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再会

 ユニクロの自動ドアを出て、心地いい風を感じた。このショッピングモールはよくあるイオンモールのような全てのテナントが建物に入っているタイプではなく、全体が吹き抜けになっており、天井だけ屋根が付いている少し珍しいタイプのショッピングモールだ。

 俺が小学校低学年の頃にできたショッピングモールだから、もう25年くらいは経っている。建物に小さいなヒビや雨水が垂れてできたような黒ずみがある。空きテナントはいくつかあるものの何だかんだで程々には人が入っている。

 このショッピングモールができた頃は、ここに来るのがあまり好きではなかった。通っている小学校に近かったので、同級生に会ったりすると、母親と買い物に来ていたのが恥ずかしく、気付かないでくれ。と思っていたものだ。同級生の女の子に挨拶をされるのなんかは一番恥ずかしかった。


 30歳を超えて久しぶりに訪れたが、もちろん小学生の時のような恥ずかしさは一切ない。冷静に見てみるとスーパー、本屋、カフェ、ドラッグストア、映画館など生活に必要なものは大体揃うし、多少の娯楽も備えており、ショッピングには十分だった。


 俺は地元の小中学校を卒業の後、県内では上位の公立高校へと進学した。その後は都内の難関私立大学にかろうじて合格し、都内のメーカー事務職に就職した。幸い地方の工場配属にはならず、本社勤務となった。仕事は嫌いではないが、誰がなんと言ったかや、上司の機嫌やら、同僚との関係だとか、仕事の本質ではないようなところを求められ辟易としていた。それに加え、30歳も超えたので、婚活を始めてみたが、女性にはずっと採点されるような言動ばかりされ、食事に行くのもハードルがあり、やっと食事に行けても、その次に繋がらないことが多かった。どっちかといえば後者の方が精神的にダメージが大きかった。いつまでこれを続ければいいのかと。


 ユニクロに行ったのは、Tシャツを買い増したかったのと、折り畳み傘を買いたかったからである。意外とユニクロの傘は優秀で軽くて壊れづらいので、ここ数年はずっと使っている。本屋で買った「アオのハコ」をすぐに読みたくて、1Fのチェーンのコーヒーショップに入った。日曜日なので、席は7割ほど埋まっていた。カフェラテとチョコクロワッサンを会計し、席に着いた。椅子はチェーン店の割に純喫茶のようなおしゃれな毛羽だった赤い椅子だった。チョコクロワッサンは3分くらいで食べ終わり、カフェオレを飲みながら、「アオのハコ」を読み始めた。30歳を超えても青春恋愛漫画を読むのはやめられない。

 マンガを半分くらい読んだところで、右横に女性が座った。その女性はコーヒーと砂糖がけのドーナツを食べていた。気にせずそのままマンガを読み続けていたところ、横からクリアファイルが滑ってきた。拾って渡すと、女性は小さな笑顔でありがとうございます、と言って会釈をした。その後、俺がちょうどカフェオレを飲み終えたくらいで、右腕をつつかれた。

「三島??久しぶり!?」

俺が驚いて、女性の方を見ると「安達遥あだちはるか」だった。

「・・・安達!」

相手も本人か疑いながら声をかけてきたのか、本人であることがわかるとパッと顔が明るくなった。

安達は高校が同じで、高校時代あまり女子と話せなかった俺にとって唯一と言っていい仲のいい女子であった。俺は安達のことが好きだった。勉強も部活も非常に優れた成績で、それを鼻にかけない女子であった。性格が良く、明るいので、男女ともに人望が厚かった。


 10数年ぶりに会ってもやはり可愛い人だった。笑うと小さなエクボができるのも変わりなかった。大学のこと、職場のこと、10数年話せなかったことをお互いずっと話していた。気づくとあっという間に1時間半も過ぎていた。そういえば高校の時もお互い共通の趣味があるわけではないので、放課後1時間立ち話をするようなことも多かった。話している途中、安達の左薬指に光るものを見つけてしまった。昔の恋なのに胸が強くギュッとなった。安達がコーヒーを飲み終えた時、安達が、

「わたし、三島のこと好きだったんだよ、全然気づいてなかっただろうけど」

と突然言ってきて、俺はここ10年感じたことのない感情が湧き上がった。俺がまごついていると、

「6年前に結婚したんだ。職場の2歳上の人と」

と安達は言った。

「そっか、おめでとう。そんなふうに思ってくれてるとは気付かなかったよ」

と俺は無理やり言葉を捻り出した。全力で。どんな顔をしていたかはわからない。

それからは何を話したのかは覚えていない。それからカフェを出て別れた。


 帰り道の風が少し寒く感じられた。

彼女の話は本当なのか、それとも俺を勇気づけるための優しい嘘だったのかはわからない。ただ今の人生がうまく行っていないように思えていた気持ちは、俺を好きでいてくれた女性がいたか、それとも勇気づけるために優しい嘘をついてくれる女性がいたという事実で、帰路は少しだけ気持ちが軽くなっていることに気づいた。

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