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Maid 4. 緑の奇跡の雫

その日の深夜。

「わぁぁ~~~~~!!」

ガーネットが歓声を上げていた。


岩場に生えていた『緑の奇跡』の花が、ゆっくりと開いていく。

中の蜜の光が、幻想的に辺りを照らしていた。


やがて、花が咲き切ると、ガーネットは持ってきた魔法のガラス瓶を手に取る。


これは中に入れた物質を劣化させずに保存し、更に、外のガラスはどんな衝撃を与えても壊れない。

貴重な材料の採取に重宝される、とても高価なアイテムだった。

ガーネットも姫様のお付きという立場でなかったら、一生で一度も見ることはなかっただろう。


「・・・」

ガーネットは慎重に花を下に向けると、中に溜まった蜜をガラス瓶で掬い取る。

「・・・」

マリンも大人しくその様子を眺めていた。


「これは...」

幻想的に光る緑色の液体。しかし、

「やっぱり、違ったかぁ~~~...」

ガーネットの落胆の声が聞こえる。

「本物の『奇跡の雫』は虹色に輝いているはず!!...これは...緑色...」

ガーネットはうつむいてしまう。

「ミャ~~~~!!」

マリンが何か言いたそうに声を上げると、

「...そうだね!こんな簡単に見つかるものなら、他の人がとっくに見つけてるはず!!これくらいでくじけてちゃ、とてもじゃないけど『奇跡の雫』なんて手に入らない!!...姫様!私、頑張ります!!」

ガーネットは心を新たにするのだった。

「さて、これはどうしよう...」

ガーネットが、ガラス瓶に入った『緑の奇跡の雫』を見てつぶやく。

持っておいて損はないが、貴重な魔法のガラス瓶を不要なもののために使うのはもったいない。

悩んでいると、

「ミャ~~~~!!」

マリンが大きな声で鳴く。

「『持っておけ』って?...そうだね!これ自体が滅多に手に入らない回復薬だし、高値で売れるのも間違いない!ガラス瓶の余裕がなくなるまでは取っておこうかな?」

なんとなくマリンの言いたいことが分かったガーネットは、ガラス瓶を腰のポーチにしまった。

「ミャ~~!」

にっこり笑うマリン。

「ふふふ!マリンって賢いんだね!これからも頼りにしてるよ!」

ガーネットも笑い返す。

そして、洞窟まで戻ってきた二人。

「ふわぁぁ~~~~!眠い...今日は大変だったな!...明日はまた下りないといけないんだよね...憂鬱...」

顔をしかめたガーネットだったが、よほど疲れていたのか、ゴロンと横になると同時に、深い眠りに落ちていった。



<ポンッ!>

姫様が姿を現した。

「お疲れ様!ガーネット!今日は...頑張ったわね!!」

そして、愛おしそうに声をかける。

「心配しなくてもいつもそばにいるよ!だから...安心してね!」

姫様がガーネットの頭を軽く撫でると、

「んん...姫様...」

ガーネットが寝言を言った。

「ふふふ!夢の中でも私のことを考えてくれてるの?うれしい!!...私も、いつもガーネットのことを考えているのよ!」

姫様はガーネットの顔を間近で見つめる。

「可愛い!!...全部、終わったら...け、け、結婚...しましょ!」

そう口にした姫様の顔が真っ赤になった。

しかし、すぐに真顔になる。

「さて...そのためにはここから安全に脱出できる方法を考えなきゃ!...ライト!」

魔法で光源を出した姫様は、崖のそばまで行き、下を見下ろす。

「う~~~~ん...ここを下りるのはガーネットには無理ね...今回は都合よく気絶してくれたけど、そうじゃなかったら!!」

姫様の顔が真っ青になる。

「やっぱり、別の方法を...でも、どうしよう...」

姫様は狭い岩場を歩き回るが、完全に崖に囲まれている。

困り果てていると、


<ガラッ!>

洞窟の入口の岩が少し、崩れた。

「キャッ!ビックリした!...ここの岩、脆いのかしら?」

姫様は洞窟が崩れないか心配になり、中を確かめる。

<コンコン!>

岩の表面を叩いてみるが、硬く、しっかりしている。

「脆いのは入口をふさいでいた岩だけみたいね...」

順に叩いていくが、脆そうなところはない。

そして、最後に一番、奥の岩を叩いてみると、

<ガラガラガラ!>

そこだけ脆かったらしく、岩が崩れ落ちた。

「いけない!ガーネット、起こしちゃった?」

姫様は急いでガーネットのもとに戻り、起きていないか確かめる。

「ス~~~...ス~~~...」

しかし、良く眠っており、目が覚める気配はなかった。

「良かった!」

一安心の姫様。

もう一度、奥に戻ると魔法をかける。

「サイレント!」


これは一般的には、魔法使いの詠唱を無効化するために使われる魔法であるが、実は応用範囲が広い。

対象の周辺の音を消し去るため、例えば、自分にかけると、隠密行動が可能となる。

また、『相手のコミュニケーションを邪魔する』などの使い方も考えられよう。

そして、今回は、先ほど崩れた岩壁の周辺で発生する音を消すために使用したのだった。


岩の脆い部分を蹴り飛ばしてみる。

<・・・>

魔法の効果で無音のまま、崩れ去った先には、大きな空洞ができていた。


「もともと、つながっていた洞窟がところどころ、崩落して孤立した空間になったのかも!!」

そう推理した姫様は、奥へ奥へと進んでいくのだった。


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