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路地裏に猫

次の集合時間は明日の朝だ。ホテル前に行き、上海の隣であり、中国随一の景勝地・西湖のほとりの杭州に向かう予定であった。そのため夜までフリーとなるこの上海旅行。見知らぬ街並みにテンションの上がっていた俺はいつの間にか昼に出会った少女の忠告など忘れてしまっていた。


 一人で街を散策している中、側からちりん、ちりん、と鈴の音が聞こえてきた。がやがやとした街並みにそぐわないその音に関心を持ってしまった俺は足を止める。建物と建物の間に小さな路地があり、そこには毛並みの美しい三毛猫が存在していた。漫画で見た中華マフィアが隠れてそうな路地と、美しい三毛猫が非日常感を醸し出していて、俺はカメラを構える。


 はいちーず、とシャッターを切ろうとしたその時、ちりんちりんと音を鳴らして猫が路地裏の奥へと引っ込んでしまった。ここで諦めておけば良かったものの、ジャーナリスト魂が燃え上がり(ジャーナリストは常にスクープを求めているもの)、俺はその路地裏へと足を踏み入れた。

 三毛猫は路地裏の中で唯一日の当たる場所で寝転んでおり俺は念願の写真を収めることができた。嬉しさでカメラを見返していれば、ぽんぽんと誰かに肩を叩かれる。


「ハーイ」

「……はろー?」


 そこには金髪にマスクをした青年が立っていた。すらりとした足の長さはアクション俳優のようで、どこか威圧感を感じさせる。俺が返事をすれば、ニコニコと瞳を細めて何やら中国語で話しかけられる。内容が一切分からず「あの、ぱーどぅん?」と死語を使っていたがそれも無視され、ぐいぐいの何かが入った紙袋を押し付けられた。は、と口に出した時に見えたのはグッドマークを立てて走り去った青年の後ろ姿。


「は、おい!なんだよ!?」


 遠くなる彼に声をかけるがそれも虚しく地に落ちた。


「やべぇ…俺の全細胞が危険だって叫んでる…」


 だからと言ってここに捨て置いておくのも怖い。どうするべきかと迷っていればドタドタと慌ただしい足音が路地裏に響き渡る。こんな狭い路地裏で走る音など嫌な予感しかせずにそちらを向くと、見るからにやばそうな男達が数人でかけてくるのが見えた。はぁ…と小声で悲鳴をあげて壁と一体化するように背をつける。


 走り去っていく彼らを見送っていれば、その中の一人と目が合った。

 そして私の手に抱えられた紙袋を指さし、仲間に何かを囁く。リーダー格にも見える男が激昂した様子で近づいてくるので、俺は本能的に駆け出した。

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