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まるで世界にたった一人取り残されてしまったかのような孤独感に襲われる。また、誰かに襲われたらどうしようと…自分から外出することを望んだはずなのに怖くって一歩もその場から踏み出せない。お守りにもならないスマホを握りしめてキョロキョロと周りを見渡す。周りの景色は茜色に染まる街並みだけで、


「…る、るゔぃ……」


 か細い俺の声だけが街に溶け込み、消えていく。


「ん、呼んだぁ?」


 背後から緩い声が聞こえて勢いよく振り返る。そこには何やら大きな紙袋を抱えたルヴィがいた。安堵から涙目になり彼女の肩を叩けば、えっと声を出すルヴィ。


「ルヴィ…!どこ行ってたんだよっ!」

「あはは、すまんすまん。ほらせっかくの上海観光やん?袍着るとかどう?」

「……は?」

「これな、そこの店のおばちゃんがオニーサンに、って」


 薄暗い店内から顔を出していた店主がこちらにむけて手を振る。俺がそんな彼っに会釈しているうちに、ルヴィはゴソゴソと紙袋から何かを取り出す。ゆっくりと取り出されたのは繊細な刺繍の入った真っ赤な袍。


「オニーサン。私服地味やし、今日ぐらいはパァっと行こうや!ここら辺観光客多いし、かえって目立たんで?」

「いや、変じゃないか…?」


 黄金の龍の刺繍を見つめながらポツリと呟く。彼女はニコニコと笑うばかりだ。


「オニーサンには似合うと思うけど」


 結局反対意見は聞いていないらしい。彼女は袍を貰った店に入ると試着室に俺を押し込めた。店主の顔はなんだか下劣な視線が混じっていていい気はしない。それに店の中はV袍を着た男の写真が大量に貼られていて、どれもこれも美しく撮れている割に気味が悪かった。個人情報を流失させないためか目元は黒い線で加工されていて、いかがわしいことでもさせる気みたいだったのだ。


 そして古びた試着室は今にも消えそうな電球がジーっと音を立てている。

 ………そう、音を立てているのだ。


「………何で鏡の裏から音がすんだよ…これ」


 自分の頭より高い位置から漏れている音かと思いきやどうやら違うらしい。店内の音楽にかき消されそうなほど小さな音であったがそれは確かに鏡の裏から聞こえていた。そんなわけないと思いつつ鏡に手を伸ばす。ヒヤリと冷たい鏡は、意外に軽くて…下着姿をしたまま俺はそれを取り外した。

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