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変わり者

フユカの首を締めたい気持ちをなんとか押さえつけて朝食を食べ終えた。


「もう、いいわ。それで俺はいつになったら帰れるんだ?」

「いいんだ。トウマちゃんって思ってたよりも男前だよねぇ〜。私、男前な人好きよ♡」

「そういうのいいから、早く答えてくれ」

「あれー? 普通なら落ちるはずなんだけどぉ。……って言ってもトウマちゃんの安全のためなの。」

「安全とは」


 フユカは扉の前に立ち、カチャリと鍵を閉める。


「…もうお分かりだと思うけど、ここは堅気じゃない。トウマちゃんはそんな世界に足を踏み入れてちゃったのよ。それは分かる?」


 子供に言い聞かせるように優しい言い方に反論の余地もなく頷く。


「…あぁ」

「トウマちゃんがとある男に渡された紙袋があったでしょ。あれは非常に重要なもので、そんなものを一時的とはいえ手にした貴方は、敵対組織にマークされてるってこと」

「…、は、…?」

「貴方に紙袋を渡した男はうちに入ってたスパイだった。いや…もっと言えば二重スパイ、かな?」

「二重って、裏の裏だよな」

「そうね。私らの機密情報を盗んだフリをして相手をぶっ殺すつもりだったんだけど失敗したっぽくて。とりあえずカモフラージュにルヴィと接点を持った貴方に偽物の紙袋を渡したみたい」

「偽物」

「えぇ」

「偽物を俺が持った」

「そう」

「そして拷問か」

「……ホントにごめんさない」


 頭を下げる彼女を見てなんと返したらいいか分からない。元はと言えば俺がルヴィの忠告を無視してあんな危ない臭いしかしない路地裏に入ったのも原因だからだ。命はあったことだし、帰国まではどうにかしてくれそうだし、別にいいかとすら思ってしまう。


「大丈夫だ。なんとか生きてるしな」


 右手をあげてグー、パーと拳を握りしめ開くを繰り返す。俺の指示に従って動く指先を見て、笑った。


「確かに肋骨は折れたけど、この通り元気だ」


 そんな私を見て、驚いたように彼女は目を開く。そして目を伏せて、柔らかく笑った。


「ふふ……随分と変わった人....ね。」


 彼女の笑顔に俺は慌ててスマホを構える。カシャと音がするよりも前にフユカはピースをした。


「あっ…自然な感じが良かった...」

「これでもアイドルなんだから無断撮影はお断りですぅ」

「無断な件は悪いと思ってるが、本当に綺麗だったんだよ。悪用はしないから保存させてくれ」


 真顔の俺に彼女は微笑みながら頷いた。

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