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余計なお世話

夜が明けて、待ちに待った朝が来た。朝の回診と言われヴァル先生に体を見てもらった後に厳つい男の人から朝食を出させる。熱すぎないスープは胃に優しくて、気遣いを感じた。

 和んで朝を迎えているがここは恐らくチャイニーズマフィアのアジトである。本人から直接聞いたわけではないが確実にそう。顔が割れる前におさらばしたいところではある。そう簡単に行くのだろうか、と現実逃避をしていれば、携帯から通知音が鳴り響いた。


「……茴か」


 メッセージを確認しようとすればガチャリと扉が開く。


「お・は・よ☆」


 そこに居たのは、翡翠の女。芸能人のくせに煙草の匂いを染みつけた女は自分の朝食を持って俺のベッドサイドにあるテーブルの上にそれを置いた。


「ぼっち食は寂しいでしょ?」


 にへら、と眉を下げる彼女に「気遣いありがとな。でも大丈夫だから」と笑って返してやる。


「日本人ってほんと建前使うのが上手よねぇ〜」

「曖昧な表現が得意だからな」

「ほんとそれ。 ねぇ今の翻訳をはっきり言ってみて?」

「傷口に触るから一人にしてくれ。余計に疲れるって意味だ」


 パンとスープを口に入れて手だけでしっしっとジェスチャーする。それを見たフユカは何故かご機嫌で口元を抑えて笑っていた。


「…これはルヴィちゃんが気にいるわけだわ...」

「ん、何か言ったか?」

「いーや。 ねぇ、トウマちゃん」

「………何」

「ルヴィを助けたんでしょ?」


 何かを含んだような言い方に頭を傾げる。フユカの瞳に揺れはない。ただ真っ直ぐに翡翠色をこちらに向けて、逸らさないのだ。


「…助けるって、俺なんかが力になれることは記事を書くことぐらいなんだが」

「そういう意味じゃないの。あの死にたがりな小娘に少し殴ってやったらいいの。」

「それ救うどころか傷つけてね?」

「捉え方によるけど今のルヴィにはそれぐらい暴力的な方が効くのよ」

「それに、俺。ルヴィと会ったのは昨日が初めてだし、力になれることなんて無い。あと今日ツアーに戻るし」

「あ、そのことだけど、まだ戻ることは出来ないよぉ〜」


 は?と本心が思わず漏れる。フユカは俺の携帯を指差して「連絡しといたから」とだけ。


「……ちょっと待って。どこに?」

「どこってトウマちゃんが参加してたツアーだけど」

「…はい?」

「上海で友人と合流したので、最終日直接空港に行きますって」


 俺は頭を強くテーブルに打ち付けた。

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