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空に朱がかかる

「お待たせ」


 冬萬が身なりを整え、しばらく経ち顔を出したのはルヴィであった。


「ん…?」


 彼女の後ろには自身が想像していた屈強な男共はいない。扉の前に立っていたのは、ルヴィただ一人である。


「…なぁ…護衛は?」


 彼女はニコニコと人の良さそうな好青年の笑みを浮かべて、自身の顔に人差し指を向ける。


「アタシやけど」

「……は?」

「アタシやけど」

「……いや、なんで?」

「何でって、アタシが一番強いし」


 じぃと彼女を見やる。どこからどう見ても芸能人並みのもやし体型だ。確かに抱かれた時意外に筋肉がついていた気もしなくはないが、まだ幼い彼女が屈強な男より強いとは思えないのだ。信じていない俺を悟ってか、彼女は喉を鳴らす。


「見た目で騙されたらあかんよ。オニーサン。」


 そして俺の耳にぶら下がるピアスを優しく撫でる。何だかその触り方が厭らしくて、うっと一歩後退する。


「それに、たまにはアタシも羽を伸ばしたいねん。付き合ってや」


 ぐぐ、と背伸びをして彼女はこちらに手を差し出す。


「…最高の観光ツアーにしてくれよ」


 天使のように美しい女の笑みに敵う男はいないだろう。諦め半分、好奇心半分の気持ちだけで、俺は彼女の手を取った。


.

..

...


 ルヴィと街中を歩くことに大きな違和感を持ちつつ、穏やかな時間を過ごすことができた。彼女の御用達というアイスクリーム屋さんはインスタ映え間違いなしの可愛らしい店舗であったし、本場の中華料理は頰が落ちるほどに美味しい。昨日あったことが夢だったみたいに平和な日常。


 俺はスマホをルヴィに渡して自身が映った写真を母さんと茴に送ってやった。

ちょうど仕事が終わったのか、平日なのにも関わらず茴から即座に返信がくる。



命あるだけ上等ね。



冬萬

久しぶりに楽しんでる



家に帰るまで気を付けなさいよ



冬萬

おう。



一つ聞きたいんだけど、その写真自分で撮ったの?



冬萬

撮ってもらったんだが



騙されて身ぐるみ剥がされないように




 茴は心配性だな....とスマホを何気なしにスクロールしていると、ふと隣に居たはずの存在がいないことに気がついた。


 空に茜色が差し掛かる。

 もう、日は暮れ出していた。

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