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14:技術者の目

 オルフ達はオーエンを連れて、空軍基地へと戻った。

 掴まえて、有無を言わさず車へと押し込むと悲鳴を上げて暴れていたものの、道すがらに事情を説明すると大分大人しくなった。顔は青ざめたままで、信用しきれないと言わんばかりの態度だったが。

 実際に空軍基地に着き、倉庫へと案内すると、ようやく彼の顔色も良くなってきた。


「どうやら、あんたらの言っていたことは本当のようだな。信じるよ。ったく、乱暴な真似しやがって。寿命が二十年は縮んだぜ」

「それについては、悪いと思う。こっちも形振り構っていられない事情があったんだ」

「それに、最初から正直に説明して、素直に信じるようにも思えなかった。家の外観や、居留守を使うあたり、羽振りが良さそうにも思えなかったんでな?」

 カイが続けるとオーエンは嘆息した。


「まあな。実際、ヤバい筋からも金は借りてしまってる。否定はしねえよ」

 だから、甘言を弄した誘いだと疑われても仕方ないだろうし、その疑心を解くのにも時間はかけていられない。

「つまり? 俺にミルレンシアの次期戦闘機を設計して欲しいというのは、本当なんだな?」

「ああ、本当だ。頼まれてくれるか?」

「勿論だ」

 オルフが訊くと、オーエンは白い歯を見せ、身震いした。見た目からして、年齢は四十手前というぐらいだろう。だが、その目は、夢を叶えた駄々っ子のように、オルフには思えた、


「だが、その前に見て欲しいものがある」

「分かっている。ここが、そうなんだな?」

 倉庫の中で、残骸となった機体をオーエンは眺める。

「――とはいえ、俺はあくまでもしがない設計技術者だぜ? 鑑識みたいな真似が出来るとは期待しないでくれよ?」


「分かっている。それでも、何か気付いたことがあればと思って見て貰っている。そうだな、例えば戦時中の当時のブリッツ・シュヴァルベと、何か違うところは?」

「パッと見ただけでは、何とも言えねえな」

 ツナギのポケットに手を突っ込んだまま、オーエンは機体の周囲をゆっくりと歩いて行く。

 機体は空戦競技チャンピオン襲撃事件の直後、墜落してバラバラになっていた。それが更に分解されて、捌かれた魚の切り身のように並べられている。


「オルフと言ったな? 君はどう思った?」

 オルフは首を横に振った。

「俺も、既に訊かれた。しかし、これといった違和感は感じない」

「そうか。俺はバラバラになったこいつの元の姿をイメージしているが。当時のブリッツ・シュヴァルベに限りなくよく似た別物だと感じた」


「何故?」

「生憎と、口で説明出来るものは何も無い。職人の勘だとしか言いようが無い。強いて挙げれば、部品が不揃いに感じるとか、そんな話だ」

 それだけ言って、しばしオーエンは押し黙った。


「この機体をどうやって用意したのかっていうのは。例の襲撃犯の協力者達はどう答えているんだ?」

「彼らの地元の町にある小さな整備工場で組み立てていたそうだ。必要な部品は中尉が説明して、それを元に用意して組み上げたそうだ。エンジンだけは、中尉がどこからか用意したらしい」

「つまり、ほぼ零から組み上げたっていう訳か?」

「そう言っている」


「そうか、なら一応は辻褄が合うな。部品がどうも、四年前に造られたとしたら保存状態が良すぎるし、ところどころ不揃いなのもそういうことか」

 納得したと、オーエンは頷く。

 続いて、オーエンは壊れたエンジンの前に立った。

 その瞬間、彼の表情が強張るのをオルフは見逃さなかった。


「どうかしたのか?」

「ん? ああ? いや、何でもない。こいつをこの機体は載せていたのか?」

「そうだ。何か分かるか?」

「いいや? ただ、そうだな。このエンジン、今はぶっ壊れているが、動いているときは、間違いなく良いエンジンだったんだろうなって、そう思っただけだ」


 それだけ言って、オーエンは踵を返した。

 その背中を目で追いながら、この男は嘘が下手だとオルフは感じた。ちらりと横目でカイを眺め、彼もまた黙ってはいるものの、鋭く目を細めていることから。同じ事を考えているのだろう。そう、オルフは思った。

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