女の子に“飼われている”というか。


「……ペットみたいな愛玩動物もどきになるんじゃないのか? 俺」

「? タイキ、どうかなさいましたか?」

「え? いや……俺も頑張らないとなって」

「そうですか」


 そう言いながら進んで行くと、


「なあ、ミルル。あそこ、何か光っていないか?」

「本当ですね……あそこまで見に行って引き返しましょうか」


 隠し部屋の奥で光るものと言えば、金銀財宝だがとなるとこの先にそれがあると俺達は期待したのだが……そこにあったものに俺は、別な意味で驚いた。


「こ、これは伝説の“キラキラキノコ”」

「? 聞いた事はありませんが、どんなものなのですか?」

「黄金色に輝くこのキノコは、きのこの王様と呼ばれ、その味はどんなキノコも及ばないというものだ。そして一口口にすれば、体力など全てが回復し、どんな病も治る……と言われるほどに美味しいキノコなのだ」

「病は治らないんですか……」

「体力が回復するからその体が本来持っている治癒や、解毒効果の影響が強いらしい。ただこれはレベルが800以上じゃないと採取が出来ないから625の俺は採れなかったはず」


 以前ゲームでみつけて悔しい思いをしたんだよなとあの時の事を思い出していると、そこでシルフが、


「今はレベル1000なのでは?」

「あ、そういえばそうだった」


 突っ込みを入れられて、俺は自分がそうだったと思い出す。

 そして俺達は伝説の“キラキラキノコ”を手に入れ、その遺跡を後にしたのだった。


 






 遺跡を出ると、太陽が大分傾いていた。

 ただ町に戻っても夕暮れ時よりも早く着きそうだが、


「出来れば、錬金術師と魔法使いようの装置一式揃った部屋を借りたかったんだが、今から見つかるかな……」


 ぼそりと呟いた俺にミルルが申し訳なさそうに、


「すみません、シルフの我儘で遺跡に付き合わせてしまって」

「いえいえ、美人のお願いは断れないんですよ、と言ってみるとか?」


 冗談めかして俺は言ってみるが、それにミルルがかあっと顔を赤くして、


「び、美人ですか。私ってタイキにはそう見えるんですか……」


 ミルルに初心な反応をされて、俺も恥ずかしくなってしまう。しかも、


「でも、タイキにそう言ってもらえて嬉しいです」


 ミルルが俺ににこりと微笑んだ。

 それがいつにも増してとても綺麗に見えて、恥ずかしい思いはしたもののその結果がこれなら良いかなとも俺は思う。

 そんな俺達の間に割りいるようにシルフが入り込んで来て、


「ほら、宿を探しに行きましょう。遅くなると安くていい宿はすぐに埋まってしまいます」

「シルフの言うとおりね。あ、タイキはもう宿を決めていましたか?」


 そう問いかけられていいやと俺は答える。

 それにミルルがそれだったらと言って、


「一緒の宿に泊まりませんか?」

 

 即座に俺は頷いてしまったが、よくよく考えれば同じ宿であって同じ部屋ではない。

 当り前の話だが。

 ちょっとドキドキしてしまった自分が恨めしいと俺は思いつつ、異性なんだから当然だよなと思う。

 間違いが起こっても困るのだから。


 そこでようやく町の中に入る。

 相変わらず行き来する人で混雑している道を歩いて行き、途中路地裏に入る。


「こういった少し入った所の宿がお安くて品質が良かったりするんですよ」


 と案内するミルル。

 そこはこじんまりとした宿だった。







 どうしよう、俺は迷っていた。

 現在俺達はミルルと一緒に鈴の店に、夕食を食べに来ていた。

 何故俺がこんなに悩んでいるのかといえば、先ほど宿での出来事が理由だ。


「宿が三人部屋しか空いていない?」

「ええ、申し訳ありませんが……」


 宿の店主のその言葉に俺は、喜ぶべきかどうかなのか迷った。

 けれど俺から三人部屋で良いじゃん、などと言えるはずもなく迷っていると、


「タイキさえよければその部屋で構いませんが」

「お姉ちゃん!」

「大丈夫、タイキは紳士的ですし、襲ってきたら簀巻すまきにすればいいですから」


 微笑みながら告げたミルルの言葉に、俺の高揚した気分は一気に風船のように萎んでしまった。

 そして他の宿も知らないしこの時間だと宿を確保するのが難しいと聞いて、俺はその三人部屋で構わないと聞いてその部屋に向かう。

 部屋には3つの独立したベッドが置かれていた。

 当たり前の話だが。


 けれどそれでも年頃な男女が同じ部屋なのは、俺自身緊張するのでちょっと悩んでいたのだが、そこで鈴が、


「どうしたの? 悩み多き青年みたいな顔で」

「そんな顔だよ。確かに悩みはあるけれど」

「どんな?」


 楽しそうに聞いてくる鈴に、俺は気づいた。

 今あの話をしたなら、延々とこの幼馴染みのこの女にネタにされると。

 なので代わりに俺は、あの“キラキラキノコ”を取り出して、


「このきのこで俺たちの夕食代を賄えないか?」

「!これ、どこに生えていたの! ずっと欲しかった材料じゃん!」

「今日遺跡で採ってきたばかりの新鮮でホヤホヤのきのこだ。これでいいか?」

「もちろん!お釣りが来るレベルだよ!……折角だからこれをうどんの出汁に放り込んでみます」

「ちょっ、大事に使ってくれよ!」

「残念でした、まるごと一本くらええええええ」


 そう言って俺の渡した“キラキラキノコ”をうどんの汁が入った大鍋に放り込む。

 それと同時に鍋から金色の光が溢れだした。


「こ、これは伝説の、スープ職人が作り上げたという“栄華のスープ”の始まりを見ているようだ。かのスープ職人は自身のスープを極めるためにあらゆる危険な場所へと自ら赴き、そして材料を集めたという。そしてその時作り上げたスープは黄金色の光を放ち、口にした瞬間全ての病が癒え、天上の世界にやってきたかのような幸福感がえられたというそんな素晴らしい味だったそうだ。まさかここで話に伝え聞くものが口にできるかもしれないとは……」


 すぐ側で黒いフードをかぶった幼女が、驚嘆するかのような口調で説明を始めた。

 何で料理マンガか何かのような説明的なセリフを口走っているんだこの幼女は、と俺は思わなくはなかったが、そこでまずその幼女にうどんが1杯差し出される。

 どうやら俺達よりも先に注文していたらしい。

 そしてその幼女はごくりと唾を飲み込み、そのうどんを端で器用につまみ上げ口に含み、


「う、うまい、これは素晴らしい!」

「わー、良かったです」

「ありがとう鈴、こんな素晴らしい物を食べさせてくれて、本当に有難う!」


 そう告げる幼女に俺は、世の中、変わった人がいるんだな……そう俺は思わざるおえなかったのだった。




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