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第258話 追加要素は期待ハズレ?

 俺はしばらくのあいだ、出来上がった「ブレイクボーンステーキ」をただ見つめていた。

 ――だが、すぐに首を振る。


「まだだ。まだ諦めるのは早い。今のは一発目の試作品。組み合わせや確率次第では、モンスターをペット化できる料理とか、レアモンスターを引き寄せる料理なんてのができるかもしれない!」


 気合を入れ直し、再びモンスター用料理の作成に取りかかる。

 次に完成したのは「コールドスープ」。その効果は――


【この料理を設置すると、その匂いにつられてモンスターが近寄ってくる。この料理を食べたモンスターは火属性攻撃力が低下する。なお、戦闘中は使用不可】


「つ、使えねぇ……」


 思わず呟いたが、それでも手は止めなかった。

 俺はめげずに、ひたすらモンスター用料理を作り続けた。

 幸い、素材は山ほどある。試行回数ならいくらでも稼げる――これまで俺がどれだけ敵を狩ってきたと思っているんだ。


「サーバー一の料理人の力、見せてやる」


 ――などと気合を入れてみたものの、結局できあがる料理は、最初の二つと大差なかった。

 効果も「防御力ダウン」「攻撃力ダウン」「毒付与」あたりがまだマシ。

 「魔法防御力ダウン」や「氷耐性ダウン」「火属性攻撃力ダウン」なんてのは、物理攻撃主体のうちのパーティにはほとんど意味をなさない。

 俺が夢見たような「ペット化」や「レアモンスター誘引」なんて要素は、いくら作っても影も形も見えなかった。

 ――冷静に考えれば当然だ。ゲームバランスを壊しかねないような効果や、そもそも仕様にさえないような効果が、出てくるわけがない。

 キッチンの明かりが妙に眩しく感じられ、俺は深く息を吐いた。

 そのとき、不意にチャットの許可申請が飛んできた。


「……メイか」


 今日は俺もメイも、それぞれ追加要素を試す予定だった。

 彼女も今ごろ、自分の工房で黙々と検証しているはずだ。

 このタイミングで連絡が来たということは――きっと、新要素の報告だろう。

 俺はすぐに申請を受諾した。


『どうだい、ショウ。そっちの新要素の具合は?』

「まぁ……戦闘中に自由に使えるタイプじゃなかったけど、料理人らしいっちゃらしいかな。うまく使えば戦闘にも生きる――気が、しなくもない」


 ガッカリ感を悟られないように、わざと曖昧に答える。

 情けないネタ晴らしは、できればメイの内容を聞いてからにしたい。


『そうなのか。私のほうも……使いどころを選ぶ感じかなぁ』


 その一言に、ほんの少し肩の力が抜けた。

 本来なら仲間の強化は喜ぶべきことだ。けれど今は、同じくらい微妙な結果でいてくれるほうが、正直ありがたかった。

 ――我ながら、器が小さい。


「料理人にはもとから戦闘で使える料理スキルがあるし、鍛冶師は金が稼ぎやすくて、その金で戦闘用アイテムを買える。だから、全体のバランスを取るため、今回は運営から冷遇されたのかもしれないな」

『それはあるかもしれないな』

「……で、具体的にはどんな内容だったんだよ」


 お互いなかなか追加要素の内容に触れないため、俺のほうから切り込んだ。神要素なら、自分のほうから嬉々として話し出すだろう。メイもしょぼい内容だった可能性がさらに高まった気がする。


『……こういうのは、言葉で説明するより、見たほうが早いだろ? 私も実際に試してみたかったし、互いに見せ合わないか?』


 なるほど。

 お互いの微妙な新要素を持ち寄って笑い合おうってわけか。

 確かに、一人でため息をつくより、バカにし合ってるほうがずっと健全だ。


「そうだな。そうするか」

『決まりだな。ミコトとクマサンにも声をかけておくよ』

「……え、二人も呼ぶの?」

『ん? 何か問題でもあるのか?』

「いや……」


 二人が俺たちの新要素に期待してると思うと、少しだけ気が引ける。

 でも、いずれは見せることになる。

 だったら、今まとめて知ってもらったほうが、いっそ気楽かもしれない。


「……そうだな。二人にも見てもらったほうがいいかもな」

『よし、決まりだ。集合は――』


 こうして、俺とメイに追加された新要素のお披露目会が決まった。


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