43:エピローグ
アルノゥとレパンがミルレンシアに帰ってきて、数ヶ月が経った。
彼らは事情聴取を行った後、エルダと共に拘置所へと送られた。待遇はあくまでも人道的な扱いである。目的も、過酷な境遇から解放された事による精神的失調の回復や、西部諸国から身の安全を守るためといった意味合いが強い。カウンセリングも受けている。
面会も、手続きを踏めば許可されている。シンもそれで、休みのたびにエルダに会いに行っている。エルダに言わせればその気は無いらしいが、それでも本気で拒絶はしないあたり、満更でもないのではないかというのが、オルフの見立てだ。
そしてアルノゥは、そんな彼らの話を聞くと、不機嫌になる。「妹が欲しいと言うのなら、この俺を越えてからだ」などと言っている。
二人の両親には、身の安全の問題から、まだこの話は伝えられていない。また、事件の真相そのものも公表されていない。
公表されるとしたら、それはミルレンシア軍の再編、スパイの一掃。そういった西部諸国に対抗出来るだけの体制が整ってからということになる。だがこれも、あと数年以内には片付くだろうと見積もられている。
アルノゥやレパンの故郷に住み着いた、潜伏工作員と思われる人物は、既に姿を消している。エルダが合流するはずだった場所にも、誰もいなかった。
オットについては、刑は確定していないが、逃亡の危険性も無いということから、監視付きで保釈されている。娘も、少しずつ何かいい方に変わっていっているように見えると、彼は言っていた。逆に、モルト達はまだメルテナの空軍基地にいる。西部諸国の動向を考え、オットが刑に服するようになるのも、モルト達が故郷に戻るのも、西部諸国に対する体制が整ってからになるだろう。
オーエンは、モルト達と共に新型ブリッツ・シュヴァルベの更なる改良に精を出している。オルフはテストパイロットをしていて、着実に性能を上げていると実感している。
ハクレ、トキマ、カイは既に彼らの日常へと戻っていった。
そして今、オルフとレルヒィはシュペリの墓前に立っていた。夏も終わろうとしていたが、今もなお強く照りつける日差しの中で彼らは目を瞑り、祈りを捧げる。
事件の真相が明らかとなったことで、シュペリの遺体と遺品はレルヒィへと返却された。
慎ましやかに葬儀は行われ、家族と共に彼は眠ることになった。
オルフは、目を開けた。
隣に立つレルヒィに目を向けると、彼女も少し遅れて目を開き、こちらを見詰めてきた。
「行こうか」
「はい」
彼女は微笑んで、頷いてきた。彼らは踵を返す。
「本当に、ありがとうございます。オルフさん達のおかげで、私は兄さんに、お帰りなさいと、ごめんなさいを言えるようになったと思います」
「いや、俺もただ、中尉の恩に報いたかっただけだから」
少し歩いて、オルフは空を見上げながら口を開く。
「でも、こんな事を言うと、少し気恥ずかしいけれど。こうして、中尉に手を合わせたら、俺もあの人が何を望んでいたのか少し分かった気がする」
「兄さんは、何て?」
「レルヒィを守って欲しい。この国を守って欲しいと。そう言われた気がする。同時に、未熟な自分は叱咤されたような。そんな気がした」
そう言ってオルフが照れくさそうに笑うと。レルヒィもまた、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
あと1話だけ続きます。




