Maid 1. メイド服の女の子と白猫
「キ~~~~~!」
「キ~~~~~!」
空から甲高い声が聞こえる。
声の主は『クリフホーク』。
高い山の断崖付近に生息する魔物の一種だ。
タカのような姿をしているが、その体躯はとても大きい。
人間なども平気で襲ってくる。
特に何かの必要性に駆られて、崖を登ってくる人間は格好の餌食だ。
何しろ、反撃する余裕がほとんどない。
そして、今、この山の崖の上空には、多くのクリフホークが集結していた。
なぜなら...その格好の餌食がまさに今、崖をよじ登っていたからだった...
☆彡彡彡
「はぁ...はぁ...」
一人の女の子が荒い息をしている。
顔もとても苦しそうだ。
「ミャ~~~~~!」
その肩には一匹の白猫が乗り、心配そうに鳴いていた。
一人と一匹は山中深くで、高い崖に挑んでいた。
それだけを聞くと、冒険者かと思うかもしれないが、その女の子の格好は、それとは程遠いものだった。
一言でいえばメイド服だろうか?
紺色のワンピースに白いエプロンが縫い付けられている。
頭には白いカチューシャが。
足には黒い革靴を履いていた。靴下ははいていない。
メイド服はとても可愛らしい。
胸を強調したデザイン。
フリルいっぱいのエプロン。
スカート丈はミニだ。
時折、足を大きく動かすと、下着が見える。
ピンクの可愛い下着だ。
しかし、女の子はそんなことなど気にしている余裕はない。
慣れない様子で、必死に崖をよじ登っていた。
<ガラッ!>
「あっ!」
女の子がつかんでいた岩が崩れた。
「ミャ~~~!!」
白猫が叫ぶように一声、上げる。
「くっ!」
しかし、女の子はなんとかバランスを取り直し、別の岩をつかむことに成功した。
「ふう...」
一息つく、女の子。
その女の子はとても可愛らしい顔をしていた。
クリッとした大きな目は、燃えるような赤色。
そして髪の毛の色も、深い赤色だ。
くせのないストレートで、首の位置で切りそろえられている。
身長は低めだが、プロポーションは抜群だ。
大きな胸。細いウエスト。すっと伸びた足。
そして着ている服がそれを強調していた。
大きく盛り上がっている胸の形が、とても良く分かる。綺麗な胸だ。
メイド服の裾からチラチラのぞく太ももは、柔らかそうだ。
相乗効果で、彼女の魅力を十二分に引き出していた。
「ミャ~~~!」
白猫がホッとしたように女の子に頬ずりする。
「ふふふ!マリン!大丈夫だよ!」
マリンと呼ばれた白猫は深い青色の目をしている。
その体毛は真っ白で、毛並みも非常に良い。
細い体を持つ、小型の猫で、とても賢そうだった。
「キ~~~~~!」
「キ~~~~~!」
クリフホークの声がやかましい。
「・・・」
「・・・」
女の子は不安げに、マリンは睨むような目で上空を見上げる。
しかし、
「いくよ!!」
再び、決意に満ちた目に戻ると、女の子は崖を登っていくのだった。
☆彡彡彡
一時間後。
女の子は崖の途中で一休みをしていた。
「はぁ!...はぁ!...はぁ!...」
とても苦しそうに肩を上下させている。疲れ切っているのだろうか?
女の子が上を見上げるが、
「まだあんなに...」
半分も登っていなかった。
くじけそうになる心を女の子は奮い立たせる。
「姫様!きっと手に入れて戻ってまいります!...姫様のためなら...私は...」
そう口にすると女の子は再び、登り始める。しかし、
<ガラッ!>
「あっ!」
また、足を踏み外しそうになる。
さっきから度々見られる光景だ。
その時だった。
「キ~~~~~~~!!」
一匹のクリフホークが女の子、目掛けて急降下してくる。
チャンスと見て、襲いかかってきたのだろう。
「キャッ!」
とっさに崖にしがみつく女の子。
しかし、クリフホークは構わず体当たりしてくる。
「シャ~~~~~!!」
そんなクリフホークをマリンが鋭いツメでひっかく。
「キ~~~~!」
クリフホークはひるんだようだ。
体をわずかに縮こませる。
<スカッ!>
それで軌道が変わったからか、クリフホークは女の子のすぐ上をかすめると、再び上空へと舞い上がっていった。
「・・・」
「・・・」
次なる襲撃に備えて、上を見つめる女の子とマリン。
「キ~~~~~!」
「キ~~~~~!」
しかし、クリフホークは様子見をしているようで襲ってくる気配は感じられない。
いずれ女の子に限界が来ることが分かっているのかもしれない。
<ガラッ!>
再び、登りだした女の子がまた、足を踏み外した。
「姫様!...姫様!...」
うわごとのように口にしながら、苦しそうに崖を登る女の子。
全身、土で汚れ、顔も手も足も傷だらけだ。
「ミャ~~~...」
マリンはその様子を不安そうに見つめているのだった。
☆彡彡彡
それから10分。
「姫様...はぁ!...はぁ!...姫様...はぁ!...はぁ!...」
さっきから女の子はうつろな瞳で、『姫様』とつぶやきながら、激しく息を切らせている。
もう限界が近いのだろう。いつ意識を失っても不思議ではない。
それでも、ひたすら上を目指し続ける。
根性というより、もはや、無意識に近い状態だ。
『どうしてそこまで頑張るのか?』
見る者がいたら、そう問いかけずにはいられないだろう。
「ミャ~~~~~!!」
マリンがそんな女の子を鼓舞するように、大きな声を上げている。
意識が飛ばないように、必死で叫んでいるようにも見えた。
しかし、ついにその時は来る。
「ひめ...さま...」
切ない声でそう口にした女の子の目から涙がこぼれた。次の瞬間、
<ガラッ!>
倒れるように後ろに反り返ると、そのまま真っ逆さまに落ちていく。
「ミャ~~~~~!!」
「・・・」
マリンが叫ぶが、女の子の意識は完全に失われていた。