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ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!  作者: グミ食べたい
第15章 タッグイベント編

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第274話 ショウ&ルシフェル対ソルジャー&メイ

 俺は「狂気の仮面」を被り、ルシフェルへと静かにうなずいた。


「――いくぞ」

「ああ」


 俺達はソルジャー達の前へ姿を現す。

 前方には、監視台へ続く長い階段を背に仁王立ちするソルジャー。そのさらに上、監視台の縁にはメイがいる。メイの組立式重装砲の正確な射程まではわからないが、今ソルジャーがいる位置あたりがギリギリ届く距離だろう。

 ここでソルジャーが「ヒャッハー! 獲物発見!」とでも叫んで突っ込んできてくれれば話は早かった。しかし、そんな都合のいい展開があるわけもなく、奴は微動だにしないまま、こちらを真っ直ぐに見据えている。

 俺達はゆっくりと歩みを進めた。


「ルシフェル、一人ではどうにもならんと悟ってショウを連れてきたか! ようやく張り合いのある勝負ができそうだな!」


 戦闘可能範囲に入る前の距離にもかかわらず、ソルジャーの野太い声が響く。挑発か……いや、この男の場合はただの本音だろう。


「うるさい! 私とショウの――絆の力を見せてやる!」


 即座にルシフェルが言い返す。

 ……いや、絆って何だよ。いつ俺とお前の間にそんなものが生まれたんだ?

 だが、ソルジャーもメイも油断するタイプじゃない。なら、むしろ「こちらは完璧に連携している」と思わせておくのは悪くない。余計な警戒心は奴らの動きを鈍らせる可能性がある。

 そう判断し、俺は黙ったままさらに距離を詰める。


 あと少し。

 もう少し進めばルシフェルの精霊魔法が届く――そう思ったその瞬間。

 それまで仁王立ちしていたソルジャーが、ひょいと一歩だけこちらへ距離を詰める。そして即座に構えを取り、戦闘モードへ移行。次の瞬間には踵を返し、階段を上へ向かって全力疾走していた。


 ――しまった!


 ソルジャーが戦闘モードに入ったことで、監視台のメイも同時に戦闘行動が可能になる。間違いなく、あいつは今すぐ重装砲の組立を始めている。

 こんなことなら、俺達も最初から全力で距離を詰めるべきだった。


「――追うぞ!」


 言い終えるより早く駆け出す。ルシフェルもすぐ後ろに続いた。


「ソルジャーの奴、私のスキルの間合いを完璧に把握していたな」

「まじかよ……」


 HNMを巡って常に命を争ってきた相手だ。ソルジャーについては、俺よりルシフェルの方がはるかに詳しい。そのルシフェルがそう断言するなら、間違いない。

 自分が頻繁に使っているスキルならいざ知らず、そうでないスキルの射程をギリギリまで把握するなんて並大抵じゃない。俺だって大まかな距離はわかるが、数センチの差を読み切るなんて不可能だ。

 だがソルジャーはそれをやってのけた。

 ルシフェルが撃つより先に、自ら戦闘可能範囲へ踏み込み――そして即座に射程外まで逃れやがった。


「……さすが三大HNMのギルドマスター。あいつ、ただの脳筋じゃねぇな」


 ゲームの世界は広い。強者は尽きない。

 ――だからこそ、おもしろい!


 俺は狭い階段を、逃げるソルジャーの背を追って駆け上がる。

 こちらはソルジャーをターゲットにしているため、逃げる奴には移動補正が入っている。そのおかげで速度は俺達の方が上だ。いずれ確実に追いつく――だが、「いずれ」では遅すぎる。

 メイの組立式重装砲が完成する前に接敵しなければ意味がない。

 俺達が追いつくのが先か、メイの砲が完成するのが先か――


「くそっ! 縮まってはいる……が、まだ遠い!」


 ソルジャーの初動が完璧すぎたせいで、移動補正があっても接敵まで差が埋まらない。完全に時間稼ぎをされている形だ。

 ルシフェルの精霊魔法なら射程内だが、魔法系スキルは移動しながらでは使えない。撃つには一度足を止める必要がある。

 今止まれば、その一瞬で射程外に逃げられる恐れがある。

 そして何より、回復の隙を与えずに仕留めるには――俺とルシフェルの攻撃タイミングを合わせなければならない。

 今はまだ、撃つべき局面じゃない。


 ――それでも、ソルジャーの背中が近づいてくる。

 料理スキルは移動しながらでも発動可能。奴の背中が俺の包丁の範囲にまで入れば、攻撃を叩き込める。

 それに、階段の終わりがもう見えてきた。このまま監視台に到達すれば、ソルジャーを追う必要すらなく、組立中で動けないメイを狙えばいい。

 勝機が一気に目前へ転がり込んできた――

 そう思いかけたその瞬間、ソルジャーが踵を返し、こちらに向けて剣を構えた。


 逃走を諦めたか?

 ――いや違う。

 視線を横へ滑らせると、メイの前には組立式重装砲が完成していた。

 敵の準備が、整ってしまったのだ。


「――だったら、力と力の勝負だ!」


 先制で削れれば、あるいはメイの砲の完成前に戦えれば、と思っていたのは事実だ。だが正直、うまくいけばラッキー程度の期待でしかなかった。

 最初から、こうなる未来は半ば覚悟していた。

 だからこそ、俺は迷わず包丁を握る右手に力を込める。

 後ろではルシフェルも足を止め、万全の戦闘態勢に入っている。


 アタッカー四人による全力のファーストアタック――

 おそらく、ここで勝負の大半が決まる。

 前衛である俺とソルジャーに攻撃が集中するのは間違いない。

 俺の装備は後衛並み。一方ソルジャーは重装に見えて、攻撃を上げるため防御を犠牲にしているタイプだ。実質の防御力は低い。

 サーバー最強クラスの攻撃を二発も受ければ、どちらも沈むか、紙一重の体力が残るかの瀬戸際。

 ここを生き残った者が、この戦いの勝者だ。


 もし相撃ちで二人とも倒れるなら、あとはルシフェルとメイの勝負。

 その時俺は――ただの死体として結果を見届けることになる。

 だから――

 この一撃に、すべてを賭ける。


「――勝負だ、ソルジャー!」

「望むところだ!」


 俺が包丁を振り上げ、ソルジャーもまた剣を振り上げる。

 奴の剣には見覚えがあった。シアに渡したものと同じ「ダモクレスの剣」。つまりソルジャーも、キングダモクレスを撃破し、ロット勝負を制した一人――その証。

 包丁と剣とが交錯する――その前に、メッセージが流れた。


【ルシフェルはリミットスキル「精霊の三重奏スピリタル・トリニティ・オーケストラ」を使った】


 ――こ、これは! 精霊使いのリミットスキルの一つ!

 確か、それは三つの精霊魔法スキルの効果を同時発動する技だったはず。その分、SPも消費するため、狩りの場では使われることはほとんどないと言われているが――しかし、この戦いにおいてなら、この効果は強い!

 だけど、こんなイベントの一戦闘で大事なリミットスキルを使うか!? 一度使えば二十四時間は使えなくなるというのに!


蒼哭の鎮魂(ブルー・レクイエム)氷鎖の嘆罰(フリーズ・バインド)黒凍の削牙(ダーク・ブリットル)


 ルシフェルの力強い詠唱。その声に迷いは一片もない。

 おそらく咄嗟ではない。初めからここで使うつもりだったのだ。このイベント後、自分や仲間のプレイでどんな窮地が来ようと、リミットスキルは二十四時間使えないというのに。

 ルシフェル、何がお前にそうさせる!?

 ――だけど、その心意気、嫌いじゃない!


「みじん切り!」

血刃乱舞(ブラッディカーニバル)!」

「重装砲、ファイア!」


 俺とルシフェルの攻撃がソルジャーに、ソルジャーとメイの攻撃が俺に炸裂する。


【ショウはソルジャーにみじん切り 390ダメージ】

【ルシフェルはソルジャーに蒼哭の鎮魂(ブルー・レクイエム) ダメージ325】

【ルシフェルはソルジャーに氷鎖の嘆罰(フリーズ・バインド) ダメージ225】

【ルシフェルはソルジャーに黒凍の削牙(ダーク・ブリットル) ダメージ158】

【ソルジャーはショウに血刃乱舞(ブラッディカーニバル) ダメージ260】

【メイはショウに攻撃 410ダメージ】


 剣を振り下ろした姿勢のまま、目の前でソルジャーがゆっくり倒れていく。


【ルシフェルはソルジャーは倒した】


 自分の体力ゲージを確認する。


 ――残ってる!


 生き残ったのは、俺だ!


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