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オレはガルフレットと、宿舎へと歩いていた。

たぶん、魔王の団体は、名前ありのクラスで来るだろう。

そして最初はアークデーモンクラス辺りで勝ちを譲りながら。


「参ったな…先鋒は強すぎでも、弱くてもダメだな」

「ハーベストやビスマルク辺りでも良いとはおもうんだがの?」

「いや、おそらく次鋒戦から連中は本気で来る。油断を誘うためにも、先鋒はギリギリ勝てるくらいの、相手がいい」

「うーむ…アークデーモンと言うだけで、すでに初級では無いのだがな」

「だが、ハーベストやビスマルクでは、それらより普通に強い」

「面倒臭いのう」

「だから迷ってるんだよ。近衛兵の中に、適当なのいればいいんが…」

オレたちは、そう話しながら、兵舎についた。


着いてみて、まずオレはハーベストを探した。

ビスマルクよりは話しやすいし、それぞれの百人隊の力量の差は、それほど変わらないと思ったからだ。

ハーベストはすぐに出てきた。

事情を話すと、すぐに弓、槍、剣に優れたものと、魔力に長けた者を選出してくれた。

一通り見てみたが…鍛えられてはいる。鍛えられてはいるが、それぞれに長けたものは、それぞれに長けているに過ぎなかった。融通が効かないといったら言い過ぎか。

オレが試験の最中に、ウィンドーブレスで軽く妨害を入れてみると、大体の者が反応できない。

近衛兵としての団体の中では、それぞれの采配に徹底していれば、戦としては勝てる。それだけに過ぎなかった。

オレは、ハーベストに不得手の物にも対処できるように育てよと命ずると、やはりバレましたか、と少し恥ずかしそうな、情けなさそうな、複雑な表情をした。 そしてオレたちは、王立学園へと向かった。王と大賢者が見学に来ると聞いてか、学園は浮き足立っていた。

国が優秀な兵士見習いを探していると聞いてか、皆色めきだっている。

正直ちと青臭い。

ここは、将来のために必要な学園。見れる限りは個人を見ようと思っていたが、魔族と対立することになると告げた途端、大半の参加者が辞退をした。

それはそれでいい。己を弁えない者は、早死する。

最終的には7人になった。

オレは、この際と思って、一人一人相手にすることにしてみた。

それならばと、再参加を候補する者が何人か いたが、それは拒否した。生命のやりとりに、2度目、3度目はない。


そして1番目の相手。

何と暗黒騎士。

名前はバクと言ったか。何かに飢えている目が気に入った。

試合開始の合図。

魔の気配を持って攻撃を繰り広げてくる。

こいつ、良い。

問題なのは、魔のマナで与えられるダメージは、正のマナを持ったオレらだけだ。

おそらく葛藤があったのだろう。今までの憤りを、すべてオレにぶつけてくる。

嫌いじゃない。嫌いじゃないぞ。

数手を交え、オレはバクの剣をはじき飛ばした。

オレはバクに話しかけた。

「バクっつったか?」

バクは悔しそうに頷く。

「お前はそのまま進め。おまえの剣は間違いじゃない」

驚いたように、バクはオレを見る。

「ただ、相手は魔族だ。暗黒騎士では相手にならない。おまえの人生になにがあったか俺は知らない。だが、押し寄せる波を…憤怒を、純粋な魔力に変えろ。魔法戦士ならば、おまえは高みに登れる」

バクは衝撃を受けたようだった。

最後に、腹からの声で

「ありがとうございました!」

と叫んだ。


2番手はベリーという名の女の子だった

打って変わって、こちらは真っ当な剣士。おそらくは子供の頃からだろう。正規の剣技が身についている。

だが、数手交えてベリーの剣を飛ばす。ベリーも心底悔しそうにしていたが

「おまえベリーだっけ?」

「はっ!」

「剣術は申し分ない。なのに何故魔力を込めない?」

「わ、私には魔力がありません」

「どこのバカに言われたんだ、それは?」

「え?」

「魔力のない人間などいない。己の中に流れるマナを感じろ。そうすれば、魔法剣くらいは使えるようになる」

「はい!ありがとうございます!」


3番手はヴォルフ

ひと目見て分かった。こいつワーウルフだ。隠しているのか、両手にはナックルが握られていた。ワーウルフの爪ならば、ナックルなんかより、硬質で攻撃力も高いだろうに。

何手が受け、ナックルを断ち割った。

「ありがとうございました…」

悔しいのが見て取れる。

「これで満足か?おまえの中の血は、これで満足か?」

バレている。やっとそう気づいたようだ。

「…陛下。私の正体がバレても、ここにいられますか?」

「うーん、どうだろうな」

ヴォルフは全身で諦めを示した。

「おまえの能力次第では、即王宮に召し抱える事になるかもしれんからな」

ヴォルフは一気に満面の笑顔になった。

「では、参ります!」

着ていたワイシャツを脱ぎ、呼吸が獣の呼吸に変わった。

背中から、胸から、獣毛が生えてくる。爪も伸び、そして顔が狼のそれに変わった。

「きゃっ!」

腹の座っていない生徒が悲鳴をあげる。

なるほど。こりゃ正体出せねーわな。オレはこの先の学園に色々手を加えなければならないと感じた。

「それでは、行かせて頂きます!」

「おう!来い!」

いきなり間合いを詰められる。早い!?

「まさか瞬動に瞬足まで手に入れてるとはな!」

「恐縮です」

オレも少しは本気を出さないとならないな。

「瞬動!」

力は、3割くらいか…4割で充分だろう。

爪を用い、的確な場所にかなりのスピードで攻撃してくる。おそらく、大半の生徒たちは何が起こっているか把握もできていないだろう。

「いいぞ。いいぞ!もっと素早く。足と身体のバランスを整えろ!」

ここでオレは、こっそり風の武具付与を唱えた。

結果、ヴォルフの爪は切り落とされた。

「参りました!」

「おまえの爪は1日〜2日で治るのだろ?」

「はっ」

「おまえ、ヴォルフって言ったか?」

「は、はい」

「よし、爪が治り次第王宮に来い。即戦力として雇ってやる。魔力付与の呪文は忘れずに覚えておくように」

「おぉ、陛下…心より感謝致します」

「いや、こちらこそ居心地悪いとこに詰め込んで済まなかったな」


4番手はスノーという、眉目秀麗な男の魔法使いだった。

時折女生徒から歓声があがる。

ふと、ヴォルフのことが頭をよぎる。こんな学園では、さぞや生活に気を使っていただろう。

兵士に美醜は関係ない。

「参ります」

スノーはすかさず詠唱に入った。

面白い。

「この地に宿りし水のマナよ、我が祈りにより、この者に、水なる力にて、凍てつく弓矢を与えん。アイスアロー」

なるほど。氷属性か…ならば

「冥府の地に宿りし空のマナよ、我が命により空気よ爆ぜよ、サンダーウェポン!」

俺は、アイスアローを雷属性の剣で、次々と砕いていった。

「くっ!ならば!」

スノーは畳みかけるように唱え始めた。

「この地に宿りし水のマナよ、我が祈りにより、この者に、水なる力にて、凍てつく槍を降らせん。アイスジャベリン!」

太さじゃないんだなぁ、これが。

同じように、オレは槍を次々と砕いていく。もう見切れた。

「冥府の地に宿りし空のマナよ、我が命により空気よ爆ぜよ、ナノサンダーブレス!」

オレは、もっとも弱い空属性の呪文で、スノーを射抜いた。

「はい、試合終了な?」

しばらくは全身が痺れて動かないだろう。

「参り、まひた」

「負けた原因は何か分かるか?

「分かり、まへん」

「まず、相手が水属性にとって相性の悪い空属性を使い始めた所で、火属性に変えるべきだった」

「へ、陛下恐れながら…」

「なんだ?」

「私は、何度も練習しらのれすが、水属性の魔法以外使えまれん」

「なに?初期のファイヤーボールですらか?」

「はい」

「それは珍しいな。うーん…ならば水属性を極めろ」

「え?」

「できないものはしょうがないだろ。まずは冥府の地を視れるようになることだな」

「し、しかし冥府の地を視た方に方法を聞いても、どなたも答えてくれません」

「うーん…来る時はいきなり来る、といか言えないな。何を犠牲にしても、力が欲しいと思ったときに」

「はい…分かりました」

「ま、まだおまえは若い。真摯に学んでいたら、いつかは見えるさ」

オレはスノーの肩に手を置いた。


5番手はピンクという女の子だった。思わず2度聞きしたが、どうやら本名らしい。

「で?おまえさんは何を得手としている?」

両手ともに武器を持っていない。魔法使いか?だがワンドもスタッフもない。

「これですわ。陛下」

オレを見ていた瞳の色が変わる。

チャームか!

「あ…あ」

「良いんですのよ、陛下?私を好きになさっても」

「あ、あ…あーー!」

ピンクが科を作りながら近寄ってくる。その指が、オレの頬に触れてくる…瞬間。

「あ…あっぶねー!!」

オレは思わず頭突きをかます。

「いったーい!」

「おまえ国王になんてことしやがる!」

「なんで効かないんですか!?」

「気合いだ!」

愛しいフィリスや、何より、色気魔人のカルラに囲まれて暮らしているのだ。十代のガキンチョのチャームにかかる訳が無い。

「おまえ、その能力は危険だぞ?どこまで分かっている?」

「え?イケメンのハーレムで、贅沢三昧のウハウハ人生?」

「バカヤロウ」

思わず再び頭突きをしてしまった。

「痛いですってー」

「おまえが構わんなら構わんが、それ、まず政略結婚に使われるぞ?」

「はぁ」

「それで、親は存命か?」

「はい。両親ともに」

「その両親を人質に取られたらどうする?イケメンでも何でもないオッサンの元に嫁がされたとしたら?」

「え…」

考えてもいなかった様子だ。

「ついでに言うと、さっきオレにかけたことも、国家反逆罪だ」

「えー!!」

「ぜんっぜん考えてなかったな」

「へ、陛下どうかお許しを…」

「だから乳を押し当てるな!」

「…わたしどうすれば」

「うーん…参ったな」

ずっとオレの動向を黙って観察していたガルフレットに助け舟を求めてみる。

「そうじゃの…この娘がどこまて男好きか分からんから何とも言えんが」

「男好きじゃありません!」

「まぁ、成人するまでは、家族ごと王宮で保護し、チャームは使わんと約束をさせ、両思いになれる誰かに出逢ったら、蛇神の誓いによりひっそりくらすのが良いのではないかの」

「ひっそりですか…」

「言っておくけど、魔物にはチャームは低級のゴブリンやトロール、オーガとかにしか効かねーからな」

「えー!じゃあわたし、未来の楽しみなくなるじゃないですかー」

「んー…軍属に入れば、内偵とかには使えるけどな」

「それは楽しいことですか?」

「どんな仕事だろうと、楽しいだけの仕事なんかない。ただ…」

「ただ?」

「飽きることはない」

「あ、じゃあわたしそっちにします」

「そんな簡単に…」

「退屈な人生なんて、家畜と一緒ですわ」

「ま、セバスに1週間でも教わったら、考えも変わるかもしれんて」


そして6番手。ハンタースという名前の、狩人だった。

「よろしくお願い致します」

「おぅ」

言った傍からハンタースの行方を見失う。瞬動でも瞬足でもない。これは、シオンが使っていたイースタンマジックだ。

シオンは、この魔法に気殺とか言ってたな。あくまで魔術ではないと言っていたが。

参ったな…見えないものに反応はできない。だが、気殺とは言っても攻撃する瞬間までは気配は殺せない。オレは両目を閉じた。

気配を察する。

よし、よく視える。皆よく集中している。あ、1人うたた寝してやがる。後で注意だな。

さて、肝心のハンタースは…正面!?こいつ1歩も動かずオレを倒す気だ。

ハンタースが狙いを定めていたところを既のところで避ける。

「おお、今のを避けますか」

「心眼のひとつも開けなけりゃ、やってられない立場なんでな」

ハンタースはまた気殺を使い、今度は瞬動で移動を計った。早い!?今度は後ろだ。

一撃。村正を一振りした。

ビーンと張った弓矢の弦が切れた音が響く。

「参りました」

「なんだ、剣でもダガーでも、続けて構わんぞ?」

「いいえ。私は弓にかけておりました。陛下に気殺を見抜かれた段階で、私の負けでおります」

「潔良いな。だが、戦場では何があっても諦めるな。生き残れ。泥水をすすってもだ」

「は!」

「所で、おまえも彼方よりの東方人か?」

「はい左様で」

「なら、シオン、エンジュ、ヒイラギの名に心当たりはあるか?」

「な!?あの者達は無事なのでしょうか?」

「メイド長の元で鍛え、情報収集や裏仕事をしてもらっている」

「な、何をすれば、ヤツ…彼らと同じ部署に配属させて頂けますか?」

「あ?別に今からでも配属して構わんぞ?おまえ、能力的には充分だし、何やらあるんだろ?」

「有り難き幸せ!この恩は忘れませぬ」

「気にすることねーぞ?ふと思っただけだから。この試験の後で、メイド長にピンクと一緒に推薦状を書いてやる。少し待っててくれ」

「ありがとうございます!お待ちしております!」


「さて、7番手はオレか…」

あ。さっきうたた寝してたヤツだ。粗野な態度とは裏腹に、端正な顔立ちをしている。お手並み拝見と行くか。

「お初にお目にかかります。私、スタージョンと申します」

「ほぅ、居眠りしてた割には礼儀正しいな」

「や、これはお恥ずかしいトコロを…あまりに退屈な試合ばかりだったもので」

スタージョンの気配が殺気に変わる。

「面白い。では口ではなく腕で試せ」

「それでは」

スタージョンは、無造作に近づいてくる。そして、懐に忍ばせておいたクナイを影に縫おうとした。シャドースナップ。影を縫い付けられたら、動きが取れなくなる。

オレは素早く反応した。

逃れながら…

「おまえも、東の国のものか?」

「いえ、全く」

否定しながら、スタージョンは逆手に剣を掲げ、唱えた。

「第一閃!」

コイツ、まさかオレの技を?

しかも補助魔法もなしに!?

オレは間一髪でそれを避けた。

うん。ハーベストの使っていた遠当てとは全然違う。魔力を剣に宿し、何倍もの攻撃力を示してきた。

なんだコイツ。

普通、選りすぐりの上流騎士ですら、こんなことできるわけがない。

「お前は何者だ?それに、他に被害が出るとは考えなかったのか?」

「はて、この程度で死ぬ輩なら、その程度の能力だったんじゃないっすか?」

言いたいことは分かるが、戦時中とは違い、今は稽古の段階だ。誰もそんなので死にたくは無いだろう。

「さて、何者でしょう?」

「分かった。死ぬでないぞ?」

オレは、散を試すことにした。

もちろん外部からの補助なし。自分の補助魔法のみだが、人間相手の技と考えれば充分だ。


「冥府の地に宿りし大気のマナよ、我が命により解き放たれよ」

あくまで相手の得意魔法まで分かるまでは、属性を問わない補助魔法が効果的だ。

コイツ、ニヤけてやがる。

…あー、もうコイツ殺して良いかもとか考え始めてる。

「村正斬撃…散」

斬撃を重ねるごとに、スピードを増していくオレの最高技。まさかこれまで避けられまい。

下方から数センチ単位で刻んでいく。だが、驚くのみだがコイツ、足運びと剣で、これを防いでいく。いくら寸止めできるスピードとはいえ。

下半身を防ぎきり、次は腹部に至る。これすらも防いでいく。

スタージョンは楽しそうに剣を受け続ける。

よし、オレも楽しくなってきた。本気で行かせてもらおう。オレは速度を上げていく。腹から胸に至った。スタージョンの受けが遅れてきた。そして一瞬の隙を逃さず、オレはそのブレストアーマーを切りつける。

裂けるアーマー。と、同時に衣類も。…む、胸!?裂けた衣類から、たしかに膨らんだ胸が出てきた。

「お、おまえ女か!?」

「そうっすけど?」

「なら隠せよ!つか恥じらえよ!」

「いや、別に減るもんじゃないんで」

「あー…で、オレの勝ちでいいのか?」

「はい、参りました」

どこか不貞腐れたように言う。

「で、おまえの剣には殺気が感じられた。何故だ?」

「私の名前はスタージョン-F-ロンバルド。父がお世話になっております」

「あー!おまえロンバルド公の娘か!それがなんで?」

「やはり覚えていないんすね?」

「何をだ?」

「10年前、我が父とロック陛下が交わした約束の話です」

「なに、それ?」

「かー、やっぱりか」

「え?え?」

「陛下は、父と酒の席ではありますが、まだ6歳の私と婚姻の約束をなさっております」

「はいー!?」

「父も、フィリス様とご結婚なさった時、まぁ酒の席だったからお忘れになったのだろうと申していたんすけど…」

「ま、マジで?」

「マジっす。それならばせめて陛下のお役に立てるようにと鍛えて来たんすけど…まさかの第二王妃とのご結婚。私の気持ちは、お分かりっすよね?」

やっべー…まったく記憶にねぇ。10年前っつったら、オレが酒を覚えたての頃だ。呑めるだけ呑んで、吐いてまた呑むような生活を続けてた頃だ。正直、覚えてる訳がねぇ。

でも…

「でも、それがマジなら…いや、マジなんだろうが、それって最低じゃねぇか、オレ?」

「はい。最低っすね」

「す、すまねー!と、とりあえず今のおまえのオレへの感情は、好意か?敵意か?」

「ど、どっちかっつーと好意すね」

想像もしてなかった質問に、スタージョンは頬を赤く染めた。

「だ、だったら、第三夫人でいいか?」

「え?」

「婚姻だよ。言ったことは守る。それがどんな約束でもだ」

「え?え?こんなオレを貰ってくれるんすか?」

「おう!」

「でもオレこんなガサツなのに…」

「いや、おまえはおまえの魅力を持ってる。いわゆるギャップ萌えってヤツだな」

「そ、そのギャップ萌えってのは分かんねーすけど、こんなオレでも必要としてくれるんすか?」

「あぁ。待たせて悪かった」

スタージョンは涙ぐみ始めた。

「な、なんだこれ?あれ?ちくしょう…」

オレは何か堪らなくなって、スタージョンを抱きしめた。

「や、やめろ。恥ずかしいだろ…」

そう言って恥ずかしがってはいるが、拒否はしない。

「ガルフレット。蛇神との契約を」

「承知した。それでは」

軽く咳払いをしたガルフレットは指先に魔力を込める。

「ロック-フォン-アーヴィンハイム。そなたは命尽きるまでスタージョンを愛することを違うか?」

「あぁ、誓おう?」

「スタージョン-フラワー-ロンバルド。お主はその命尽きるまで。ロック-フォン-アーヴィンハイムを愛することを違うか?」

「あ、あぁ!もちろんだ!」

「では、誓いの蛇神を薬指に」

ガルフレットはダガーで薄く切った指先を俺とスタージョンの薬指に当てた。その瞬間、蛇のようなものが指に刻印され、指先から心臓へと入っていった。

生徒からはまばらな拍手…から、大歓声に変わった。

なんでオレはこんなに嫁作ってるんだ?とか思っていると、スタージョンが、

「陛下…オレこれまでの人生で1番嬉しいよ。ありがとう。本当に」

オレはその頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でてやった。


選別も終わり、オレには厄介な業務が残った。

まず、団体戦に参加するメンバーを上げた。

「ヴォルフ!おまえがメンバーだ。爪への魔力付与…補助魔法を速攻身につけろ。目安は1週間。それが叶わぬなら、代表者はスタージョンに変える」

「は!必ずや物にしてみせます」

と、しかしスタージョンは納得いかない顔だ。

「スタージョン…コレめんどくさいな。今からおまえ、お花さんな?」

「え?えー!?」

「で、お花。なんで自分が選ばれなかったか分かるか?」

「い、いえ、まったく」

「場馴れだ。基礎能力は、すでにおまえの方が高いかもしれん。だが、おまえは戦場に何度出た?」

「先日の、リザードマン戦が初陣です」

「それだ。おまえ、その戦で100%の力が出し切れたか?」

「いや…残念ながら」

「それが1番大事なところだ。どんなに才能があっても、100%…いや、120%の力が出し切れない様では無駄死にするだけだ。対してヴォルフ。おまえはどうだ?対魔王戦闘の頃から傭兵か何かをしていたのではないか?」

「は!戦を周り、小銭を稼いでおりました」

「これがプロだ。分かるか?」

「…はい。想像もできない世界です」

「だから、今後は場数をこなせ。もちろん、王妃になったからには、怠惰に暮らしたいと望むなら止めはしないが」

「そ、そんなの御免です。我が命は陛下のために」

「まずは自分のために生きろ。自分のために生きられん者が、誰かのために生きることなど不可能だ。配属は近衛兵士団で良いか?」

「は!かしこまりました!」

「それでは、各々解散。ハンタースにピンクはこの場に残れ」

「は!」

全員の声が重なる。


そして生徒たちが引き上げた頃、オレはハンタースとピンクに話し始めた。

「さて、2人とも。紹介状書くのもめんどくさいんで、直接会いに行く。これから会いに行くのは、セバスと言う執事長だ」

2人の、なぜ執事長に?という顔がなにか面白かった。

「執事長は、戦時中、漆黒のアレクとして暗殺ギルドの長をしていた男だ」

2人の息を飲む気配を感じた。

「ハンタースはともかく、ピンクはその修行は過酷を極めることになるだろう。心してかかれ」

「は!」

というハンタースの頼もしげな声と、

「やっばー!早まったかな…」

というピンクの緊張した顔が反比例していた。


オレたち3人は、王城へと戻ってきた。玉座につき、さっそくアレクを呼び出す。

アレクは間もなくやって来た。

「お呼びでしょうか、陛下?」

「ああ。アレク…でなくセバス。ちょっとこの2人を頼みてーんだけど」

「達人と素人ですな?」

オレは思わず吹き出した。

「そうそう、達人と素人だ。これから2人を鍛えて欲しい」

「私めに依頼をされるということは、執事、メイドの他に、暗殺術を、ということで宜しいですな?」

「ああ。達人の方の名はハンタース。気殺と瞬動、瞬足をすでに極めていて、シオン、エンジュ、ヒイラギと顔見知りのようだ」

「ほほぅ」

アレクの目付きが鋭くなる。オレも、この一族?を会わせることでの危険は考慮に入れた。良くて脱藩、悪くて反乱。だが、アレクならば、うまくまとめてくれるだろうと、委ねることにした。

「素人の方は、チャームの瞳。たぶん、いずれは魔眼になるだろうが、戦闘力は皆無だ。オレにいきなりチャームをかけてくるほどの肝っ玉の持ち主でもある」

「また曲者どもを連れてきましたな」

「やりがいあるだろ?」

「将来が楽しみですな」

「そんじゃ、さっそく頼んぞ?」

「承知しました」


そして、何よりの難関。フィリスへの第三王妃の説明だ。

コンコンコン。一応ドアをノックをする。

「どうぞ?と気楽な声がする」

オレはドアを開ける。

「よ、ようフィリス…今時間平気か?」

「人の時間なんて気にしないロックがどうしたの?」

「フィリス」

「はい」

「第三王妃ができた!すまん!」

「え?」

フィリスが飲んでいた梅昆布茶の湯のみが割れる。

「どういう…ことかしら?」

「実はオレ、呑んだくれてた時期あったじゃん?」

「そうね」

「それで、10年前のその時に、ロンバルド公の娘と婚約をしたらしい」

「え?私より前なの?」

「ああ、今日オレの役に立つためと、訓練を受けに来た」

「あなた覚えてなかったの?」

「まったく」

「さいってー」

「だよな。で、カルラを第二王妃にした事で、キレたらしい」

「そうでしょうね」

「それで、打ち合ってお花…つーかスタージョンに婚姻の話をして…泣かれて、堪らなくなって抱きしめた」

「あー」

フィリスは少し悩んだ顔をした。

「分かったわ。ロックは、私たちを平等に愛しなさいな」

「え?」

「これからはカルマよろしく、敵味方の王妃も出てくるでしょ?」

「いや、オレはそんなに増やしたくないんだが…」

「黙りなさい。そうなって行くのが王ってものよ?」

「……フィリスー」

「なに?」

「めんどくせぇよぉー」

「知りません。選んだ業というものです」

「あー…」

「ちなみに、ロンバルド公の娘さんは幾つなの?」

「16だったかな」

「ロリコン!鬼畜!犯罪者!」

「だーからー、抱く気はねーってばよ」

「それはムリよ?」

「え?」

「ロンバルド公が後継ぎを待ってくれるかしら?」

「あー」

「オレは、フィリスさえ居てくれれば良いんだけどなぁ」

「またそういうことを言う」

「本心だよ?」

瞬間、フィリスとロックの目が重なる。

「あなた、チャーム持ってないわよね?」

「ある訳もない」

「じゃあどうして、そんなにまっすぐ人の目を見られるの?」

「見たいからだ」

「あぁ…もう好きにして」

「分かった」

そして唇を重ねる。そして、なにかキツい?

「フィリス。おまえ子供できてないか?」

「え!?」

「いつもと身体が違うぞ?」

「えー!?」

「神官に検査をしてもらおう」

「う、うん」


検査の結果、陽性と出た。

「子供が出来た!子供が出来た!」

俺はガキのようにはしゃいだ。

それが男の子でも女の子でも、変わらず愛す。

誰かが、柱の影からこちらを睨んでる気配がある。カルラだ。

「ズルいですー」

と、こちらに怨念を飛ばしてくる。

「カルラにもそのうちにな?」

「え!?本当ですか!?」

とてもフィリスが全員を均等に愛せと言ったからとは口に出せない。

「あ、そういえばカルラ」

「はい、なんですかー?」

「おまえウィンディアに入れたっけ?」

「たぶん入れますよー?私にはエルフの血も入ってますしー、場所も前回の件で記憶がありますのでー」

「それじゃ、悪いけど、明日書簡を届けてもらえ…て、おまえ移動中燃えてるんだっけ?」

「纏っていますが、封書くらいは届けられますよー」

「そりゃ良かった。それを明日サモに届けてくれ」

「かしこまりましたぁ」

「それじゃ、おやすみ」

「あらー、ご一緒しますよー」

「いらんわ!」


俺は自室に戻ると、書簡に一筆認めた。


緊急

東の森解放のため、サモナリア殿に至急お越し願いたい。

ひと仕事をお願いしたく、貴殿の戦闘能力をお貸し願いたい。

ロック-フォン-アーヴァンハイム


そして裏側の右下に、ウィンディア王妃サモナリア殿と記入し、蝋で封緘を押す。

これを明日カルラに渡して、魔王の連絡待ちだ。

やることはやった。問題は魔王がどこまでのレベルの魔族を送り出して来るかだ。

なにか疲れたな…少しウトウトしてきた、そのところでドアがガンガン叩かれた。開くとロンバルド公が満面の笑みで立っていた。

「聞きましたぞ陛下!まさかこのまま寝るつもりではありますまいな?」

「え?そのつもりだったが?」

「水くさいですぞ陛下!フィリス様のご懐妊、おめでとうございます!」

「あ、ありがとう」

「しかも…スタージョンにまで婚約をして頂いたとのこと。父としてこれ以上嬉しいことはありませぬ」

「あぁ、連絡が遅れてすまない。お花…じゃなくてスタージョンはオレが幸せにする。ガキだったとは言え、大事な約束を忘れていてすまなかった」

「陛下ー!」

ロンバルドは半分泣き始めながら、

「この日をどれだけ待ったことか!男親で育てた故、ガサツに育ってしまいましたが、素は優しい子。大切にしてやってくだされ」

と、完全に泣いた。

「獅子王ロンバルドの泣き顔なんて、誰も想像出来るものなどいないでしょうな」

「そうですな!ささ、陛下!準備は整いました!会場に向かいましょう」

「会場?」

「左様です!フィリス様のご懐妊の祝いと、スタージョンのお披露目にございます!」

「え?今日?これから?」

「今夜は寝かせませぬぞ!」

と、ロンバルドは言ってガハハと笑った。


祝賀会はこんな時間にも関わらず、多くの人や料理、酒で賑わっていた。

オレは多くの貴族からの祝福を受け、フィリス、カルラ、お花の到着を待った。

そこで、前回同様、良く通るいい声をした武官が王妃の到着を告げた。

ちなみに、俺はこの男の他の仕事を知らない。

「我が国の、第一王妃フィリス-フォン-アーヴァンハイム様のお成りでございます。フィリス王妃は、この度陛下の御子を身もごりました事をお知らせ致します」

大歓声が上がる。

フィリスはいつもの純白をベースとした、早くもマタニティドレスで現れた。

一般的に、子を授かると女は強くなると言われるそのせいか、表情は母のそれになっていた。


「それでは、我が国王第二王妃であります、カルラ-フォン-アーヴァンハイム様であります」

カルラは、今回は赤と黒をベースに、後ろ首に布をかけ、それをほとんど前に回した、背中から前もほぼ丸見え、そのまま前に足したスカートは、サイドが脇まで開き、どこを見て話せばいいのか、男性陣は困ることになる衣装を着ていた。衣装担当もさぞや苦労したのだろう。


「そして、先程決まりました、第三王妃。スタージョン-フォン-アーヴァンハイム様でございます。数時間前に王が学院にて腕を確かめ、剣の技量さに1目起き、そして恋に落ちたとのことです」

「ま、待ってくれ!陛下はオレなんかに惚れておらん。オレは約束を盾に…」

うるさいので口に蓋をした。唇で。

お花の顔が真っ赤になり、目がキョドり始めた。

フィリスとカルラの視線には気づかないことにした。

少し離れて見てみた。

「似合っているじゃないか。感動した」

「あ、な、そんな…」

…なんか新鮮に可愛い。

お花のドレスは緑を基調としていた。そして、お花の引き絞った無駄のない筋肉をアピールできるように設えられていた。

実際、この場でお花の相手をできるものが何人いるか。

…強えな、ウチの奥さんたち。

祝賀会は深夜にまで及んだ。なにせ、ふだんは呑まれるまで呑むのは剣士の恥でございます。と言い切っていたロンバルドが泥酔しているからだ。

さすがに、臣下にそこまで付き合わせることもできないので、オレはことあるごとに、もう退出していいぞ?と帰らせているのだが、どこの国にも祭り好きという者はいるもので、会場にはまだ結構人が残っている。さすがにフィリスとカルラは帰らせたが。

「それででありますが陛下ね?スタージョンには陛下の英雄譚を聞かせて育ててましてね?その人がおまえの将来の王子様だよ、と聞かせていたのですよ」

「もういいから止めてくれオヤジー!」

「陛下が先日風のマナ討伐の折り、帰ってきてから倒れられた時など、水ごりをしていたくらいでして…」

「ほうほう」

「頼むーオヤジーもう寝てくれー!」

お花が必死に腕を掴んで立たせようとしていたが、どんな酔っ払っていてもさすがに獅子王、ピクリとも動かない。

「ほら、陛下も今日はお疲れでしょうしー!」

「や、これは陛下!お疲れでしたか!」

「いや?お花ちゃんが幼い頃より、オレをどう見ていてくれたのか、聞くだけで楽しいぞ?」

「へいかー」

「あとはそうですね…フィリス王妃との結婚が決まった日など、ならば私はこの国1番の剣士になり、陛下をお守りする!などと申しまして、結婚式には1日かけて大木を相手に打ち込みの修行をし、その大木を切り倒したものです」

「あーーー」

「そうか。寂しい思いをさせたな、お花。これからはいつでも寂しい時はオレがいるからな」

「も、もう知りません!!オヤジ、明日覚えてろよ?」

お花はそう言いながら、顔を真っ赤にして立ち去った。

「それにしても凄い。齢10歳ほどでしょう?1日で大木を倒すとは」

「でしょう!?我が子ながら驚きましたわ」

「そう言えば、お花ちゃんは結婚後も騎士でいたいとの希望でしたが、それで構いませんか?」

「それはもちろんです。我がロンバルド家は騎士の家系。あれの母親も、戦場で亡くしました」

「あぁ、魔王戦でしたか」

「左様。酷い戦でした」

「でしたね」

オレたちは、たかが7年前の大戦に思いを馳せた。

「時にロンバルド公。此度の団体戦の件ですが、学園で活きのいいのを見つけましてね」

「ほほぅ」

「魔王戦で幾度か見つけた気もするのですが、ヴォルフというワーウルフをお覚えですか?」

「おぉ!幾度か我が傭兵団に所属していた者にございます」

「そのヴォルフを先鋒に、団体戦を組もうと思うのですが」

「ふむふむ」

「仮に先鋒が負けたとしても、次鋒は負ける訳にはまいりません。ロンバルド公の実力は承知の上ですが、あえて次鋒戦、お任せいただくわけにはならないでしょうか?」

ロンバルドはガハハと笑いながら

「なにを話し始めると思ったら、そんなことでしたか。そんなことでしたら問題ありません。喜んでお受けさせて頂きましょう」

と胸を張った。

「それはありがたい。次の戦は、次鋒戦から相手が本気になる可能性があります。お気をつけください」

「むろん陛下の代理として、気を抜くつもりはありません。それで、中堅以降はどのような配置に?」

「まだ仮にですが…」

オレは何となく声を顰めながら、言った。

「ガハハ!それでしたら実力としても私は次鋒ですな」

「いえいえ、迷った末にです」

「それにしても、今回の戦は5人制の円満な戦。人死のない戦にしましょう」

「それは最優先事項です。良い戦にしましょう」

「御意!」

オレたちは、それから数時間ほど、お花をからかったりしながら楽しい一夜を明かした。


朝、と言っても昼だが、熟睡して目を覚ました。寝返りをうつと、心地よい感触。

「カルラ?」

「はい〜、おはようございます〜」

「とりあえず服着なさい」

「はーい」

「で?今日のこれはなんだ?」

「書簡をいただきに伺いました〜」

「あー、それそれ。夜遅くに届けに行くのもなんだと思ったんでな」

ほい、頼んだ。と、書簡を渡す。

「…それだけですかぁ?」

「なんだ?一撃が欲しかったのか?」

拳に息と魔力をかける。

「いえー!いえいえー!少し驚いただけですー」

「ちなみに次に意味無くこういう事したら一撃だからな」

「はいー。それでは行ってきますー」

カルラは窓を開け、飛び去っていった。


まだあと数日はあるかと思ったが、それから間もなく魔王から連絡があった。

「その後、団体戦の面子は揃いましたかな?」

「おそらくは、一応」

「カッカッカッ!それは楽しみですな」

魔王はそう言えば、と続ける。

「フィリス王妃のご懐妊の件、おめでとうございます」

「!?あ、ありがとうございます」

誰から漏れた?

誰?

いや、そもそも、情報はそこらの虫からでも手に入れられるのか?やはりコイツは信用できない。

「ところで、カルラはお気に召さなかったですかな?」

「いえいえ、そんなことは」

「その割にはカルラとのそう言った話は聞きませんが?」

やはりスパイはいるのか?

もしやカルラ自身が?

いや、それは無い。やはり虫かなにかか?

「そう言うのは空気とタイミングがありまして」

「そうですか…誓いましょう。カルラと陛下の子供とあれば、最強の子供が生まれましょう」

「何故か、いいカモにされそうな気がするんですが…」

「そんな事はありませぬぞ?私が興味あるのは勇者殿。貴方だけです」

「それは光栄ですね」

苦笑いをするしかなかった。

「それでは決戦の日はいつにしましょう」

「10日後とかはどうですか?」

「良いでしょう。そちらからは5〜6日の距離。余裕もありましょう」

「客はどうします?」

「観客ですか。これだけの勝負、無観客で行うのもつまりませんな…そうですね。私が用意している選手とその予備。入場はそれくらいですな。低級魔物など入れようものなら試合になりません」

「それでは、観客席は私側が頂いて宜しいと?」

「構いませぬぞ?」

「それはありがたい。観客料で稼げます」

「おや?勇者殿にはそんなに苦しい台所事情が?」

「いえいえ、これだけの大きな勝負。観たいと思う者すべては入りきらないでしょうし、対戦した5人に褒美も与えたかった。…それだけです」

「カッカッカッ、抜け目がないですな。我が城に、いつ攻撃がくるやら」

「いえいえ、早く世界の半分を確保、維持できればと思うのみです」

「まぁ、そうしときましょう。それでは10日後の…午後13時くらいでどうでしょう」

「問題ありません。それでは」

「それでは」

「おっと、団体戦は、弱い者から強い者で間違いないでしょうね?」

「な!?…スキがありませぬな。マナを次鋒辺りに据えようと思ってましたわい」

「間一髪でしたね」

「勇者殿…やはりあなたは良い。このまま好敵手としてあり続けて欲しいものですな」

「それは恐ろしいので遠慮します」

「それは残念。振られてしまいましたな」

「もう少し価値観が近くなれば、友人になることも可能でしょう」

「それは難しいですな」

「それは残念。それでは」

「それでは」

鏡の魔王が立ち消える

「サモ、来てる?」

「よく分かったな」

窓側のカーテンからサモとカルラが現れる。

「気配でな」

「ということで、ドワーフの自由の身と、東の森の自由の為に、人肌脱いでもらいたいのだが…」

「願ってもいない、借りを返す機会じゃ。是非ともやらせてくれ」

「お、それは頼もしい。よし、中堅確保!で、カルラ」

「はい〜」

「お前大将だから」

「責任重大ですね〜」

「で、ガルフレット。お前副将な」

「まぁそう言ったところであろうと思っておったわい。構わんぞ?久々に腕がなるわ」

「オレも魔王さえ出るなら喜んで出たかったんだが、そうでもなさそうなんでな。今回は観客に徹底させてもらうぜ」

オレは気持ちを切り替えた。

「さて、と、今回は下級兵士に宣伝を任せよう。国王軍最上級兵士対魔王軍最大級魔族の、土地をかけての勝負!」

「ふむ。街かどや呑み屋に貼っておこう」

「観客料は、ちと高いが100枚でどうだ?」

「一世一代の大勝負じゃ。安いくらいじゃろう」

「よし!すぐ宣伝に取り掛かるように伝達を頼む」

「了解した」

ガルフレットは兵士たちに伝えるために、謁見室から出ていった。

「ところでロック…顔を見せてみい」  

サモに両頬を抑えられ、顔を近づけられる。

「止めろよサモ。オレは3人の嫁持ちだぜ?」

「下らぬことを言うのはこの口か?」

「痛え痛え!本気で引っ張んな」

「ふむ。生命力は戻ったようじゃな」

「ああ、世界樹の葉のおかげだ。二度と飲みたくないがな」

「何枚飲んだ?」

「20枚くらい?」

「本当に、ギリギリだったようだの」

「残り返そか?」

「1度出したものは引っ込められぬ。乾燥はさせておるのじゃろ?」

「そりゃもちろん」

「生で飲んだり塗ったりした方が効果は高いが、保存が効かなければ意味ないからな」

「今回の団体戦…頼りにさせてもらうぜ」

「ふむ。穏便な戦にはならんだろうからな」

「とにかく、やるだけやって、勝利をもぎ取ろう!」

「おう!」

そしてふと、本当にふと気づいた。

収容人数に対してだ。

当時の名残とはいえ、団体用の宿は残っている。だが、10年は放置してある。

最低でも、換気、掃除、ベッドセット、居酒屋の準備はしておきたい。即、下級兵士や、商人ギルトに連絡をして、何とか最低限の支度を5日で済ませられる事になった。

あとは観客だ。

同時に進行していた観客への知らせは、東のイーストフォレスト、西のウエストエンド、北のノースタルトに、南のアクアラング。

伝達の鳥に連絡を任せ、周辺の町も合わせて2万5千名もの人数に2日目になった。とても1万人以上は入らない。

オレは仕方ないので、家族単位でのクジを500人単位で作り、そこから当たったもの199組を選別した。

あぁ、残り500人は、選手側の家族や身近い者を招待する為に取っておいた。


そして、7日前に王都出発し、2日前に宿に着いた。

突貫工事にしては、なかなかな出来だった。俺たち5人組は、俺と、ヴォルフ、ロンバルド、サモ、ガルフレット、ライズ、カルラに、フィリス、お花に、学園の選抜組と身内数名だったが、ヴォルフの身内のライカンスローブ(獣人)が100人前後も応援に来ていた。

何処から出てきたのか、と思ったが、これだけいれば、ひと兵団できる。

はっきり言って、オレは人種に差別などしない。だが、彼らが日陰者になってしまう環境があるのが事実だ。それを兵士としてまとめて雇い入れれば、差別がなくなっていくだろう。ただですら、戦闘スキルは人間よりはるかに勝る。オレは、領地よりもに多大な収穫が得られるかもしれない。

そして、客席の保護を目的として、近衛兵団の内100人を王都に残して、残りの近衛兵団1人が50人を保護するという配置になった。

これで充分だろう。

あとは勝つだけ。

面子は揃った。あとは魔族がどう出るかだ。


先鋒戦は、案の定アークデーモン。

名無しだろうが、角のデカさ、羽根の美しさで強さは分かる。

コイツ、強い。ヴォルフへの心配が重なる。

が、心配は何処へやら、ヴォルフは相手の打ち込みを数手でいなして、相手の強さを見切ったようだ。

そしてワーウルフに変化し、呪文を唱え始める

「冥府の地に宿りし大気のマナよ、我が命により我が爪に更なる力を与えん!エンチャントウェポン!」

「ほう。1週間で冥府の地を見たか。追い込んだな」

相手は炎系の種族だったようだが、呪文すべてを先程の呪文でかき消される程度のものだった。よし、ヴォルフは勝つ。少し強すぎたくらいだ。

ヴォルフは、百人兵団の長として、充分だろう。そう思っているときに、相手の首筋に、伸ばした爪で、相手の参った。という言葉を引き出していた。


さて、次鋒戦

ロンバルド公爵対、ヒュドラ。

次鋒戦の名乗りが上がったと同時に、オレはロンバルド公と観客護衛の兵たちに毒性の対魔法術を唱えるように命じた。

急いでロンバルド公と兵団が呪文を唱える。

ヒュドラ。魔王戦で数回やり合った事がある。1体の胴体に9つの首を持つハイクラスモンスターの毒蛇。

その毒素は強力にして、吐く息、血液も強い毒性を持つ。そして、9つの首は、真の1本の以外は切り落としてもスグに生えてきてしまう。

コイツと戦う時は、それぞれの首を焼き切り、新しく生えてこないようにしながら真の首を見つけ、その首にトドメを刺すしかない。ロンバルド公は無論知っていると思うが…

「ムリはしてはならんぞ、ロンバルド公!」

オレの叫びに剣をかかげる。

祝賀会ではああ言ったが、ロンバルドは負けを認めるくらいなら死を選ぶだろう。

嫌な予感がする。

試合開始の合図がかかる。

「冥府の地に宿りし火のマナよ、我が命により、この剣に炎よ宿れ!ディープクリムゾン!」

ロンバルド公の剣から深紅の炎が立ち上る。

よし、大丈夫だ。ロンバルド公は分かっている。

ヒュドラが、その9つの首を駆使して攻撃してくる。ロンバルド公はそれをいなし、1本の首に狙いを定め、剣を振り落とした。

炎の剣は見事に首を断ち切り、切り口を焼いた。だが、焼き切れなかった少量の血液がロンバルド公の赤い鎧に飛び散る。

シュゥーという音を立て、強い酸の血液が鎧を溶かす。地肌に当たっていたら、骨まで溶けていたかもしれない。

やはりだ。ヒュドラにはロンバルド公のようなパワータイプではなく、一撃回避のスピードタイプか、その身を炎で包める魔法戦士タイプの方が優位だ。

先鋒と次鋒が逆だったら良かったかもしれない。とにかく相性が悪い。

だが、ロンバルド公は躊躇いもせずにヒュドラに切りかかる。そして2本目の首を切り落とし、その飛沫が鎧の留め具にかかってしまう。修復不可能だと知ったロンバルド公は、鎧を脱ぎ捨てる。ムリだ。自殺行為だ。

それでもロンバルド公は迷わない。3本目の首を無造作に焼き切る。今度は飛沫が右肩に。剣は握れているので、神経にまでは届かなかったのだろう。しかし、筋肉の奥深くまで溶けたのが目に取れる。

一瞬の痛み。ほんのコンマ1秒動きが止まったところで、ヒュドラの尾がロンバルド公の胸を打ち、弾き飛ばす。

それを見た観客の方々から、ロンバルド様!もう止めてください!と、悲鳴が上がる。俺も気を抜くと呼んでしまう。ロンバルド公は未だに獅子王として、市民からの人望が厚い。

獅子王は観客に向けて、雄叫びを上げた。

「炎剣乱舞!フレアトルネード!」

不意にロンバルド公は演武を舞うように炎の剣を振り回し始めた。

周りに味方がいない状態でのみ発動できるロンバルド公の必殺技だ。

4本目、5本目、6本目、と次々に剣は首を落としていく。そして、9本すべての首を落とした後、全身に飛沫を浴びたロンバルド公は、倒れかける身体を剣で支えた。それから、切り落とした首の中で、動いてる1本を探す。その1本にとどめを刺さないとヒュドラは死なない。

あった。切られて尚蠢く1本が。

ロンバルド公はその1本に向かい、気をこめた一撃を振り下ろし、押しつぶす。そして崩れ落ちる。響く観客と、お花の悲鳴。

「この勝負、相打ちでよろしいな!?」

オレは魔王に対して叫ぶ。

「よろしいでしょう」

魔王が答える。

「フィリス!お花!救護兵!」

オレは観客席から飛び降り、ロンバルド公への道を急いだ。

「フィリス!世界樹の薬はあるな!?」

「ここにあるわ!」

「すぐに塗るんだ!お花も手伝え!」

「陛下…申し訳、ありません」

「何も言うな!よくやってくれた!救護兵!早くロンバルド公を救護室のベッドへ!」

オレはお花の方を見て、

「お花、ここは良いから近くにいてやれ」

と言ったが、お花は頭を左右に振った。

「いえ。オレはもう王妃っすから、最後まで見届ける義務があるっす」

「…分かった」

オレはそれを受け入れた。


中堅線

サモナリア対テュポーン。

テュポーン?確か伝説上のモンスターだぞ?5メートル以上はありそうな背丈は、下半身は蛇。上半身は人間と猛獣の混血のような体躯。そして、大人一人分のような大きさの大剣を握っている。伝説では不死の化け物と聞くが…サモ大丈夫か?

試合開始の合図が鳴る。

サモは素早く、召喚の言葉を発する。

「いでよ、ペガサス」

サモのすぐ前に、翼を持った、白馬が現れる。呪文の詠唱もほない。

サモはすかさずペガサスに飛び乗り、相手との距離をとる。

「重ねていでよ、フェンリル」

サモの足元に、これまた大きな、5メートルはあろうかというオオカミが現れた。

フェンリルは、その性格は凶暴、その息吹は炎をまとい、支配下におくのは難しいモンスターだ。

フェンリルが先に仕掛ける。テュポーンの顔面に、強烈な炎を浴びせかける。そして、顔に両手を上げさせ、空いた下半身…蛇の尾に、凶暴な顎を噛みつかせる。

テュポーンが叫び声を響かせた。イけるか?しかしテュポーンは蛇の尾を持ち上げ、フェンリルを床に叩きつけた。

ギャウン、という叫び声を1度上げ、フェンリルはまた臨戦態勢に距離をとる。

「腕だ!フェンリル!」

サモの指示が飛ぶ。

フェンリルはテュポーンの腕に噛み付いた。そしてそれも束の間、噛み付いた腕ごと床に叩きつけられる。

サモがグフッと軽く血を吐く。

そうなのだ。召喚術士は召喚獣と、間接的に繋がっている。なので、召喚獣がダメージを与えられたら、召喚士も一定のダメージを受ける。

「引け!フェンリル!」

フェンリルが消え去った。

「いでよタロス!」

青銅でできた、ゴーレムとも呼ぶべき自動人形が現れた。

タロスには基本的に斬撃での攻撃は効かない。主神に守護され作られたからだと言われている。

とにかく怪力で、青銅の剣を持ち、自らを灼熱と化し、相手に抱きつき焼き尽くすこともできるという話だ。

その、タロスが動いた。青銅の剣が唸る。テュポーンがそれを防ぐ。受け、返し、返して受けるという攻防が幾度も繰り返される。

タロスに疲労はない。やがてテュポーンは疲れ始め、剣の精度が落ちてきた。タロスはそこを見計らって、テュポーンの胴体に抱きついた。

タロスの青銅の色が灼熱により赤黒くなっていく。

しがみつく腕に、どんどん力を込めていくタロス。コロシアム内に、タンパク質の焼ける匂いが広がっていく。

と、テュポーンが動いた。東の国の、ハラキリのように、タロスごと自分の腹に、剣を突き刺した。そして、勢いをつけ、タロスの上半身を切断した。むろんテュポーンもぶじではない。致死レベルの傷が、腹に1文字についている。だが、テュポーンは倒れない。タロスは、唯一の弱点である背中の血管を切断され、絶命した。

近くで、ドサッと何が落ちる音。

サモ!ペガサスから落ちたサモが、動けなくなっている。

ペガサスもそれを追うように消失する。

「魔王!中堅はオレらの負けだ!もういいな?」

「まぁ良いでしょう。もう少し楽しみたかったですがね」

「フィリス、救護兵!」

オレたちは、すぐさまサモの倒れた場所へと駆けつけた。

「サモ!腹見るぞ!」

やはり傷はない。

「フィリス!飲み薬の方だ!」

「はい!」

薬を煎じた飲み薬をカップに入れ、口元まで持っていく。

しかし飲まない。

そもそも、息をしていない。

ヤバい。

迷う間もなく、薬を口に含んだ。

苦い!いや、それどころでは無い。

オレはサモに口移しで飲ませる。

カハッとサモは呼吸を取り戻す。もう一杯か。

サモにまた1杯分飲ませる。

目が、開いた。

「サモ!大丈夫か!?」

「大丈夫、じゃ…すまん。役に立てなんだ」

「良いんだ。ゆっくり休んでくれ」

サモがゆっくり目を閉じる。

「救護兵!サモを救護室に!」

はっ!と救護兵がサモを救護室へと運んでいく。


副将戦

ガルフレット対ヴァンパイアのウィザード-ロン-ザッハルト伯爵。

まじか。

魔族の伯爵っていったら、魔王の側近クラスだぞ?

そして基本的に、魔族は魔法の詠唱がいらない。それは生まれた時から、体内に魔法属性…魔法陣に近いものを抱えて生まれてくるからだ。

そして、唯一絶望的に日も昏れる。

「ガルフレット!」

ガルフレットは、またも背中を見せながら、親指を立てた。

ヴァンパイア…キングオブナイトメア。ナイトウォーカー。永遠の死を超えたもの。

幾多の名前を関するが、ヴァンパイアは実は弱点は少なくない。

心臓に杭を打ち込む。

日の下に出す。

十字架に触れると火傷を負う。

それが何でキングオブナイトメアなどど過大な評価を得るか…

それは、血液を糧に永遠に生きるものであり、何よりその怪力である。オレが知っている限りでも、指ひとつで顔面を砕かれた兵士がいた。襟を捕まれ玩具のように投げつけられた者がいた。

伝説上の魔族だ。

ガルフレット…いかなガルフレットであろうと、1体1では無謀ではないか。

「ガルフレット!」

不安が胸に押し寄せてくる。

それでもガルフレットは背中を見せながら、手を振るのみ。

「よくぞ我が前に立った老いぼれが」

ザッハトルがまず言葉の先制を仕掛ける。

「フォッフォッフォ。それを言うならお主はいくつじゃ?ただ歳を重ねただけの若造よ」

「くっ、それは我が魔術と能力で思い知るがいい!」

「面白い。来るが良いわ」

ガルフレットは普段の通り、挑発を軽くいなす。

普段のガルフレットどおり。

問題は、相手がヴァンパイアだと言うことだ。

おそらくは体力、魔力、ともにガルフレットより上だ。

ならばどうするか?

…正直、賢者と言われるガルフレットは知識に頼るしかない。

ザッハトルはその身を灼熱に纏わせた。

それに合わせてガルフレットは詠唱を唱える。

「冥府の地に宿りし火のマナよ、我が命により、深遠なる闇の炎を与えん!ダークフレアバースト!」

しかしそれは火に油を注ぐが如しだった。ザッハトルが炎を全身で受け止める。それを身体に纏いながら、反撃する。

「ほれ、返すぞ?ダークフレア」

纏ったダークフレアをガルフレットに投げ返す。

「ちぃ!アブソリュートゼロ!」

絶対零度の壁で、冥府の地の炎をかき消す。

しかし、それより先にマズイ。

ガルフレットの奴、呪文を詠唱なしで使いやがった。

オレの時と同じだ。寿命を縮ませる程の反動。

ガルフレットの口の端から一筋の血液が。

「どうした?口ほどにもないな。弱き種族よ」

「ふぉっふぉっふぉっ。今ので確認したのみよ。お主、最上級の炎属性の魔法は受け入れられても、同じく最上級の氷属性の魔法は相殺しか出来なかったようじゃの」

「それがなんだ!メテオインテグラ!」

これは読んでいたのか、空に浮かび、瞬動でかわすガルフレット。

「生意気な!メテオインテグラ!メテオインテグラ!」

ひとかたまりで、隕石クラスの魔力を連発するザッハトル。

「さすがに、詠唱なしは羨ましいのぅ」

近衛兵士は飛び火をしないよう頑張っている。

どうやらザッハトルは、火の属性持ちで間違いがないようだ。

「ファイアウォール!」

ガルフレットは、空中での瞬道の行き場を防がれる。そこへメテオインテグラの集中砲火。

寸前でアブソリュートゼロで致命傷を阻止する。

「やるじゃないか老いぼれ」

「…お主はいくつになる?」

問われた質問に、少し戸惑うザッハトル。

「大体560くらいじゃねーのか?」

「そうか。わしはまだ60くらいじゃ」

『え?えーー!?』

観客中が驚きの声をあげる。

むろんオレもだ。

どう見ても、ガルフレットは100はオーバーしている。

「わしはな、10代より魔術の勉強を始めての…」

30代で魔術の粋を極めた。

ガルフレットはそう続けた。

「そして、五行以外の魔法…光と闇。そして時の魔法にすら辿り着いた」

「ならばなぜ老いぼれの姿をしている」

ザッハトルが当然の疑問を持ちかける。

「色々あっての…若さを封じたのじゃ。お主は強い。じゃからの?少し本気を出させてもらおう」


「封じた時を解き放ち、我に本来の若さを…力を…今一度分け与えよ。タイムリーパー!」

ガルフレットを中心に、風が渦巻く。中のガルフレットのシルエットが変わっていく。

風が収まり…中から出てきた者は、白髪が金髪に変わり、シワ、たるみの無くなった、エルフとも見紛うほどの美形の男だった。

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