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中編


 そのあと、フィルは思ったよりも早くわたしを解放してくれた。ゆっくりと地面に足が触れた瞬間には、ユリウスに手首を掴まれて。引きずられるように、今は村に向かって歩いている。


「……考えさせてって、なんだよ」


 ユリウスの不機嫌そうな声が響く。


「愛し子になんかなって、魔物退治でもするつもりか」

「……そんなんじゃない」


 たしかに、魔物を浄化する力があればいいかもしれない、とは思った。聖女様のおかげで魔物は減っていくだろうけど、村が襲われないとは言い切れないからだ。もしそうなったときに、わたしが守れたらいいなとも思った。でも、それだけじゃなくて。


「……すごく真剣な顔、してたから」


 信仰が薄れて、精霊は力がなくなったと言っていた。それは逆に言うと、精霊を想う誰かがいれば、彼らは力を失わないということ。


 おばあちゃんと毎日通ったあの森が好きだ。おばあちゃんが死んじゃってからも、毎日通い続けた大事な場所。そこに暮らす精霊たちの、フィルの力になれるなら、それもいいかもしれないと思ったのだ。


(……だって、きっとユリウスは、聖女様との結婚を受けるつもりだもの)


 ユリウスの足が止まる。振り返ったかと思えば、わたしの手首を掴む力が強くなった。


「ちょっと、痛い……!」

「真剣な顔ってなんだよ! 真剣な顔してたら、お前は誰にでも簡単に絆されるのか!」

「そんなこと言ってない!」


 腕を強く引いたら、ユリウスは案外簡単に手を放した。わたしを傷付けたいわけじゃないんだってわかる。わかるのに、どうしてうまくいかないんだろう。


「……ユリウスだって、お金があるなら誰でもいいの?」

「……そんなこと」

「それとも、聖女様は本当に可愛かった?」


 嫌な言い方をしている、という自覚はある。みじめで泣きたくなったけど、目を逸らしたユリウスが「そうかもな」と答えるのを聞いたら、体がすうっと冷えていって涙も引っ込んだ。


 親父のためだ、という言葉の意味を考える。きっと、聖女様と結婚したら莫大な持参金が手に入るんだろう。


久しぶりにこの世界に現れた聖女様は、魔物対応のために今はあちこちの街を転々としているけれど、ある程度落ち着いたら歴代と同じように王都に住むはずだ。一番に守るべきは王族なのだから、それは当然のこと。だから実際にはユリウスが婿に行くようなもので、聖女様側からの持参金なんてないのかもしれない。けど、ユリウスがお父さんのためだと言う理由が、お金以外に思い浮かばなかった。婿に行けば少なくとも食い扶持は減るし、息子が聖女様の婿になったとなれば、お父さんも王都でいい生活ができるのかもしれない。


「……明日も森、行くのか」

「……行くよ。日課だもの」

「一人で行くなよ。絶対に声かけろ」

「かけなくても気付くじゃない。お隣なんだから」


 どちらからともなく再び歩き始めて、気が付けば家の前だった。お隣なのに、自分の家の方が手前にあるのに、ユリウスはわたしの家の前まで来てくれた。


「じゃあ」

「うん」


 また明日、と屈託なく笑い合えていたころが恋しかった。





「……行くか」

「……うん」


 森に行くのは決まっていつも夕方だ。お店が暇になる時間だから……と言っても、ほとんど村の人しか来ない店だから、そもそも忙しい時間もあまりないけれど。秋の収穫が終わった今の時期は、ユリウスも時間があるみたいだった。


 道中はずっと無言だった。早く着いてとしきりに足を動かして踏み入った森は、やっぱり少しだけ息がしやすい。


「……あれ」

「どうした」

「ハンカチ、ない」


 いつもは前日のハンカチを回収してから新しいものを敷くのだけれど、今日はそれがなかった。


「風で飛ばされたんじゃないのか」

「今まで一度もそんなことなかったのに……」


 首を傾げながら新しいハンカチを広げようとすると、昨日と同じように突風が吹いた。


「きゃあ!」

「っくそ、アンナ!」


 ユリウスの舌打ちが聞こえて目を開けると、これまた昨日と同じようにフィルの腕の中にいた。


「フィル!」

「よっ。待ってたぜ」


 昨日ぶりに見た顔はやっぱり人間とは違う美しさで、反射的に顔が赤くなる。


「アンナを放せよ!」

「なんだ? お前もまた来たのか」

「当たり前だ!」

「どうして?」

「ど、どうしてって」


 少し口ごもってから、ユリウスは「どうしてもだよ」と答えた。フィルは「ふうん」と溢してくすくす笑う。


「まあいい。アンナ、ハンカチなら、ほら」


 フィルがぱちんと指を鳴らすと、光の玉が現れた。まるでその光が持っているみたいに、傍にハンカチが浮いている。


「川の水で洗って乾かしておいた」

「あ、ありがとう」

「今日のパンは?」

「えっと、くるみパン……昨日のよりは美味しくできたと思うんだけど」

「おー、美味そうだな」


 受け取ったハンカチの代わりにバスケットからパンを取り出すと、目の前のフィルが口を開けていた。


「ん!」

「ええ? 自分で食べれば……」

「いいから、早く」

「しょうがないなぁ」


 わたしが差し出したパンに、フィルはぱくりと食い付いた。


「うん、美味い」

「ふふ、ありがとう」


 美味しいと言ってもらえるのは、素直にうれしかった。ねだられるがままもう一口差し出していると、下から不機嫌な声がする。


「無視するな!」

「ああ、忘れてた」

「~っ、忘れるな!!」


 大きな声を出すユリウスと、聞こえないとばかりに顔を背けるフィル。子供の喧嘩みたいで、なんだか少し可愛い。


「……ユリウスも食べる?」

「た、……食べる」


 いらないって言うかと思ったのに。


「フィル、下ろして」

「ええ~」

「それが嫌ならユリウスも浮かせて」

「もっと嫌」


 べえ、と舌を出したフィルに笑ってしまいながら、ゆっくりと地上に下りる。パンを差し出すと、ユリウスは素直に受け取った。


「……アンナのパン、久しぶりだな」

「うそ、毎日うちのパンでしょ」

「お前んちのパンだけど、アンナが作ったやつじゃないだろ」


 たしかに、お店に出しているのは両親が作ったパンだけだ。わたしが作っているのは家で食べる分とここにお供えする分だけで、……パンを作り始めたころはよく、試食してとユリウスに渡していたけれど。


 ユリウスがパンを食べるのを、ただじっと見ている。


「……美味いよ。上手になった」

「……そっか。ありがとう」


 少しぎこちないけれど、素直な言葉には素直に返事ができた。ユリウスは「ん」と小さく頷いて残りのパンを食べている。


 ふと顔を上げれば、わたしの身長ふたつ分くらいまで浮いたフィルが、パンをちぎって小さな精霊様たちに渡していた。光の玉に飲み込まれるように、パンの欠片が次々と消えてなくなる。


「……みんなの口にも合ったかな」

「美味いってさ」


 音もなく近付いてきたフィルが、わたしの口にもちぎったパンを差し出してきた。


「ほら」

「んっ、……うん、上出来かも」


 咀嚼して飲み込んで、その出来に満足していると、また口元に差し出されるパン。今度はユリウスからだった。


「……ん」

「えっ」


 困惑していると、上から「男の嫉妬は醜いなあ」と聞こえてくる。し、嫉妬……?


「うるさい! ほら、早く」

「う、うん」


 わずかに目元を赤らめたユリウスの手からパンを食べる。思ったよりも大きくて口いっぱいにもごもごしていると、ユリウスが「リスみたいだな」って笑った。


 こんなふうに自然な笑顔を向けられるのはいつぶりだろう。胸がきゅうっと締め付けられる。


 どきどきと跳ね上がった心拍数を誤魔化すように声を上げた。


「そっ、そういえば! この小さい精霊様たちは、男の子? それとも女の子?」


 子供のような笑い声を思い出しながら問いかけると、フィルはなんでもないことのように答えた。


「精霊に性別はないぞ」

「えっ!? でもフィルは男の人の姿、だよね」

「まあ、便宜上はな」

「便宜上……?」

「この方が口説きやすいだろうと思って」


 な、と笑いながら、フィルがぐいっと顔を近付けてきたので思わず背中を反らす。きゅ、急に近付くのはやめてほしい……。心臓を落ち着けるために話を振ったのに、なんにも落ち着かない。


「近い!」


 ユリウスに腕を引かれて一歩下がった。彼はフィルを睨んでいるから気付いてないみたいだけど、この体勢ならユリウスだって十分近い。本当に心臓が落ち着かない。


 噛みつきそうな勢いのユリウスを見て、フィルはわざとらしく肩を竦める。


「別に美女の姿にだってなろうと思えばなれるが、こいつに惚れられたら困るしなあ」

「誰が誰に惚れるんだ!」

「お前が、俺に」

「ねえよ!」

「おーおー、じゃあ一度なってみてやろう。どんなのが好みだ、言ってみろ」

「言うかよ!」

「言えないような趣味か?」

「はあっ!?」


 …………お、幼馴染と精霊様が、言い争いしてる……。


 ありえない状況だけど、なぜだろう。テンポのいいやりとりに、少し楽しくなってきた。


「ふ、ふふ……っ!」

「「アンナ?」」


 二人の声が重なって、もう駄目だった。大きな声で笑い始めてしまった私を見て、二人ともがぽかんとする。


「あは、あはは……っ! ふ、二人とも子供みたい」

「はあ!? アンナの方が年下だろ!」

「二か月だけね」

「ユリウス、二か月で年上ぶるなら俺にはもっと敬意を払え。何百歳年上かわからんが」

「断る!」

「ちょっともう、やめてよ。笑いすぎてお腹痛くなっちゃう!」


 笑いが止まらなくなったわたしを見て、やがてユリウスがふっと表情を緩めた。ああ、わたしの好きな顔だ。


「アンナは美女の姿になった俺、見たくないか?」

「ちょっと興味あるかも」

「やめろよ、絶対になるなよ見たくない」


 にやつくフィルに悪乗りして、それにまたユリウスが怒って。たくさん笑っているうちに、あっという間に日が暮れ始めた。冬が近付き、近ごろは夜が来るのが早い。


「大変、そろそろ帰らないと。フィル、明日も来るからね」

「おう、アンナだけでいいぞ」

「俺も来るんだよ!」


 じゃあな、とフィルに背を向けてユリウスが歩き出す。その前にしっかりとわたしの手を握って。


(……手首じゃ、ない)


 気付かれないくらいの力で握り返す。今日は、懐かしくてうれしいことばっかりだった。





 それから三日が過ぎた。わたしはもちろん毎日森に行ったし、ユリウスはついてきた。フィルはわたしには優しく、ユリウスには意地悪で。昔からの腐れ縁みたいに口喧嘩をしたり軽口を叩き合ったりする二人を見ているのは楽しかった。


 なにより、日を重ねるにつれユリウスと自然に話せるようになっていくのがうれしかった。ユリウスは、フィル相手にはすぐに怒って騒ぐけど、それを見て笑うわたしにはあんまり怒らなかった。仕方ないなって呆れたような優しい顔が、やっぱり好きだと思う。


 それから、ユリウスは三日間、毎日手を引いて家の前まで送ってくれた。日を追うごとに少しずつ握り返す力を強くしているけれど、気付いていないのかなんにも言わない。


「アンナ」

「なあに?」


 三日目の帰り。さあ手を離して家に入ろうというところで、ユリウスがわたしを呼んだ。繋ぐ手に少し力が入っている。


「……明日はいっしょに、行けない」

「……そっか。わかった」


 どうして、とは聞けなかった。ユリウスはなにか言いたげに口を開いたけど、結局なにも言わずに閉じた。


お前も行くなって、言おうとしてくれたのかな。フィルに怒るユリウスを見ていると、嫉妬してくれてるのかなって少しうれしくなってしまう。あまりよくない感情なんだろうけど。


「気を付けろよ。あいつになにかされそうになったら大声で叫べ」

「森から?」

「アンナの大声なら聞こえる」

「もう!」


 少し重くなった空気も、軽口を叩けばましになる。こういう関係に戻れたのは、よかった。


「じゃあな」

「うん。……送ってくれて、ありがとう」


 おう、と笑って手を離したユリウスは、また優しい顔をしていた。





 翌日の午後。いつもよりは少し早めの時間に、森へ向かって歩き出す。ユリウスの家の前には、一週間ぶりに豪華な馬車が停まっている。


(……返事の催促、とかかな)


 ユリウスはこの一週間、なにを考えていたんだろう。今日は、どんな返事をするんだろう。ここ数日で改善された今の関係なら、素直に聞けるかもしれない。でも、聞くのは怖い。


 俯きがちに歩いていると、あっという間にフィルがいる大樹にたどり着く。


「フィル、来たよ」

「おお、今日はアンナだけか」

「ふふ。ユリウスがいなくて寂しい?」

「まさか」


 今日も突風とともに現れたフィルはいつも通り軽口を返してきたけど、わたしの顔をじっと見るなり真剣な表情をした。


「なにかあったか?」

「え?」

「寂しいのは君の方だろう」


 そう言うと、またふわっと風が吹く。ここ数日で足元が掬われる感覚にも少しは慣れたけど、今日は一段と高く浮いた。


「わ、わあっ! フィル、高い……!」

「ははっ、まだまだ!」


 怖くて手を伸ばすと、フィルが近付いてそっと抱き締めてくれる。そのまま上昇し続けて、わたしたちはやがて太い枝の上に腰を下ろした。木の天辺というわけではないけれど、落ちたら無事では済まない高さ。怖くないわけではないのに、いつもより一層空気が澄んでいる気がして心が落ち着いた。


「すごい……」

「寝るには最適だろ」

「フィルがいないと登れないよ」

「いつもいるさ」


 フィルは、なにを聞いてくるわけでもなかった。それが心地よくてしばらく黙っていたけれど、やがてわたしの口は自然に動き出す。


「……ユリウスね、聖女様に求婚されてるんだって」

「ああ。最初にそんなようなことで言い争ってたな。なんだって聖女に求婚なんかされたんだ」

「詳しくは知らないけど、街に行ったときに迷子の聖女様を助けたみたいなの」

「ふうん」


 うちは辺鄙な村だから、月に一回程度、村のみんなを代表して数人が街まで買い出しに行く。その少ない機会で、魔物退治のためあちこちの街を転々としている聖女様と出会ったのだ。十分に運命なのかもしれない。


「……ユリウスのお父さんは、ほんとのお父さんじゃないの」


 隣のフィルが返事をしないのをいいことに、独り言みたいに話し続ける。


「ユリウスのお母さんは、昔どこかのお屋敷でメイドをしてたんだって。そこの旦那様に乱暴されてできたのがユリウスで……。『命に罪はないから』ってユリウスを産んだけど、奥様に酷い目にあわされるようになって、逃げるようにやってきたのがこの村だった。そこで今のお父さんに出会って結婚したの」


 村に住む大人はみんな知ってる話だった。けど、ユリウスがそれを知ったのはお母さんが亡くなる直前。あれはたしか十歳のときだった。ユリウスから聞くまで、わたしもまったく知らなくて。ユリウスとお父さんは髪の色が同じだし、ユリウスは本当にお父さんが大好きだったから、疑いすらしなかった。


 ユリウスが泣いているのを見たのはその日が最後だった。わたしにだけ、泣きながら「本当のお父さんじゃなかった」と言ったユリウスは、数週間後のお葬式でも泣いていなかった。棺桶を睨むようにして涙を堪えていたのを覚えている。


 思えば、ユリウスが上手く感情を表に出さなくなったのはあのころからだ。無邪気に笑うことが減り、特にわたしには少しつっけんどんな言い方をするようになった。それが大人びて見えて、寂しかったような気もする。


「……ユリウスは、聖女様と結婚することでお父さんに楽させてあげたいんだと思う。本当のお父さんじゃなくても、血が繋がってなくても、大好きだから」


 ユリウスのお父さんだってそれに気付いていそうだけど、……おじさんは職人気質で無口な人だからなあ。わたしとユリウス以上に、上手くコミュニケーションが取れていないのかもしれない。


「人間ってのは面倒だなあ」


 ようやく口を開いたフィルがそんなことを言う。


「どうして?」

「俺たち精霊が愛するのは魂だ。それが男でも女でも動物でも関係ない。でも人間は違うだろ。姿かたちやら関係性やらで愛せたり愛せなかったり、愛しているのに言えなかったりする」


 なるほど、そう言われてみると面倒かもしれない。


「ねえ、魂を愛するってどんな感じ?」

「説明は難しいな……。しいて言うなら、なにがあっても、なにをされても好きだと思う、みたいな……?」

「嫌なことをされても?」

「そうだよ」


 わたしの感覚だと、それってなんだか変な気がする。嫌なことをされたら嫌いになるものじゃないかなあ。


「まあ、魂っていうのは積み重ねだからな。無垢な魂がそう在るのには理由がある。そうでなくなるのにも理由がある」

「嫌なことをしてきたなら、それにも理由があるかもしれないってこと?」

「まあそんな感じだ」


 ……そう考えると、少しわかるかもしれない。わたしだって、いくら喧嘩してもユリウスを嫌いになれない。嫌なことを言われても、なにか理由があるのかもって考える。根は優しいユリウスのままなんじゃないかって思う。それは、手を繋いで歩いていた毎日の積み重ね。


「フィルは、わたしの魂を愛してるの?」

「そうだと言ったら?」

「わたしがずーっとユリウスのこと好きでも、愛し子にする?」

「なんだ、堂々と二股宣言か」

「違うよ。両立するのかなって純粋な疑問」

「するかしないかでいえばするけどな」

「そっか、残念」


 断り文句には使えないらしい。


「俺じゃなくて、君が両立しないんだと素直に言っていいんだよ」

「……うん、ごめんね」


 わたしはやっぱり、ユリウスが好きだ。少なくとも今はまだ。彼が聖女様を選んでも、きっとずっと。


 よく転ぶわたしの手を引いてくれた。美味しくできなかったパンを食べ切ってくれた。どんなに喧嘩した次の日でも、森へ行くわたしに気付いたら畑仕事の手を止めて「気を付けろよ」って言ってくれた。わたしが家に入るのを確認してから自分も家に戻ってるって、気付いてる。ユリウスのそういうところが、ずうっと好きだと思う。こんな気持ちのまま、フィルの愛し子にはなれない。


 フィルと話していると、自分の心に素直になれる気がする。恋心を改めて自覚すると、涙が溢れて止まらなくなった。


「帰りたく、ないなぁ……」

「俺と離れがたいからだって言ってくれよ」

「っあはは、……ごめんね」


 いつも通りの明るい口調で話してくれるのがありがたかった。わたしが泣き止むまでずっと、優しい風が涙を掬い続けてくれた。


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