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ソルティメロンシェイク【神】

 厳しい暑さが続く中、とある少年は今日も畑仕事に精を出していた。日差しをしっかり遮りながら風通しのよい帽子をかぶり、首には吸水性の高いタオルを巻いている。長袖と長ズボンでしっかりと日差し対策を済ませ一歩進む毎に一個、大きく育ったスイカを収穫していた。しかしそれは少年ではなく、スイカから延びるツタがと言ったほうが正しいかもしれない。

 少年の名前はヴェークロスト。植物を操る魔術を使うことができる彼は普段、エルフの里で魔術の素質のある子たちに魔術を教えているのだが、それと同時にエルフの里に侵入する盗賊たちからみんなを守るために魔術を使い、足を踏み入れたものたちに植物たちの粛清を与えている。できればこんなことはしたくないと思っていても、盗賊たちからエルフの里を守るためだと自分にいいつけながら、魔術を駆使している姿はなんとも言えない葛藤を浮かべているようにも見えると何人かが言っていた。


 そんなエルフの里にも四季は巡る。麗らかな春の次は活動的な夏へと姿を変えたエルフの里は、どこもかしこも暑さで包まれていた。その暑さを利用したアクティブで楽しむ者や、涼むための避暑地を用意する者たちで賑わっている中、ヴェークロストは一人なにやら作業着のようなものを手に取り黙々と着替えていた。着替え終わると道具一式が入ったカートを押しながら手入れのされていない畑へと向かっていった。伸びに伸びた雑草を前にヴェークロストは小さく溜息を吐きながら杖を構えた。ヴェークロストはなにか詠唱を始めると杖の周りに緑色の光が渦を巻きながら集まっていった。ある程度光が集まると、その光は土の中へと潜ると、ぼこぼこと土を隆起させた後、雑草を一瞬にして消滅させた。土を隆起させたことにより土の中にたっぷり新鮮な酸素を含ませ、さらに風の力を使い土を優しく耕していった。ある程度土が耕されると、今度は種を撒きふんわりと土を被せていった。その上にじょうろで水を撒き、土を湿らせるとまだ手入れをしていない箇所に目を向けたヴェークロストはまた小さく詠唱を始めた。

 何度目かの詠唱を経て、広大な畑を耕すことに成功したヴェークロストは一旦休憩を挟んでから再度種を撒いては水をあげる作業へと移った。広大な畑を一人でやるのは難しいと思ったのか、途中エルフの里の仲間たちが加わり、作業は飛躍的に向上した。いくら植物を操る魔術が使えるとしてもいずれ魔力が枯渇してしまう。それにこの暑さも加われば魔力だけでなく体力までも削がれてしまう。現にヴェークロストの額には大粒の汗がぼたぼたと流れており、顔からは疲労感が浮かんでいるのが見て取れた。仲間たちが作業をしている間、ヴェークロストは魔力補給も兼ねた休憩をこまめにとりながら作業をこなしていると、あっという間に日が沈み、空は青色からオレンジ色へと変化していた。今日はこれ位にしてと仲間たちに説得され、ヴェークロストは渋々畑から自宅へと戻っていった。

 翌日。今日は昨日よりも幾分気持ちの良い朝を迎えた。少し眠たい目をこすりながら朝食、身支度を済ませてから昨日の続きをしようと畑に向かうと、そこにはすでに仲間たちが汗を流していた。先を越されて悔しかったのか、ヴェークロストはすぐに軍手をはめて畑へと足を踏み入れた。植物を活性化させる魔術を施した土で育った作物は、あっという間に大きくなっておりいつでも食べごろを迎えていた。中でもあちこちにごろっとした緑色をした球体─スイカはどれも立派に育っていてヴェークロストはスイカの蔦に魔力を流すと、スイカの蔦はまるで自我を持ったかのようにひょいひょいとスイカを収穫し始めた。収穫されたスイカがカートの上に置かれる度に「ずどん」という大きな音をたてて転がるスイカを見たヴェークロストはほんの僅か口元を綻ばせていた。

「おーい! そろそろ休憩にしようぜー」

 仲間の一人がそういうと、周りで作業をしていた仲間たちが「さんせーい」と手をあげた。畑から少し離れた納屋の縁側に腰を下ろし、帽子でぱたぱたと風を起こしていると仲間の一人が大きな更にさっき収穫したばかりのスイカをきれいに切り分けて持ってきた。

「ヴェークロストが育ててくれたスイカ、切ってる間も甘い香りがすごかったわよ」

 切り分けられたスイカを手に取った仲間たちはヴェークロフトが丹精込めて育てたスイカにかぶりつくと、一同目を丸くした。

「あ……甘い!」

「こんなに甘くって美味しいスイカ食べたことないわ」

 口々にいう仲間たちに、ヴェークロストは本当なのだろうかと疑いながらも一口かじると、それが正しかったことに衝撃を受けた。しゃりしゃりとした食感の次にやってくるのは押し寄せる果汁。じゅわっと甘い果汁が乾いた体に染み渡ると、疲労感がほんの僅かに和らいだように思えてくる。

「んー。美味しい。もう一個食べちゃお」

「あー、俺も!」

 いつもは魔術のことしかない生活だけど、こうして仲間たちと汗を流しながらの作業も悪くないと思ったヴェークロストは誰にも気が付かれないよう最後のスイカに手を伸ばした。

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