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パティシエ シュクレのスイーツコレクション  作者: 冬厳@主夫ロニア
おすすめセット13 暑さに負けるな! クールなスイーツ(夏休みストーリー)
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オレンジとブルーベリーの丸ごとフローズン【魔】

 透き通る青の海。雲一つない晴天。心地よい海風に誘われてやってきたのは、魔界の中でもトップクラスの悪魔美女二人だった。一人は目の前に広がる青い海に歓喜の声を上げはしゃぎまわり、もう一人は大きなバッグにパラソル、クーラーボックスなどの大量の荷物を抱えてぜーぜーと荒い息をあげていた。

「うっはー!! きれーねーー! ほらほら、ベルゼったら早く来なさいよ!」

「……はぁ……はぁ……あの……虫女め……はぁ……はぁ……」

「なぁによ。じゃんけんに負けたあんたが悪いんでしょーが!」

「……よくもそんなことをぬけぬけと言えたものだ。あれはお前がずるをしたに決まってる」

「あたしがずるしたって証拠はあるの??? ないわよねぇ? これも実力ってこ・と・で♡」

「くっ……!!!」

 最早二人でいる時間が自然となっている地獄の業火を統べる悪魔─アドラメレクと、七罪の暴食を司る悪魔─ベルゼブブは何気なくベルゼブブの住まいで雑誌をぱらぱらとめくっていた。記載があったのは新作の水着の情報だの、屋台でのおすすめメニューだのと他の行楽雑誌となんら変わらない内容だった。だが、アドラメレクがとあるページを凝視していた。その様子を不思議に思ったベルゼブブが何事かと尋ねた。

「ねぇねぇ。これ、やってみない?」

 アドラメレクが指さす箇所には「マリンスポーツ特集」という見開きのページだった。そしてその中にあったのがビーチバレー大会だった。さほど珍しいものではないなとベルゼブブが視線を反らそうとすると、アドラメレクはそうはさせないとばかりにベルゼブブの首を見てほしい箇所にぐいと向けた。

「ほら。ここよここ」

「……こんなことしなくても言われればやる」

「あらそうかしらぁ? おほほほほ」

「……ったく。なになに……『ダブルスで参加し、優勝したら豪華賞品プレゼント』……だと?」

「そうそう。せっかくの夏に何もしないなんてつまんないじゃない?」

「……念のために聞くが、そのダブルスのペアというのは……」

「そんなもん。決まってるでしょ。あたしとベルゼで……」

「却下」

「なんでよーーー」

「なんで貴様とペアを組まんとならんのだ」

「しょーがないじゃなーい。他に一緒に行く相手がいないんだもーーん」

「……」

 豪華景品は欲しい。だが、こんなガサツ女とは組みたくないというのがベルゼブブの気持ちだった。だが、今までこうして過ごしてきた仲というのもある。一瞬、かっとなって却下をしてしまったが、よくよく考えたらそれはそれでありなのでは……と考えを改め、ベルゼブブはアドラメレクにペアになってもいいと承諾をした。

「へ? いいの? っていうか、なにその気持ちの切り替え早くない?」

「貴様が嫌だというなら構わないが……?」

「く……。はいはい。おねがいしますベルゼブブさま。あたしといっしょにたたかってください」

 棒読みでお願いをし、(一応)ペアとなったのだが会場まで行かないといけない。それに、色々と準備もある。ベルゼブブは記事の内容を読み、会場と日時を確認した。開催日はまだ先ではあるが念には念をと思い、持っていく物をリストアップし忘れ物のないようしっかりと準備を始めた。

「ほらアドラ。貴様も大会に行く準備を手伝え」

「わかってるわよー!」

 こうしてあれやこれやと増やしていき、あっという間に大量の荷物の塊となったものを如何にして運ぶかという問題になり、二人は睨みあいじゃんけんに負けた者が運ぶというルールで正々堂々と勝負した。結果は……。

「はーい! あたしの勝ちね! それじゃあ、しゅっぱーーっつ!!」

「る……ルシファー……さま……」

 ビーチバレー大会の前に何か大きな敗北感を味わったベルゼブブはしばし、玄関から動けないでいた。



「大会の会場は……あそこか。まだ時間はあるからここらで拠点を作るとしよう」

「あ、何? めんどくさいこと始めようとしてる? だったら、ベルゼに任せてあたしは海に……」

「させるかっ!! 貴様も手伝うんだ」

「いーやーよー! せっかくの青い海があたしを呼んでいるのよー」

「それはきっと幻聴だ。さぁ、しっかり手伝ってもらおう」

「むーー! なんかベルゼったら急に厳しくなってない??」

「なってない。それに、遊ぶのは拠点を作成してからでも遅くなかろう」

「ぶーぶーー!!」

 アドラメレクは口を尖らせながらブーイングをしているのを無視し、ベルゼブブは慣れた手つきで組み立てていき、ものの数分で立派な拠点を作り終えた。拠点を作り終えたベルゼブブは今までの仕返しとばかりに拠点の中に荷物を運ぶようアドラメレクに快適な空間になるように指示をした。最初は嫌がっていたアドラメレクも次第に文句を言わなくなり、てきぱきと動き想定していた時間よりも早めに拠点作りが終わった。

「よし。こんなものだろう」

「はーはー。ねぇ、ベルゼ。気のせいかもしれないけど、あたしに対しての仕打ちきつくない?」

「いや? 普通だが」

「そ……そう。それならいいんだけど」

 ちょっと気になるところがあるが、それはさておき。今度こそ、遊ぶ時間になったとわかったアドラメレクは大きなバッグの中から水着を取り出し更衣室へと猛ダッシュしていった。

「荷物番、よろしくーー!」

「お、おいっ!! って……なんて速さだ」

 呼び止めようとしたときには、すでに海の家へとまっしぐらなアドラメレクに舌打ちしつつもアドラメレクが戻ってくるまでベルゼブブは自分の水着を用意し、いつでも体を動かせるよう準備体操を行った。


 アドラメレクは紫色のビキニスタイルに対し、ベルゼブブはエキゾチックなパレオを腰に巻いたスタイルだった。お互いが水着の品評会をしている間、遠くで何やら声が聞こえたので、そっちの方に耳を傾けると間もなく大会が始まるとのことだった。二人は急いで会場に向かい、受付を済ませ参加者列に並んだ。

「みなさま。お待たせしました! これよりビーチバレー大会を開催したいと思います! 司会はこのわたし、アキレウスが務めます! よろしくおねがいします!」

 がっしりとした体躯にぴっちりとしたオレンジと白のストライプの水着を着た青年─アキレウスがマイクなしの地声で開催を宣言した。会場は大いに盛り上がり拍手の中に指笛が混じっていた。

「ではこれより、豪華景品をかけたビーチバレー大会のルールを説明します」

 ざっくりしたルールは十点先取、コートの中でラリーをしながら相手のコートにボールを打ち込んでいくといったものだった。最後に体調に気を付けながら楽しむことと締め、いよいよビーチバレー大会が始まろうとしていた。

「あたしの足を引っ張るんじゃないわよ? ベルゼ」

「誰に言っている? アドラ」

 ペアのはずなのだが、既に仲間内でのライバル心むき出しの二人に参加者は早速怯えだし、まだ対戦していないのにも関わらず数名が棄権を宣言した。そのせいか、初戦が決勝戦になるという異常事態になり会場にはどよめきが広がった。それでも参加者がいる以上は開催しないわけにいかない。アドラメレクとベルゼブブはコートに入り、手首と足首をくるくる回して体を解した。

「おーっと。こういうことは初めてだが……これはこれで面白いことになったぞ!! では、初戦が決勝戦の相手は……この二人だ!」

「……ったく。やってらんねぇぜ」

「それはこっちのセリフだボケ!」

 やる気のない二人がずかずかとコートに入ってきた。一人は長身に褐色の肌、頭に鋭い角を生やし青いアロハシャツを羽織っていた。黒のハーフパンツタイプの水着にビーチサンダルと、海からあがったあとのカジュアルスタイルの青年─レグスだった。相方はレグスと同じ褐色の肌に悪霊を従えた悪魔─アザゼル。なんで自分がここに呼ばれたか理解していないアザゼルを無視し、こきこきと首を鳴らし準備を始めていた。

「……なんでオレがこんなことしなきゃなんないんだ?」

「知らねぇ。それは俺が働いてるバイト先の店長に聞いてくれ」

 こちらもこちらで殺気だっているようで、その殺気は辺りに観客を寄せ付けないくらいに凄まじかった。その殺気に負けないくらいに殺気立つアドラメレクとベルゼブブペアも対戦相手に睨みを利かし、今にも別の戦いが勃発しそうなぴりぴりした空気に包まれた。そんな空気を破ったのは司会であるアキレウスだった。ジャンプボールをするから代表は一歩前に出るように指示があり、アドラメレクチームはアドラメレクが、レグスチームからはアザゼルが対峙した。

「さぁて、楽しませちょうだいね」

「はん。ほざいてろ」

「では、十点先取。開始!」

 程よい高さに放り投げられたボールを両者同一のタイミングではたいたが、タッチの差でレグスチームにボールが動いた。砂に足元をとられながら拾ったレグスはなんとかアザゼルにつなげ、それをアザゼルがアドラメレクのコートへと叩きつけた。

「いっけぇオラァ!」

 剛速球が迫る中、鼻で笑いながら受けるベルゼブブ。衝撃を両腕で吸収し、アドラメレクが打ちやすいように調整しつないだ。

「今度はこっちの番よ!! どっせぇえい!!」

 体をバネのようにしならせ打ち込んだボールは柔らかな砂の中にずぼっと埋まり、レグスたちに反撃を許さなかった。先にポイントを先取したアドラメレクは両手を挙げ喜んでいると、レグスとアザゼルは怒りを同調させるというコンビネーションを発揮し、猛攻撃をしかけてきた。最初の方こそパターンを理解するのに苦戦したものの、わかってきたアドラメレクとベルゼブブも静かに興奮しつつ絶妙なコンビネーションを発揮し、見事勝利した。

「やったぁーー!! あたしたちのかっちぃ♡」

「中々楽しめたぞ」

 一人喜んで海へと飛び込んでいったアドラメレクに対し、正面から激闘を称えるベルゼブブは二人に手を差し出し対戦をしてくれたことに感謝の意を述べた。

「ちっくしょう……負けちまったならしゃーねぇ」

「くっそ……悔しいがオレたちの負けだ。でも……楽しかったぜ」

 怒りに満ちていた二人の表情も、今ではどこかすっきりした表情になり互いに握手を交わした。

「これはアツイ展開でした! それでは勝利したアドラメレクチームにはこちらをプレゼント!」

 アキレウスがベルゼブブに渡したのは、この近くにあるリゾートホテル一泊二日無料チケットと、マリンスポーツ満喫セットと書かれたアクティビティ無料体験チケットだった。それをまじまじと見つめるベルゼブブは、無理を承知で司会のアキレウスにお願いをしてみた。

「すまないが……このチケットと同じものをこの二人にも渡してくれないか? 戦った者同士で楽しさを分かち合うのもいいと思ったのだが……どう……だろうか」

「なにっ?!」

「おいお前。正気か?」

 驚く二人に、アキレウスは満面の笑みを浮かべそれを快諾した。アキレウスは準備をしてくると言い、その場を後にした。

「せっかくこうして出会えたのだ。たまにはこういった遊びをするのも悪くないと思ってな」

「……そうかよ。だったら、店長に休み申請してくる」

「……勝手にしろ」

 つんとした態度だったが、まんざらではない二人の様子にベルゼブブふっと笑い海で一人はしゃいでいるアドラメレクを呼んだ。

「おいガサツ女。話があるからこっちに来い」

「だーれがガサツ女よーー!!!」

 海からあがってくるアドラメレクの表情もどこか清々しいものを感じたベルゼブブは、この判断は間違っていないと思ったベルゼブブはアドラメレクにこれまでの経緯を説明をした。驚くアドラメレクだったが、すぐに気持ちを切り替えリゾートホテルに入る前にビーチバレーの再戦を申し込んだ。なんでもさっきのビーチバレーがとても興奮したとのことだ。

「……臨むところだ。あとはレグスが戻ってきたら早速やるか」

「そーこなくっちゃ♡」

 レグスが休日申請が通ったことを報告しに戻ってきてすぐ、コートでビーチバレーをしているのを目にしレグスはにやりと笑い雄たけびをあげた。

「やってやろうじゃねぇか」

 気合を入れたレグスがコートに入り、ビーチバレー大会の延長戦が開始された。夕日が照らす四人の表情はどれも満足そうに笑っていた。

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