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Maid 8. 冒険者にならないか?

「なんでしょう?」

内心、ビクビクしながら答えるガーネット。

すると、マスターから意外な言葉をかけられた。


「お前、冒険者じゃないんだよな?」

「はい...」

ガーネットが質問の意味をはかりかねていると、

「だったら冒険者登録しないか?それだけ強いヤツが、タダのメイドなんてもったいねぇ!」

マスターはそう誘ってきた。

「ぼ、冒険者ですか?!」

ガーネットは驚いているが、

「さっきも言ったが、お前が倒したオーガはA級指定の大物だ!クラスで言えば、金級(ゴールド)にあたる!」

マスターは少し、興奮しているようだ。声が大きくなっている。

「は、はあ...」

ガーネットはついていけず戸惑い気味だが、

「それを単騎で倒した!お前さんは将来の有望な金級(ゴールド)候補だ!」

それをよそに、目を輝かせて話すマスター。

「ゴ、金級(ゴールド)って...私はそんなんじゃ...」

ガーネットは説明しようとしたが、『オーガを倒したのは自分ではない』と今更、言えず、困ってしまう。

金級(ゴールド)になれば稼げるぞ~~!!今でもたくさんもらってるんだろうが、雇われより、自由な冒険者の方がいいと俺は思うがな!」

マスターは期待に満ちた目でガーネットを見つめてくる。

「どうしよう...」

ガーネットが迷っていると、

「別に登録しとくだけでもいい!冒険者は自由だから、メイドと掛け持ちで全然、構わない!デメリットはないから安心しな!」

マスターはそう言って、更に勧めてきた。


「どうしよっか、マリン?」

ガーネットがマリンに聞くと、

「ミャ~~~~!!」

マリンは力強く鳴く。

それを肯定の意味ととったガーネットは、了承することにした。

「で、ではお願いします!」

「よっしゃ!じゃあ、後の手続きは頼むぜ!」

その言葉に、マスターはうれしそうにガッツポーズをすると、受付嬢に引き継いだ。


「それではこの書類に...」

早速、手続きが始まると、

「ああ!それとオーガの討伐もカウントしといてやれ!事後になるが、こいつには早く銀級(シルバー)になってほしいからな!」

マスターはそう言い残して、奥へと去っていった。

「はい」

素直に答える受付嬢。

こうして、ガーネットは冒険者になった。


☆彡彡彡


「これが冒険者証...」

ガーネットは受付嬢にもらった青銅色のカードに見入る。

なんだかんだ言って、冒険者になった実感が湧いてきたようだった。

「それは今後のガーネットさんの冒険者としての身分を証明するものになりますので、大切にしてください!」

受付嬢が注意事項を述べるが、

「あっ!名前が刻印してある...冒険者ガーネット参上!!」

ガーネットはすっかりその気になったようで、カードを差し出すと、ポーズをとる。

本人は迫力のある芝居をしているつもりなのだろうが、はたから見ると、『可愛い』以外の印象はまるでない。

「ははは...」

愛想笑いをするしかない受付嬢。

ただ一匹、マリンだけが、

「ミャ~~~~~!!」

たたえるように声を上げ、拍手をするように両手を叩いていた。


改めて、冒険者証を眺めていたガーネットだったが、

「あれ?...星印が...2つ?」

ガーネットがそこに刻印されている(スター)に、首をひねる。

「ガーネットさんは銅級(ブロンズ)ですので、金級(ゴールド)クラスの魔物を倒したら、星が2つつきます!」

受付嬢が説明してくれた。

「そうなんだ...なんか悪いな...」

自分があげたわけでもない手柄に、ガーネットが恐縮していると、

「優秀な冒険者には早く、ランクを上げてもらいたいとの配慮です!もう一体、金級(ゴールド)クラスを討伐すると、ガーネットさんも晴れて銀級(シルバー)ですよ!」

そんなガーネットの心を知るわけでもない受付嬢は、そう言って笑いかけてきた。

「ははは...」

ガーネットが苦笑いをしていると、


「おい!あいつ、ああ見えて、すげぇ強ぇらしいぜ?」

「この街から金級(ゴールド)の冒険者が誕生するかもな!」

「歴史的な瞬間に立ち会っちゃったわね!」


周りの冒険者たちからの羨望の眼差しが痛い。


「わ、私、用事がありますんで!」

ガーネットは逃げるようにその場を後にした。


☆彡彡彡


「なんか、すごいことになっちゃったなぁ...」

今更ながら、ことの重大さに気付くガーネット。

「ミャ~~~~!!」

マリンの声は、『大丈夫だよ!』と言っているように聞こえる。

「それにこのお金...」

ガーネットが財布の小袋を、服の上から握りしめる。

ずっしりとした金貨の重みが、大金であることを実感させた。

その時のことだった。


「出てきたね!」

街の路地から冒険者パーティーが顔を出す。

「あなたは...アメジストさん!!」

それは先ほどガーネットを助けてくれた女の子3人組だった。


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