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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに! リアルでは女の子達と配信はじめます  作者: グミ食べたい
第3章 ドラゴンスレイヤー編

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第37話 竜の眠る聖域

 俺は、込み上げる興奮を必死に押さえ込みながら、問いを重ねる。


「この砦に、ドラゴンがいるんですか?」

「いや、正確にはこの砦ではない。この近くの山中に洞窟があり、その奥に古の魔法で築かれた『聖域』がある。そこに封じられている」

「聖域……」


 このゲームで、具体的な場所として聞くのは初めてだ。

 それでも、響きだけで伝わる。

 特別で、侵しがたい、何か重大な意味を持つ場所だと。

 ドラゴンを封じる舞台として、これ以上なく相応しい。

 隊長は重々しく続けた。


「かつてこの地を荒らし回ったレッドドラゴン『インフェルノ』。先人達は命を賭してそれを聖域に封じ、永き眠りにつかせた」


 インフェルノ。

 名が告げられただけで、空気が一段重くなる。


「この事実が公になれば、愚かにも目覚めさせようとする者が現れかねん。ゆえに、王族と軍の一部のみがその存在を知り、我らは密かに監視を続けてきた」


 隊長の眉間に深い皺が刻まれる。


「だが――目覚めてしまった。今はまだ聖域の力によってその力は大きく抑えられている。目覚めたばかりで本来の力も取り戻していない。それでも、このままではいずれ聖域を破壊するだけの力を回復するだろう」


 緊急事態だ。

 プレイヤーとしては胸が躍る。

 しかし、この世界の人間としては、災厄そのものだ。


 ドラゴンの強さは伝説として語られている。

 あの「猛き猪」など比べものにならないだろう。

 ――とはいえ、これはゲームだ。

 必ず、攻略の道は用意されている。


「なんとかする方法はあるんですか?」


 俺の問いに、隊長はゆっくりと頷いた。


「ある。今ならば、だ」


 その一言で、場の空気が張り詰める。


「目覚めたばかりの今なら、聖域の力で弱っているうちに、聖域内部で致命的なダメージを与えられれば、再び長き眠りにつかせることができるだろう」


 討伐ではなく、再封印。

 言い方が違うだけで、やることは結局ひとつだ。

 ドラゴンを叩き伏せる。


「王都へはすでに早馬を出している。ただし、ことは簡単ではない。なにしろ聖域には制限がある。同時に内部へ入れるのは四人まで」


 ――四人。

 アップデート前にミコトさんが言っていた話とも合致する。


「しかも聖域の影響は挑む者にも及ぶ。内部では力が抑えられるのだ」


 条件は厳しい。

 それでも――きた!

 これだ。

 俺達が期待していたドラゴン戦!


 人数制限もレベル上限制限も、「聖域の力」という理屈で説明がつく。

 世界観も崩れない。

 むしろ、この状況そのものが物語になっている。


「この流れ……完全に私達が受ける展開だね。大当たりだよ、ショウ」

「……たまたまだよ」


 メイにそう答えながらも、内心では少し誇らしかった。

 俺は姿勢を正し、隊長に向き直る。


「隊長。その役目、俺達に任せてもらえませんか。レッドドラゴン『インフェルノ』――俺達が再び眠りにつかせてみせます」


 隊長の顔に、安堵の色が広がった。


「おお! 本当か! 君達ならそう言ってくれると信じていた! この役目を果たしてくれたなら、その功績を公にすることはできぬが、王家から褒賞と――『ドラゴンスレイヤー』の称号が贈られるだろう」

「――――!?」


 俺達の間に衝撃が走る。


「ドラゴンスレイヤー……」


 誰の呟きだったのかはわからない。

 称号――それは、特定の強敵を討った証として与えられる、名誉の印だ。

 ステータスに表示できる称号は、ただ一つ。だからこそ、誰もが、最も格好よく、希少な称号を、その一枠に掲げようとする。いくつも並べられるなら埋もれてしまうが、一つだけだからこそ、確実に見る者の目を引く。


 俺が今、掲げているのは『猛き猪ハンター』。あれを討って得たこの称号は、ささやかだが、俺の誇りだった。


 だが――

 『ドラゴンスレイヤー』。

 はっきり言って格が違う。

 作品によっては武器の名として使われることもあるが、アナザーワールドでは竜殺しの英雄に与えられる称号として実装されたようだ。

 その称号を掲げて王都を歩く自分の姿を、思わず思い描いてしまう。

 もっとも――インフェルノを倒せたら、の話だが。


「みんなでドラゴンを倒して、四人揃って『ドラゴンスレイヤー』の称号をつけて王都に帰ろうぜ」

「それはいいな」

「頑張りましょう!」

「お揃いか……悪くないな」


 その言葉に、全員の表情がさらに引き締まる。

 俺は固く拳を握りしめた。


「では、部下に聖域に繋がる洞窟まで案内させよう。彼についていってくれ」


 案内役の兵士が現れ、敬礼を一つ送ると、無言で歩き出す。

 俺達はその背を追い、砦の内部を進んだ。


 進む方向が出入口とは逆だと気づき、わずかに戸惑う。

 やがて兵士は、普段は開くことのない扉の前で立ち止まった。

 鍵が差し込まれ、重い音とともに扉が開く。

 その先に広がっていたのは、外からは見えない砦の裏手だった。


 さらに奥へ進むと、天然の岩肌に人工的な入口が組み込まれた洞窟が姿を現す。明らかに人の手で補強された重厚な扉が、聖域への境界を示していた。

 兵士はその前で振り返る。


「ここが聖域の入口になります。一度聖域に足を踏み入れ、外へ出れば、丸一日のあいだ再び踏み入ることはできません。ご注意ください」


 ボス戦フィールドは、パーティごとに個別生成される――つまり、サーバー負荷が大きい。

 だから一度出れば、次の挑戦は二十四時間後。

 負けてもやり直せる。途中で撤退も可能。

 ただし――その代償は時間だ。


「みんな、失敗したら次は明日になってしまう。最初から全力で行くぞ」

「わかっている!」

「私もそのつもりです!」

「アイテムを惜しむ気はない。安心しろ!」


 頼もしい声が背中を押す。

 俺は扉に手を触れた。

 視界にシステムメッセージが浮かび上がる。


【この先に入れるのは4人までです】

【レベルは41以上であっても40に固定されます】

【一度中に入ると再挑戦まで24時間が必要になります】

【中に入りますか はい/いいえ】


 みんなにも同じ表示が出ているはずだ。

 俺達は顔を見合わせ、同時に頷いた。

 ここで退く理由はない。

 全員が「はい」を選択すると、扉は音もなく開いた。


 中に広がる洞窟は自然の岩肌のままだが、壁面には不気味に輝くルーン文字が浮かび上がり、闇を淡く照らしている。

 奥から、かすかに熱を帯びた空気が流れてきた。

 それは、ただの洞窟の空気ではない。

 俺達は一歩、また一歩と聖域の奥へと進む。

 そして――


 洞窟の最深部で、俺達を待っていたのは圧倒的な存在だった。

 あの猛き猪をも超える巨体。

 四足のままで高さは五メートルを優に超え、頭から尾の先まで二十メートルにも達しようかという長さ。


 赤い鱗に覆われた首が、ゆっくりと持ち上がる。

 その動きだけで、洞窟の空気が震えた。

 その眼光が、俺達を捉える。


 ――レッドドラゴン「インフェルノ」。


 灼熱を具現化したかのような名を持つ存在が、そこにいた。


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― 新着の感想 ―
タイトル見て、某RPGのOPが頭の中で流れてしまったw
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