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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!  作者: グミ食べたい
第15章 タッグイベント編

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第275話 トドメ

 ルシフェルからヒールが飛び、残り少なくなっていた俺の体力がいくらか回復する。

 組立式重装砲にはリキャストこそなくても、再装填の時間が必要なのだろう。ヒール前に次弾が飛んできていたら危なかったが――これなら、もう一撃は耐えられる。


 ……それにしても、よく生き残れたものだ。


 ソルジャーを倒せたのは、完全にルシフェルのおかげだ。

 リミットスキル《精霊の三重奏スピリタル・トリニティ・オーケストラ》がなければ削り切れていない。


 だが――本来なら俺もソルジャーと一緒に倒れていたはずだ。

 ダメージログを見ても、ソルジャーの攻撃が低すぎる。

 ダモクレスの剣による追加ダメージを含めても、四人の中で断トツの最下位。最強アタッカーの一人が、そんな低火力であるはずがない。


 理由は一つ。

 ルシフェルが同時発動した三つの精霊魔法スキルのうち、《氷鎖の嘆罰フリーズ・バインド》と《黒凍の削牙ダーク・ブリットル》には、ダメージだけでなくデバフ効果があることだ。

 《フリーズ・バインド》は一定時間の攻撃力小ダウン。《ダーク・ブリットル》は次の攻撃の攻撃力大幅ダウン。その二つの効果が重なり、俺は命拾いしたというわけだ。

 ソルジャーも攻撃系のリミットスキルを使えば俺を倒せたかもしれないが、咄嗟に反応するのはさすがに無理だったのだろう。あるいは、そもそもリミットスキルが使用不能な状態だったのかもしれない。

 いずれにせよ――今の攻防のMVPは、間違いなくルシフェルだった。


 チラリとルシフェルを見ると、ほっとしたような表情を浮かべていた。

 きっと、自分の狙い通りになったことに満足しているのだろう。


 ……くそっ。自分こそが最強アタッカーだと、俺にもソルジャーにも見せつけて満足したってわけか。

 ここで、「私のおかげで命拾いしたな」なんて上から目線で言ってこようものなら、「俺が前で敵を引きつけたおかげで安全に戦えること忘れるな」と言い返してやるつもりだったが――


「――ショウが無事でよかった」

「――――!? いや、お前のおかげで助かった……」


 しまった……。完全に不意を突かれ、思わず本音で返してしまった。

 ……さすが策士ルシフェル。恐ろしい男だ。

 俺の思考の裏をかき、予想外の言葉で揺さぶってくるとは。


 密かに戦慄する俺。だが、いつまでもルシフェルにかまけている場合ではない。

 戦い自体はまだ終わっていないのだ。

 向こうには、まだ高火力を誇るメイが残っている。

 すぐにでもトドメを刺さなければ、大ダメージをもう一度食らうことになる――はずだった。

 だが、肝心のメイが手を上げ、戦う気がないことを示していた。


 残り数段を駆け上がり、監視台へ出る。

 メイとの距離は、わずか数メートル。


「……メイ、戦意を喪失したのか?」

「もうショウを倒せる可能性はなくなったからね。弾の無駄遣いはしたくない」


 メイはあっけらかんと言い放った。

 俺を油断させるための策――ではない。今のすっきりした表情を見れば分かる。

 メイの組立式重装砲は、一発撃つごとに弾を消費する。

 勝算がなく、ポイント獲得の望みもないなら、撃つ理由がない。

 ミコトさんのように最後まで拳を振るう美学もあるが――メイのように効率を優先して判断するのも一つの美学だ。

 俺はゆっくりと距離を詰め、攻撃可能範囲に入る。

 それでもメイは構えず、ただ美しく微笑んだ。


「ショウ……あんたの手でやってくれ」

「……メイ」


 どうせ倒されるのなら、仲間の手で――。

 その気持ちは理解できた。

 俺は静かに包丁を掲げ、スキルを発動して振り下ろす。

 一撃では倒れないため、淡々と攻撃を重ねる。


 ――メイの残り体力が100を切った。次の一撃で終わる。


 早く楽にしてやろう。そう思い、メイメッサーを振り上げ――しかし、そこで手が止まった。


「……どうした、ショウ? 早くトドメをさしてくれ」

「…………」


 だが、俺はこの手を振り下ろせなかった。


「……もしかして、自分の手では私を殺せないっていうのか?」

「…………」

「その気持ちは嬉しいが……それでも私はショウの手で――」


【ルシフェルがメイに零の嘆き(ラメント・ゼロ) ダメージ340】

【ルシフェルはメイを倒した】


 さっきまで穏やかな顔をしていたメイが、鬼のような形相で俺を睨んだまま崩れていく。

 少々罪悪感を覚えるが、これが俺達の戦略だ。仕方がない。

 ルシフェルも俺の動きを見て、意図を正しく汲み取ってくれたようだ。

 タッグ一覧のウィンドウを見ると、ルシフェルの名前の下に、ソルジャーとメイの撃破マークに加え、新たにスターが二つ増えている。どうやらメイは二個のスターを所持していたようだ。

 これで俺達のポイントは一気に「+5」。

 しかもスター三つはルシフェル側に集中している。万が一俺が落ちても、ルシフェルさえ生きていればスター三ポイントは守れる。


 ……よしよし、計算通り。


 そう内心でほくそ笑んだところで、チロリンと文字チャットが届いた。


『絶対殺す』


 差出人はメイ。

 「1stドラゴンスレイヤー」の件で、ルシフェルが俺達のギルド(特に俺)を目の仇にしているのは、ギルドのみんなも知っていることだ。当然メイもルシフェルにいい感情はないだろう。だからこそ、そんな相手に倒されるのはイヤで、俺にトドメを刺されることを望んでいたのだろうが……すまんな、メイ。

 誰が誰のトドメを刺すかというのも戦略の一つなんだ。


 それに、もう俺達がメイ達と再戦する理由もない。

 ルシフェルのリミットスキルなしでは、次に勝てる保証などどこにもない。スターを失った向こうと、スターを三つ抱えるこちら――もう戦う必要はないのだ。

 メイよ。残念だが――もう俺を殺すチャンスはない。がはははは。


 ……いや、待てよ。このチャット、ゲームの中の話、だよな?


 急に背筋に冷たいものが走り、思わず身を震わせた。


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― 新着の感想 ―
「殺したいほど……殺されたいほど愛してるのに……」と撮影でクマさんが来ない日を狙って部屋に来たりして((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
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